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「温泉がない方の草津」知名度不足を逆手に大バズり 発想の転換で「温泉ないまんじゅう」人気

京都新聞社 京都新聞社

「『草津温泉に行きたい!』と間違えてお越しになるお客様が多く、申し訳ないので、作りました」

滋賀県の草津市観光物産協会が企画した「温泉ないまんじゅう」が交流サイト(SNS)で話題になった。群馬県の草津温泉と間違われることが多い同市が、この状況を逆手に取って商品化した。

本当に間違えて来る人も

滋賀県草津市は県南部に位置する人口約14万人の都市。一方、群馬県草津町は「草津温泉」で全国的に知られる温泉地だ。両地は約300km離れているが、地名が似ているため混同されることが多い。

同協会によると、観光案内所だけで年間約50件の「間違った問い合わせ」があり、協会事務所にも冬の温泉シーズンには週2、3回問い合わせがあるという。「おすすめの温泉宿を教えて」「車のタイヤチェーンは必要ですか」といった内容から、業者からの営業電話までさまざまだ。

実際に草津市を訪れる人もいる。6月には夫婦が、昨年は台湾からの観光客が間違えて来訪した。「せっかくなので」とボランティアガイドが市内を案内したという。

きっかけは数年前のアンケート

企画のきっかけは数年前に実施したアンケートだった。草津市の認知度に関する調査だったが、そもそも群馬県の草津温泉と間違えて回答する人が多く、正確な数値が取れず市の認知度不足が露呈した。

「温泉ないまんじゅう」を企画した谷坂優希さんは「それまで『温泉がない方の草津です』ってネタとして言ってたんです。でも数値化されてしまうと、これは笑い事じゃないんだな、本当に知名度が不足しているんだなって感じました」と振り返る。

この状況を受けて協会はホームページに「滋賀県草津市に 草津温泉はございません」と表記したり、パンフレット、ステッカーなどさまざまなグッズを制作したりしたという。

「温泉まんじゅうがあるなら」発想の転換

「温泉ないまんじゅう」のアイデアは、昨年から谷坂さんの頭の中にあった。今年に入って、付き合いのある市内の和菓子店「和・菓ふぇ oto(おと)」を営む辻野智之さんに相談を持ちかけた。

辻野さんは「草津のお土産としてこれから食べたいと思ってもらえるようになれば」と商品化が決まった。

商品はシンプルな上用まんじゅうにこしあん、表面には焼き印の温泉マークに斜線を入れた。

SNS戦略

谷坂さんが仕掛けた投稿で反響があったのは実は今回が2度目。昨年5月、ホームページに「温泉がない方の草津」というコンテンツを掲載した際にも多く拡散された。

今年6月の投稿には工夫を凝らした。文言は「とにかくシンプルに、書きすぎない」ことを意識し、詳細な販売情報はあえて記載せずに関心を集める手法を採った。写真も加工して和風に仕上げた。

「前回バズった(爆発的に拡散した)のが大体1万リポスト未満で、いいねが4万ぐらいだったので、このぐらいが目標だった。予想を上回った」と話す。

群馬県草津町との関係は?

「温泉ない」をアピールする以上、本家の草津温泉との関係は慎重に進めた。ホームページへのリンク掲載時から事前に了承を得ていた。

投稿後、谷坂さんは実際に群馬県の草津温泉を訪問。温泉協会の担当者は面白がってくれたといい、今後はタイアップでの観光キャンペーンも検討している。

「温泉どろぼう」との相乗効果狙う

6月16日には「温泉ないまんじゅう」とともに同協会のキャラクター「温泉どろぼう」が発表された。谷坂さんが自ら下書きを描き、立命館大学広告研究会の学生と協力。クラウドファンディングでの着ぐるみ化を計画している。

「温泉どろぼうをいつ出すかはずっと考えていて、正直、今日出そうって今日決めたんです。でもバズってるし、今かなって」まんじゅうとキャラクターの相乗効果を狙った。

温泉がないなら何がある?

この商品化の狙いは単なる話題作りではない。谷坂さんは「一番の目的は草津市の知名度を上げること。大事なのは、温泉がないけど何があるんだって、こう、今ここに何があるんだっていうところにつなげられたら」と強調する。

将来的にはさまざまな事業者と協力し第2弾、第3弾の商品化を目指している。

今後の目標について谷坂さんは「まんじゅうをきっかけに琵琶湖博物館や草津宿本陣など草津の魅力について知ってもらう機会になれば」と話す。

「温泉ないまんじゅう」は1個300円。今後の販売予定は草津市観光物産協会のホームページで告知する。

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