京都市下京区の四条通沿いに姿を現した新たなオフィスビルが、とても「京都らしいデザイン」で注目を集め始めている。一見、都会では珍しくない現代的なガラス張りのビルに見えるが、目を凝らすと、とある秘密が隠されていることにお気付きだろうか。
ビルは、日本生命保険が四条通東洞院東入ルに建設中の「日本生命四条ビル」。同社京都支社などが入居していた旧ビルの建て替えで昨年2月に着工し、今年9月中旬の完成を予定している。地上8階、地下1階で、オフィスや店舗が入居予定という。
実はこのビル、四条通に面した外壁の格子状になった窓枠が、京都の「碁盤の目」状の街並みを模している。南北は五条通から丸太町通まで、東西は川端通から千本通までの範囲を、約百分の1サイズ(幅32メートル、高さ23メートル)に縮小。大通りを太めの格子で、その他の通りは細めの窓枠で表し、丸太町通から南に伸びる車屋町通や間之町通が姉小路通で途切れるなど、街並みの不規則な部分まで細かく再現している。
日本生命の担当者は外壁デザインについて「京都の街並みへの敬意と文化伝承の想いを込めた」といい、「京都で親しまれている唄に基づいて、南北・東西の通りの構成を意匠的に紡ぐことで、伝統的な街並みに調和しながらも、現代的な景観を目指した」と狙いを明かす。
また、ビルは祇園祭の長刀鉾にもほど近く、目の前の四条通は山鉾巡行のルートとなることから、「建物は祇園祭の背景となる都市空間の一部として機能することを意識しており、祭りと日常が交差する場としての役割も担いたい」としている。
工事中は、窓の内側に四条通や烏丸通など周辺の主要な通り名とビルの所在地を張り紙で示していた。完成後はビル玄関付近に「丸竹夷」「寺御幸」の通り名唄を記した案内看板を設置するという。
X(旧ツイッター)上では、「名物になれるデザイン」「謎のこだわりですごい」などと、早くもビルの「秘密」に気付いた市民や観光客らの投稿が相次ぎ、京の新たな名物スポットになりそうだ。
同社は「当ビルが、通りを行き交う皆様にとって、日常の中に京都の歴史を感じてもらえる存在となり、地域文化への理解や対話を育むきっかけとなれば」としている。