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精神を病み、不登校・ひきこもりから、学びを通じてありのままの自分を見つめる【僕の場合④】

竹中  友一(RinToris) 竹中 友一(RinToris)

「ただの精神病持ちの引きこもりだったのが、学ぶことに若さを捧げると決めて、働いたお金で参考書を買って受験勉強を始めて、京都に行き着き、哲学に出会い、友人や先輩後輩に恵まれ、寺に住み込むようになり、今は学ぶことが面白くて仕方ない。学べることの喜びを噛み締める。もっと深くまで行きたい」

同志社大学の学生であるunlightenmentさん(@reincarnationus)。

不登校や引きこもりを経験しながらも、心機一転、大学に合格。

進学先で運命を変える哲学との出会いを果たし、仲間たちと楽しく勉学に励んでいます。

シリーズ最終回である今回は、「哲学が自身にもたらしてくれたもの」、「将来についての目標や考えていること」、「以前の自分と同じような苦しみを抱えている人へ」という3テーマについて掘り下げます。

哲学との出会いで、具体的に自分自身はどのように変化した?

勉強――特に哲学によって、自身の運命が大きく変わったというunlightenmentさん。

具体的に、それが自身の内面に、どのような変化を及ぼしたのでしょうか?

「自分自身との向き合い方が根本的に変化したと思います」

unlightenmentさんはこのように答えました。

双極性障害を抱え、躁状態と鬱状態が交互に押し寄せていたunlightenmentさん。以前は、感情の波に吞み込まれないよう、いかに抑えるかを考えていたといいます。ですが現在は、自身の情念は自分で制御し得るものではなく、「自分の中の他者」として受け入れるようになり、それと「共存」することを心がけるようになったといいます。

「人間は人間である前にまず動物である――これはこれはバタイユから教えられたことであり、僕の考えの根本でもあります」(unlightenmentさん)

人間は成長するにつれ、さまざまな経験を経て社会的に“大人”になっていきます。しかし、本来の動物的な“子供の心”が完全に消え去ることはありません。そんな内面の“情念”があることを理解し、それを理性で抑えるのではなく、理性をもって支える

このような考え方を身に着けるうちに、自分自身を主観的な善悪ではなく、自然の側から眺めることができるようになったといいます。

現在も、双極性障害の症状がまったくなくなったわけではなく、抑うつ傾向や希死念慮などに悩まされることもあるそう。

しかし、そのような時は、少し身を引いて自分の心を俯瞰して眺めながら、苦しみも自分自身のひとつの側面だと思い、共に生きていこうと考えることで、乗り越えているそうです。

「苦しみと喜びというのは切り離せないものであると、僕は思います」(unlightenmentさん)

幸福を見出すための“学び”

「ものの見方」のバリエーションが増え、世界と自分との関わり方が変化する――自分の知りえなかった新たな側面に触れることができる――これが学ぶことの喜びだとunlightenmentさんは語ります。

そんなunlightenmentさんですが、今後の目標は「大学院に入学して正式に哲学研究をする環境を獲得すること」とのことです。さらに、博士課程に進学し、フランスに留学するのも夢だといいます。それらの取り組みを通じて、専門であるバタイユ思想について、新しく面白い面をフィーチャーする研究がしたいと話します。

しかし、その夢や目標とは別に、unlightenmentさんはこのようにも考えているといいます。

「実は極論、何かになりたいというのはあまりなくて、ただ自分自身を深く理解し、心からの幸福を感じること、ただ『生きて在る』という事実を『奇跡』として腑に落とすことが、僕が宗教哲学を学び続ける根源的な動機であり、生涯かけて追究していくものであるかもしれません」

夢や目標をもち、実現に向けて頑張ることは大切です。しかし、それだけが人間の幸福ではありません。自分自身をさまざまな面から見つめ、自分なりの幸せを見出すこと――それこそがunlightenmentさんの学ぶことの真の目的なのかもしれません。

苦しみを抱えている人へ

「精神的に病んだり、引きこもったりなど、過去の自分のような苦しみを抱えている方に、声をかけるとしたら?」

最後に、筆者はunlightenmentさんにこんな質問を投げかけました。

「正直言って、かける言葉が見当たりません」

ところが、unlightenmentさんはこのように話します。

「深い苦しみの底にいる人は想像を絶する孤独の中におり、当人がどれほど言葉にしようとしても伝えようのない感情の中にいます」(unlightenmentさん)

言い表せないほどの苦しみ――それが当人たちの地獄の本質であり、他者が安易な言葉でその人の心を縁取ってしまうことはできません。それよりも、ただ隣に座って孤独や沈黙を共有する方が良い――とunlightenmentさんはいいます。

これは、同じような地獄を経験したunlightenmentさんだからこそ、分かることなのでしょう。

しかし、unlightenmentさんはそのように語りつつも、「ただ、そのようなことを重々承知の上で、少しだけ――」と、さらに続けました。

「あなたは不必要な存在でも、社会不適合者でもなく、ひとりの“人間”であり、あなたが背負う葛藤も、苦しみも、すべてあなたの“根”を形成しています。誰よりも深い場所まで張った根は、いつか誰かを深く理解し受け止めるためのものであり、未来であなたの言葉や存在を待っている人がきっといます。

どうか、自分を許し、認めてあげてください。その“許す”というほんの少しの勇気が、心の持ち方が、ゆっくりでも確実に、新しい芽を育みます。社会的な体裁も人との比較も、過去も未来もどうでもいいのです。まず“今”、自分自身を許し、救ってください。目の前にある幸福は、あなたに見つけてもらうことを待っています。

どれだけ時間がかかってもいい。ほんの少しずつでも、あなたがあなた自身を取り戻していくことを、心から祈っています」

  ◇  ◇

ありのままの自分を受け入れること。

かけがえのないものに出会い、懸命にそれに取り組むこと。

unlightenmentさんは、自らの生き方をもって、真の幸福とは何なのかを今もつきつめています。

■unlightenmentさんのX(旧Twitter)はこちら
 →https://x.com/reincarnationus

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