家族を持たず、「推し」だけを見つめた人生は不幸なのか?
そんなことを考えさせられる投稿がX(旧Twitter)上で大きな注目を集めた。
50代で孤独死した「オタク」の最期を見送ったという、葬儀社に勤める投稿者のポストは1600万回以上表示され、6万8千以上のいいねがついた。
故人の「生きがい」だった「推し」
「期間も空いて特定不可だと思うので下書きしていた、1人のオタクの葬儀の話をします。
故人は50代前半で妻子なく、一部上場企業の管理職だったそうですが、役職には似合わぬ、築40年の1Kのアパートに住んでいました。家には小さなテーブルと座椅子とハンガーラックしか家具がない質素な部屋。が、押し入れには少量の衣類、そしてアイドルのグッズがずらっと積まれていました。とくにチェキは綺麗に整理され、数はおおよそ1万枚。高級車が余裕で買える枚数です。そしてほとんどが1人のメンバーのチェキで、さすがに胸がキュッと締め付けられました。『生きがい』だったんだろうなぁって。
遺族は故人が亡くなった悲しみよりも、家の様子に失笑している雰囲気でしたが、私の提案で遺影は社員証の仏頂面の写真よりはるかに生き生きとしていた2ショットのそれから作らせてもらうことにしました。また、『チェキは価値がないものだから』と遺族。棺に収めるために預からせてもらいました」
お別れの時にやってきた「1人の参列者」
「葬儀当日、両親と姉夫婦のみが立ち会った葬儀。特に変わった様子もなく、菩提寺の読経が40分ほど行われた後、通常通り対面・お別れの時間がやってきます。棺の蓋をあけて祭壇の花やゆかりの品物(今回はチェキなど)を入れるお別れの時間。その時、1人の参列者がやって来ました。
黒く長い髪にフォーマルなアンサンブルに包まれた女性。化粧は違いましたが、すぐ彼女だと気づきました。故人が推していた、あのアイドルです。
実は、チェキに書いてある名前などからアイドルさんについてはわかっていて、一縷の望みを込めてチェキの写真と葬儀の概要だけDMしていたのですが、来てもらえるとはまったく思っていなくて、こちらもかなり動揺していました。
棺に近づく彼女はかなり震えていて、故人を見るたび『探した、ありがとう』と言いながら号泣。本当に素敵な関係性だったんだろうなあと感動してしまいました。
チェキのほとんどは彼女に入れてもらって、アイドルオタク冥利につきる葬儀で故人は旅立ちました。僕もこんな感じな関係性築きたいね…」
<投稿者のX(旧Twitter)のポストより>
チェキに写っていた、幸せそうな優しい笑顔
実は投稿者自身も「juice=juice」というアイドルグループを推すオタクの1人。故人の生き様が他人事とは思えなかったそうだ。
「故人が最後に入院されていた病院からのご紹介で、弊社にご依頼いただきました。私がご葬儀を担当したのは偶然です。家族は遠方から駆けつけていて、打ち合わせの場所がなく、故人のご自宅で打ち合わせとなったため、部屋の様子から故人の人となりがわかった…という流れでした」(投稿者)
遺影として使用した「推しとの2ショットチェキ」に写る故人について伺ったところ、「ニッコニコとまでは言わないですが、幸せそうな優しい笑顔でした」と、投稿者。
「基本的にどのお写真を使用する場合でも、故人のみのバストアップでトリミングをして作成し、背景の修正などを施すので、この時も表情のいいものを選ばせていただきました」(投稿者)