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懸命に子育てしたのち保護され家族の一員になった猫 先住猫との“壁”を打ち破った愛あふれるハプニングとは

梨木 香奈 梨木 香奈

2024年11月の深夜、自宅のウッドデッキで黒猫とキジトラ猫、2匹の子猫のように見える子たちが遊んでいるのを目にしたXユーザーのまぷさん(@aqua_chai)。黒猫の方がキジトラ猫よりも少し大きく、ガリガリに痩せていたといいます。

その黒猫が、のちに家族となる「クオン」ちゃん。当時、生後推定10カ月ほどでした。気になってご飯をあげに行くと、目の前ですぐに食べてくれて、数日、飼い主さん宅でお世話することに。やがてクオンちゃんの体に変化を見つけ、放ってはおけないと感じたといいますーー。

まだ自分も子猫なのにーー出産が発覚した黒猫

飼い主さんは、ふたりのことが気になってご飯をあげに行くと、目の前ですぐに食べてくれるようになりました。そうして数日お世話をしたあと、あることに気づいたといいます。

「よく見ると、クオンはおっぱいが膨らんでいて出産したことがわかりました。キジトラの子猫はまったく近寄ってこないけど、このクオンはよく鳴くし、撫でさせてくれたり、私についてきたり、かわいいなと思いました。ただガリガリに痩せていて、妊娠したことのある猫にしては体も小さく、このまま外で暮らしていけないのではないかと思いました」

考えた末、飼い主さんは夫の職場に猫の保護をしている人がいることを思い出しました。そして、相談することに。ちょうど数日後に、大寒波が来るというタイミングでした。

「捕獲器をしかけて、クオンと子猫、2匹とも保護することができました。我が家にはすでに2匹の先住猫がいたため、里親を探してもらう予定でした。ところが、捕獲器で保護したことで、クオンは怯えてしまい、私はすっかり信用を失ってしまったんです」

クオンちゃんは、人間をとても怖がるようになり、里親探しは難航することが予想されました。そんな様子を目にした飼い主さんの心にある思いが生まれたのです。

「クオン自身まだ小さいのに、一生懸命子育てしてきたことを考えると『この子を甘えさせてあげたい』と思い、我が家で迎え入れることにしました」

そうして、クオンちゃんと一緒にいた子猫は、保護に協力してくれた人のもとへ。

「しばらくのあいだ、その方のおうちで人間に慣れてもらってから、譲渡会を経て、里親さんに迎えられました。同じ月齢の猫がいるおうちで、元気に過ごしています」

こうして、ふたつの小さな命は、新たな猫生を歩み始めたのです。

威嚇の嵐と終わらない緊張感

保護した直後、クオンちゃんは大きな警戒心を抱くようになりました。外で接しているときは威嚇することはなかったのに、家に迎えてからは態度が一変したといいます。

「よほど捕獲器が怖かったのだと思います。家に迎え入れてから、初めて『シャーシャー』されるようになってしまったんです。触ることもできなくなりました」

その不穏な空気は、先住猫の「チャイ」ちゃんと「アクア」ちゃんにも伝わり、家の中では“シャーシャー合戦”が始まってしまいました。

「私のことを威嚇するクオンのことを、先住猫たちは『お母さんの敵だ』と思ったようで、3匹のあいだでにらみ合いが続いてーー迎え入れた11月から年が明けるまでの1カ月半は、クオンと先住猫たちを会わせないようにしていました」

さらにクオンちゃんは、ケージの扉を開けても出てこようとせず、飼い主さんはどう接していいか悩む日々を過ごしました。

「保護した翌々日、避妊手術を受けてからの2カ月間、クオンはほとんど眠っていました。安心して眠れるのが嬉しかったのか、それとも本当に疲れていたのか…。あまりによく眠るので、生きているのか心配になるほどでした」

先住猫を守ったクオンちゃん、3匹の関係に変化が

先住猫との距離が縮まらないまま年が明け、飼い主さんは落ち込む日々を過ごしていました。そんなある日、家族の関係を一変させる出来事が起こります。

「お正月、母が泊まりに来たとき、耳と目が少し不自由なチャイが母に怯えてパニックを起こしてしまったんです」

その瞬間、クオンちゃんが飛び出しました。

「チャイと母の間に割って入って、『お姉ちゃんに何するの!』と訴えるように、母に向かって怒ったんです」

この一件をきっかけに、チャイちゃんはクオンちゃんを守ってくれる存在として受け入れるようになりました。

「チャイがクオンを認める姿を見ていたアクアも、『妹が仲良くするなら、ぼくも』という感じで、クオンを受け入れてくれました」

こうして緊張関係は解け、3匹は次第に寄り添うようになっていったのです。

「ひとりで妊娠、出産、子育てをしながら生き抜いてきたクオンが、チャイやアクアに甘える姿を見て、『本当に保護してよかった』と心から思いました」

おしゃべり好きな末っ子へと成長

今、クオンちゃんは1歳を迎え、すっかり家庭の中で落ち着いた日々を送っています。

「末っ子らしく、上の2匹がやって怒られていることは絶対にしません。基本的にイタズラもなく、人が困ることはまったくしない子です」

その一方で、とても表情豊かでおしゃべり好きな一面もあるそうです。

「とにかく自分の意志を伝えようとおしゃべりしますし、話しかけると色んなトーンで返事をしてくれるんです」

最近では、愛情表現もどんどん増えてきたクオンちゃん。家族との絆は日を追うごとに強く結ばれています。

「寝転んでいる私や夫のそばに駆け寄ってきて、鼻チューして去っていくんですよ。とてもかわいいです」

最初の1カ月半は触れ合うことすら拒否していたクオンちゃん。しかし今では、先住猫に寄り添う姿も、家族に甘える様子も当たり前のように見られるようになりました。

「今のクオンは、何をしていてもとても楽しそうです。チャイやアクアにくっついて嬉しそうにしている姿を見ると、うちに迎えて本当に良かったと思います」

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