返礼品は、なんと一番風呂-。こんなユニークなクラウドファンディング(CF)が京都市中京区にある築約100年の京町家で行われている。一風変わった返礼品が「ホット」な話題となっている。
クラウドファンディングを行っているのは京都市中京区の藤野家住宅の保存会。同住宅は1926年の建築で、「数寄屋風意匠の町家の秀作」として2016年に国登録有形文化財になった。
主屋にある五右衛門風呂は以前、廃材などを燃料に実際に沸かして使用されていた。かつての京都市内では銭湯が一般的で、内風呂は珍しかったという。しかし長年活躍してきた藤野家住宅の五右衛門風呂は排水口が壊れ、15年ほど前から使えなくなっていた。
当主の藤野正弘さん(78)によると五右衛門風呂は熱源が下にあるため、上部の方が底より温かくなりやすい現代の風呂とは異なる。そのため「じわっー」とお湯が沸く。また、熱い釜に触れないようにバランスを取りながら入る面白さがあるという。
現代では五右衛門風呂を新設したり、大規模補修したりする需要はほとんどなく、設置する左官職人のノウハウも失われつつあるという。左官職人の技術継承にも役立てようと五右衛門風呂復活を計画した。
修復には、風呂釜の撤去や煙突の解体、新たな風呂釜設置などが必要で約250万円が必要だ。五右衛門風呂は文化財に指定されておらず、自己資金での修復となるため、クラウドファンディングを行うことにした。
昔懐かしい五右衛門風呂での一番風呂を味わってもらおうと、返礼品には一番風呂コースを用意した。かつて一番風呂は当主のみが入れる「特権」だったといい、藤野さんは「祖父や父が一番風呂に入っていた」と幼少期の記憶をたどる。
11月27日現在は来年1月中旬を予定する修復後最初の一番風呂入浴体験(ペア1組、支援額10万円)や3月20日(ペア1組、同1万5000円)と4月19日(同)の一番風呂体験を受け付けている。一番風呂ではないものの、五右衛門風呂に入ることができる入浴体験が5月9、10日、11日(限定3人、同1万円)にある。このほか、藤野家住宅の貸し切り(1日7万円、半日5万円)、家紋入り千寿せんべい(7000円と1万2000円)などもある。
藤野さんは「現代の風呂はボタン一つでお湯が沸くが、五右衛門風呂は火をおこし沸くまでに時間がかかる。ゆったりとした時間の中でお湯に漬かる体験をしてみては」と呼びかける。
目標額は150万円。現在、7割近くが集まっている。クラウドファンディングは12月25日まで。京都新聞社が運営する「THE KYOTOクラウドファンディング」で受け付けている。