いおワールドかごしま水族館(鹿児島市)では8月、2019年より6年間愛されてきたジンベエザメの10代目ユウユウを海に帰し、11代目ユウユウを迎え入れる計画が決まった。お別れセレモニーも開催され、10代目ユウユウを乗せたトラックが水族館を出発する動画は2.5万回再生を記録。長年愛したファンが別れを惜しんだ。
8月18日に水族館から搬出。海に帰るまでのトレーニングのため海上いけすに搬出されたが、翌19日、死亡が確認された。解剖の結果、死因は網に絡まったことでの循環不全と呼吸不全であったと判明。放流の成功例はあるものの、世界最大の魚の展示と、環境保全とのバランスの調整は、専門家をもってしても困難を極めるようだ。かごしま水族館の館長、佐々木章さんに話を聞いた。
――10代目ユウユウが海に帰ることになった理由は?
佐々木:世界最大の魚であるジンベエザメの飼育・展示については、動物福祉を最優先に考え、一定の大きさに達した段階で個体を入れ替える方式を採用しています。今回、10代目ユウユウが5mの大きさとなったことから、11代目を迎え、10代目を海に帰すことを決めました。ジンベエザメも鹿児島の海に毎年来遊しているので、鹿児島県南さつま市笠沙町にある、いおワールドかごしま水族館のジンベエザメ用の海上いけすに搬出しました。
――海に帰した後の追跡について
佐々木:生態調査や回遊行動を追跡する、衛星発信機を用いた調査を行っています。これまでの放流後の調査では、数か月以上、追跡装置の電源の限界まで追跡しましたが、大きな回遊行動が確認できています。
――10代目ユウユウについては本当に残念でした。
佐々木:飼育環境の改善や健康管理に最大限努めてまいりましたが、私たちも大変重く受け止め、深く反省するとともに、今後の飼育や展示のあり方についてあらためて検討しております。
大型海洋生物の飼育には多くの課題が伴いますが、私たちが展示を行う主な目的は、普段なかなか目にすることのできない生き物たちの生態や、海洋環境の現状について、多くの方に知っていただくことにあります。来館者の皆さまの海や生き物への理解と関心を深め、将来の環境保全や生物多様性の大切さについて考えるきっかけとなることを願っています。
展示や飼育が生き物にとって最善であるかどうかについては、常に自問自答し、命を預かる立場としてより良い方法を模索し続ける責任があると考えております。
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なお、11代目ユウユウも海上いけすで遊泳行動や、ちゃんと餌を食べられるかなど摂餌行動の確認を終え、現在はいおワールドかごしま水族館の黒潮大水槽で悠然と泳ぎながら、来場者を迎えている。賛否両論あるが、水族館は展示だけでなく、研究機関としての機能も備わっている。絶滅危惧種であるジンベエザメの未来に、水族館が大きく貢献するのは確かだ。
いおワールドかごしま水族館
https://ioworld.jp/