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日給20万円の高級店からから3万円の店へ 風俗店キャストが高収入を手放した理由 「幸福ってお金だけじゃ買えないわよ」

たかなし 亜妖 たかなし 亜妖

「日給20万円から3万円へ転落」というタイトルを目にして、あなたはどう思いましたか。「1日3万円稼げるだけいいじゃないか!」と鋭いツッコミが集まりそうですが、一気に17万円もの差が出るなんて冷静に考えたらトンデモないお話です。単純計算で日給20万円×週5日勤務だと月収は約400万円。1週間で100万円を手にする生活が当たり前になると、日給3万は相当少なく感じるはずでしょう。

本記事を執筆するにあたってインタビューに応じてくれたA美さんは、40代後半へと差し掛かった現役キャストです。手取りが下がったことについて尋ねると「でもね、今の方が幸せですよ」と即答。日給20万円の世界に飛び込むまでのお話と、現在の考えについて語ってくれました。

日給20万円の高級嬢だった10年前

A美さんは20歳から水商売を始め、キャリアは驚きの25年を突破。今でも現役を貫くベテランです。彼女が夜の世界に入った理由は、誰もが想像つくであろう「お金」でした。学費や借金などの理由はなく、単純に稼ぎたい気持ちが強かったそうです。

『絶対に叩かれると思いますけど、遊ぶお金がほしかったの。当時フリーターでやることもなく、アルバイトを転々としてたんだけど、もっと稼ぎたいと思ったところでキャバクラのスカウトをされまして。そこから5年くらいやったかなぁ。ちなみに場所は歌舞伎町です』(以下、『』内はA美さん談)

キャバ嬢として活躍したのちに、さらなる高収入を求めて風俗業へ移行。単価が低い“格安店”から始まり、28歳の頃に高級店デビューしました。どんどん収入が上がっていくことに、大きな刺激と面白さを覚えたとA美さんは語っています。

『風俗デビューのきっかけはヒモ男を飼ったことだったんだけど(笑)。割とさっぱり別れられて、この後の人生をどうしようかなって迷った時に、仕事へ打ち込んだんです。みるみるうちに指名が取れて、仕事の楽しさを見出せました。店を変えつつステップアップした結果、高級店に辿り着いた感じかな』

彼女が在籍していたのは、お客さんの支払いが8万円の名だたる高級店。朝から晩まで働き、指名で埋まれば高収入の生活を安定して過ごせたのです。指名獲得のために、A美さんは毎日大奮闘しました。その結果、週5日の12時間勤務を続け30代半ばまで日給20万円をキープし続けます。

話を聞いていて筆者は「30代半ばで日給20万円が安定するのなら、それ以降も同じ金額を稼げるのでは?」と疑問を抱きます。思い切って聞いてみると、彼女は高収入を手放した本音を話してくれました。

『指名を取るのってねぇ、ラクじゃないんですよ。昔の高級店は厳しくてユルくは働けないし、女の子も常にピリピリ。古株のお姉さんが怖いなんてよくある話でした。

接客と環境のストレスに加え、プレッシャーと病気の心配を考えると、これがずっと続くのはしんどいなと。収入よりも我が身が大切だと思い始め、覚悟を決めて高級店を引退。心と体を壊して業界を去っていくコたちって、想像以上に多いからね…』

20万円よりも、3万円が幸せと感じる理由

一度は引退したA美さんが夜の世界に出戻ったのは、39歳の時。コロナ禍目前の2019年付近はすでに客入りが減少し、風俗業界が厳しくなった頃です。環境が悪い意味で変わっていることに、彼女は驚きを隠せませんでした。

『周りから話を聞くと、2017年あたりから客入りがキツくなってたらしいんですよね。客入りが渋いのに働き手は増えるし、女の子の低年齢化は進むしで、昔に比べると今は採用基準も高くなりました。

あたし、ニート中は誰とも連絡を取らなかったからお客さんを全員失っていて……。おまけにかなり太っちゃったから、出戻りの時は店選びに難航したんです。だって、面接に通らないんだもん(苦笑)“こんなに業界は変わっちゃったかぁ”と思って、運よく採用をもらえたお店に在籍。それ以来、移籍はしていません』

日給20万円の“高級時代”は2時間コースの手取りが4万円以上だったのに対し、現在は半分以下。体力の問題で長時間勤務も難しく、日給3万円がベースとなりました。それでも、現在のストレスが少ない生活が幸せだと語ります。高収入なぶん精神的な余裕もなく、プライベートの時間がほとんど取れなかった過去を思い出すと、「戻る気が起きない」とのことです。

『今の店はプレッシャーもないし、自分らしく接客できているからこれでいいなって思います。この不況のなか、アラフィフで3万円稼げるだけで有難い。こんな考え、昔だったら持てていませんよ(笑)感覚が一般的な方に寄ってきて、アタマが少し柔らかくなったのもいろいろ楽しい!幸せ!と感じる理由なのかもしれません』

とてもハツラツとしているA美さんは、話していても悲壮感がほとんどありません。きっと高い山の頂点にのぼった経験があるおかけで、一周回って落ち着いたのでしょう。現在は週4日勤務をしながら、飼いネコに癒される日々だそうです(笑)。

インタビューを終えた後、彼女は「幸福って、本当にお金だけじゃ買えないわよね」とつぶやきました。A美さんが発するからこそ、この言葉には重みを感じます。私は家に帰った後も、筆者が最後に耳にしたフレーズが頭の中を離れませんでした。

◆たかなし亜妖(たかなし・あや)元セクシー女優のシナリオライター・フリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ゲーム会社のシナリオ担当をしながらライターとしての修業を積み、のちに独立。現在は企画系ライターとしてあらゆるメディアで活躍中。

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