朝ドラ「ばけばけ」をはじめ、多くのドラマや映画に出演している俳優の小日向文世。「小日向」と書いて「こひなた」と読み、難読の名字といえる。
そもそも「日向」という名字には3つの読み方がある。
ひとつ目が宮崎県の旧国名に由来する「ひゅうが」。一般的に地名由来の名字はその地を支配していた武士や、新たに開拓した農家が名乗ることが多いが、こうした旧国名の名字は違っている。というのも、一国を支配しているのはもはや大名で、その国名を名字とすることはない。
では、どこからきているかというと、屋号に因むものが多い。江戸時代の大きな商家は、「○○屋」という屋号を名乗っていた。この「○○」には扱っている商品(小間物とか)が入る場合と、その商家の取引先や創業者の出身地(越後とか)入る場合がある。
つまり、日向屋と名乗っている商家は、創業者が日向出身か、日向国の産物などを扱っていることになる。そして、明治になって戸籍に登録する際に屋号から「屋」を外した「日向」を名字として登録した。従って、「ひゅうが」と読む「日向」は日向国、現在の宮崎県を除く各地に広く分布しており、「日向」全体の3割ほどを占めている。
「日向」の読み方として最も多いのは「ひなた」である。
日の当たる場所のことを「ひなた」というが、これを漢字で書くと「日向」なのだ。つまり、日当たりのいい場所に住んでいた人が名乗った名字で、「日向」の6割強が「ひなた」さん。現在は東日本一帯に広がっており、とくに関東南部から山梨県・長野県にかけてに多い。
東京都文京区には「小日向」地名がある。ここは神田川流域の丘陵地にあり、地名は日当たりがよかったことに因むという。そして、ここには室町時代頃から地名に因む小日向氏がいたことが知られている。
また、分家した際に本家の名字に「小」をつけて一族であることを表すこともあり、「日向家の分家」という意味の「小日向」もある。実際、「小日向」という名字は関東南部から長野県にかけて多く、「ひなた」の分布と一致している。
なお、岩手県から青森県にかけての三陸地方では「日向」は「ひむかい」と読むことが多い。