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「白杖は、ただの棒じゃない、道しるべです」見えない人が肩幅に振る理由とは?悲痛な訴え

渡辺 晴子 渡辺 晴子

「白杖の人が歩いていて、杖が通行人の足に当たった。すると相手は『そんなに振るなんて危ないじゃないか!』と激怒した——」

そんな出来事をきっかけに投稿された、あるXのポストが話題を呼んでいます。

投稿の主は、視覚障害当事者でありながら、音楽活動を通じて社会に「見えない人が安心して暮らせる街」を問い続けているマエケンさん(@MAEKEN_AIRFOLG)です。

 なぜ白杖は「肩幅に振る」のか

マエケンさんによると、全盲や弱視の人が歩くとき、白杖は「ただの杖」ではありません。杖を1メートルほど前に出し、肩幅程度に左右に振りながら進むことで、足元に障害物がないかを確かめています。

これがもし、杖の振り幅を小さくしてしまうと、側面の障害物にぶつかったり、段差に気づかず転倒したりする危険が高まります。

「肩幅に振って、杖が何にも当たらなければ、その先に障害物はない——それが私たちにとっての『道しるべ』です」

しかし、この必要不可欠な杖の動きが、ときに誤解やトラブルを生んでしまう現実があります。

「後ろで邪魔だ」と言われ、謝った悔しさ

マエケンさん自身、街中で何度も辛い経験をしてきたといいます。

「わりと広い通りを白杖で歩いていた時、突然後ろから肩を叩かれて『もっとコンパクトに振ってくれない?邪魔なんだよ』と言われました」

杖を振るのは必要な行動——それでも「すみません」としか言えなかった悔しさと悲しさが、今も心に残っています。

歩きスマホと、見えない人の恐怖

白杖を使っていても、街を歩くのは簡単なことではありません。特に歩きスマホが増えた現代では、マエケンさんも何度も衝突を経験しています。

「千葉駅西口の点字ブロックを普通に歩いていたら、歩きスマホの女性と正面衝突しました。向こうは『ぎゃあ〜』と驚いていましたが、こっちも怖かったです」

見えない人が街で感じているのは、ぶつかってしまうかもしれないという恐怖と緊張です。

困っている白杖の人を見かけたら

では、私たちにできることは何でしょうか。

「ぶつかりそうになったら、できるだけ避けてほしいです。もし避けられない状況なら『すいません、前に人がいます』と声をかけてください」

また、白杖を持つ人が立ち止まって同じところを行き来していたり、壁を探るようにしていたら、それは道に迷っているサインかもしれません。

「そんな時は『何かお手伝いできることはありますか?』と、少し前の方から声をかけてみてください」

いきなり肩を叩かれると驚いてしまうので、できれば声かけをしてから、そっと肩や腕に触れると安心してもらえるそうです。

 白杖=全盲ではない

もうひとつ、社会に知ってほしいことがあります。

「白杖を持っていても、全く見えないわけではなく、スマホの文字や看板が読める弱視の人もいます。でも『見えてるじゃん』と心ないことを言われ、外で白杖を隠していた人もいます」

白杖は「どの程度見えているか」にかかわらず、「私は視覚に障害があります」という大切なサインです。

「見えない力で未来を変える」

マエケンさんは現在、チャリティー音楽祭「スーパーライブ」を全国規模で開催し、音楽を通じて視覚障害への理解を広げています。

演奏の合間に点字ブロックや盲導犬、白杖のことを伝えるプログラムを入れ、子どもたちがステージで「見えない力で未来を変える」と声をあげる——それがマエケンさんの夢であり、共生社会をつくる一歩です。

 ほんの少しの思いやりで、街は変わる

白杖は、ただの棒ではありません。見えない人が、危険を避け、自分の足で前に進むための大切な「目」です。

肩幅に振ることにも、1メートル前に出すことにも、理由があります。そして、誰もがいつか「見えづらさ」を抱えるかもしれないのが私たちの社会です。

「誰もが安心して歩ける街」をつくるのは、一人ひとりの小さな理解と配慮です。

歩きスマホをやめる、少し避けて歩く、困っている人に声をかける——それだけで救われる命も、心もあります。

  ◇  ◇

【マエケンさん主催】
第6回チャリティー音楽祭スーパーライブ2025
10月4日(土) 船橋市民文化ホール
11時〜18時30分(途中入退場自由)

公式サイト

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