尻尾がちぎれ体はボロボロ、凶暴な野良猫を保護 「シャーシャーでも一喜一憂、向き合うのが楽しい」

渡辺 晴子 渡辺 晴子

「人間に拉致されました
この子からしたらそうですよね。。
いきなり人間に捕まって、知らない場所に連れて来られて、何かちょっと身体が痛くて、勲章が取られてて。。
保護したと思っているのはこちらだけで、この子からしたらとんでもなく恐怖だったと思います。
動画は保護して5日後の様子です」

凶暴な野良猫さんを保護したことを、動画とともにInstagramで報告した「保護猫シェアハウス てぃーるーむ」さん(@sharehouse.t_room)。動画には、鋭い目つきでにらみながら威嚇する猫さんの姿が映っています。猫さんは、モンチッチくんと名付けられた男の子。モンチッチくんは2024年11月5日、尻尾をけがしていることから急きょ保護されました。

「朝、出勤前にランニングをしていた主人が帰宅後に〝これは尻尾をケガしてるってこと?〟と画像を見せられたことが始まり。キジ白柄の子の尻尾の先端が真っ赤に腫れ上がっていました。見た瞬間にケガをしていると分かるレベルでした。確認後すぐに主人がその子がいた場所に戻りましたがいなくなっていたので、私が夕方から捜索を開始。夕方から始めた理由は、夜のご飯をもらいに行く猫たちが動き出すかもと思ったからです。

その周辺は主人が前からランニングをしながら野良猫やご飯をあげているおうちのリサーチをしていました。いくつかのポイントを回りましたが見つからず。最後にこの日の朝に主人が撮影した場所付近を見回っていたとき、2年前に親子猫たちを保護した現場があり、そこにもご飯をあげている方がいたので行ってみたところ、目の前に探していた子がご飯を待っているところに奇跡的に会えたんです」

尻尾がちぎれていたのは昨年8月頃から…誰も病院に連れて行かなかった

そこで餌やりさんにモンチッチくんのことを尋ねてみたところ、2024年8月くらいに尻尾をケガしてちぎれそうな状態で現れるようになり、いつの日か完全にちぎれて先端が赤い状態になっていたということが分かりました。

「ご飯をあげていた方はいわゆる無責任な餌やりさんでした。ご高齢の方で、野生の猫は捕まえられないと言われて。でも実は、この子がケガをした2024年8月に近所に住んでいるTNR(Trap/捕獲し、Neuter/不妊去勢手術を行い、Return/元の場所に戻す)を個人でやられているボランティアさんがこの子を捜索していたそうです。この方にも来ていないかと聞いていたそうですが、たまにしか来ない子だったので分からないと返事をしてしまったとか。もし来たら連絡をしてくださいと連絡先も渡されていたそうですが、連絡したところで自分たちは何もできないからとそのままにしていたようです。

8月の時点でボランティアさんに連絡していればケガの原因がもしかしたら分かっていたかもしれません。私たちが発見するまでの3カ月間、ちぎれた尻尾の痛みに耐えていたと思います。捕獲した際の捕獲器の中は、かさぶたがはがれ血で悲惨な状態でした。ご飯をもらいに移動しているときにこの子の姿に気づいた方もいると思いますが、野良猫だから見ても見ぬふり、野良猫の捕まえ方なんて知らない、そんな理由から誰も助けてくれなかったようです」

保護後、動物病院でモンチッチくんは去勢、断尾、抜歯手術をしました。このとき歯が4本しか残っていない状態で、残りの歯も歯肉炎がひどく全て抜歯になり歯がなくなったとのこと。手術の際の術前検査では特に異常はありませんでしたが、ウイルス検査でエイズキャリアとも判明。年は、8〜10歳くらいではないかと獣医から言われたそうです。

野良猫は相当な人間嫌い どうして?

こうした経緯で「てぃーるーむ」さんのシェルターにやって来たモンチッチくんは凶暴でブルブル震え、相当な人間嫌いの様子だったとか。

「確かに人からご飯をもらっていましたが、ご飯をあげていた方はご飯を出すだけで食べているのを見守ったり、話しかけたりはしていませんでした。時間になって来てるのが分かったらご飯を置いて室内にいたそうです。猫からするとご飯は食べられて余計なことはしてこないので、安心してご飯が食べられる場所と認識していたのかもしれません。

野良猫は生まれてから母猫に警戒心を持つように教育されます。人には近づくなと教わってきたと思いますが、生きるためには人からご飯をもらうしかないと思います。ここまで警戒心が強く、凶暴な理由はこれだというのは分かりません。もともとの性格かもしれませんが、手の動きをとにかく警戒しています。

尻尾のケガの原因のひとつにわなの可能性も考えられるため、もしそうだったとするとここまで警戒する理由が分かります。そうでなかったとしても、野良猫が嫌いな人に何か嫌なことをされていたのかもしれません。この現場から少し離れた場所にあるうちの近所では増えすぎた野良猫を駆除しようと町内会の老人たちが猫を虐待していました。

棒で殴ったり、駐車場を貸している農家のおばあちゃんが野良猫が車に乗ると苦情を言われたことで、寝ている猫の脚を枝切りハサミでちょん切っていたとも聞かされました。この話がきっかけで私はボランティアを始めたんです。近くでこんなことがあったことを考えるとこの子も何かされた過去がトラウマになっていると思います。ただ単に母猫に教わったことを守っているだけかもしれませんが…」

そんな警戒心が強いモンチッチくん。保護から半年ほど経った今はどんな様子なのでしょうか。

「シャーシャーです。保護から半年近く経過しましたが、今だに手が近づいてくると怒ります。それでも少しは柔らかくなったと感じています。頭をなでられるのは気持ちがいいと気づいたようです(笑)。人間に対して怖い、憎いという気持ちがあるうちは好きなだけシャーシャーでいいと思っています。焦らずゆっくり人間と生活することに慣れてもらいたいです。体調に問題がない子ですので、人馴れしたら里親様の募集も開始します。しかし…年齢的なこと、エイズキャリアとうことでなかなかおうちは見つからないと思います」

人馴れしない野良猫の保護後は…

そして、なかなか人馴れしないモンチッチくんのような元野良猫さんについて「てぃーるーむ」さんはこう訴えます。

「私たち夫婦で保護している子のほとんどが元野良猫だった子。成猫というだけで里親様が決まりにくいのは事実です。エイズや白血病のキャリアがあるともっと決まりにくくて。そのため成猫ばかりを保護しているとボランティアが多頭崩壊を招いてしまいます。そうならないために自活できる(餌やりさんがいる)成猫はTNRになると思います。

でも、世の中にはTNRも迷惑だと思う人もいます。数年前まで我が家の近所は猫が増えすぎていました。TNRをしてもすぐに減らすことはできないので、うちにごはんを食べに来る子だけと決め、人馴れしていない子でも保護しました。キャパもあるのでTNRになることもあります。すぐに人馴れする子、何年経っても人馴れしない子など猫の性格も様々。ただ人馴れさせることが大変と思ったことはありません。過酷な環境で生き抜いている猫たちの方が大変な想いをしてきたと思います。

人馴れしていない猫たちと向き合うのも楽しいです。昨日はダメだったけど、今日は許してくれた、またダメだったとか。シャーシャーな子と一喜一憂しながらお互い成長しています。触れなかった子が自分から来てくれたときの感動は言葉にならないくらいうれしいです。人馴れしていても、していなくても若くない成猫は里親様が決まりにくいです。どんなに人馴れしている成猫でも、デカいと言われスルーされることがほとんど。成猫こそ幸せになってもらいたいです」

   ◇  ◇

「保護猫シェアハウス てぃーるーむ」さんは、夫婦でボランティア活動をしているとのこと。主に成猫を保護しており、現在は保護猫約50匹。自宅周りの猫の保護とTNRをしているそうです。

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