「焼き物です。象嵌と金彩で回路模様を描くのにはまっています」
こんなポストされたのはHisui Pottery(@hisuipottery)さん。
投稿に添えられていたのは、“近未来”を感じさせる、まるで電子回路のような模様が描かれた美しい陶芸作品です。繊細なデザインと、黒い土の質感を活かした仕上がりに、多くの人たちが魅了されました。
「めちゃくちゃカッコいい…!」
「陶芸でこんな表現ができるなんて驚き」
「SF好きにはたまらないデザイン!」
「回路模様がめっちゃスタイリッシュ」
投稿には、称賛の声が多数寄せられました。話題の作品について、Hisui Potteryさんにお話を聞きました。
ーー電子回路の模様の作品を作ったのは?
「『攻殻機動隊』や『マトリックス』のような近未来SFが好きで、インターネットの概念図や電子回路を自分でも描いてみたいと思っていました。また、中学校の美術部時代に、古いパソコン等を解体して廃材アートを作った記憶があります。学生の頃から、そういったものへの漠然とした憧れがあったのかもしれません」
ーー初めに制作したのは?
「まずは試作品として豆皿を作りました。初期の頃は、器全体に釉薬を掛け、一部の線に金彩を施す、という図柄でした(写真)。回路を描けるようになった嬉しさはありつつも、『もっとカッコよくできるはず』という思いが今回の作品に繋がりました」
ーーこの作品を作る上で難しかったポイントは?
「黒い土を使っているのですが、透明の釉薬を掛けるとどうしても光沢感が出てしまうこと、釉薬が厚く掛かった部分が白っぽく見えること、が課題でした。土のマットな黒さを出しながら、細い線だけを金に光らせる方法を見出すのに時間がかかりました」
ーー陶芸を学び始めた経緯は?
「高校生の頃に美大・芸大を受験するか検討もしたのですが、金銭面の不安から普通の大学に進学し、2008年に一般企業に就職しました。しかし、その年の秋にリーマン・ショックが起こり、非常に影響の大きい業界にいたため、翌年退職しました。
同業大手が倒産するほどの時期でしたので、求職活動は選択せず、好きなことをやってみたいと、多治見市陶磁器意匠研究所に入りました。当時は全く違うものを作っていましたが、2年間で得られたものは大きかったです」
ーーお気に入りの作品はありますか?
「やはり、回路模様のフリーカップとマグカップです。実のところ、マグカップはまだ1つしか焼き上がっていません(制作中のものは複数あります)。『ようやく思い通りのものができた!』という喜びから、今回のタグに写真を投稿し、予想外の反響を得ることができました」
Hisui Potteryさんは「反響の大きさに驚いていますが、これからもいろいろなものを作っていきたいです。制作スピードは遅いですが、1つ1つ丁寧に作っていきますので、気長に見ていただけたら嬉しいです」と話してくれました。
Hisui Potteryさんのこだわりと試行錯誤の末に生み出された“回路模様”の陶芸作品。近未来SFの世界観をそのまま器に落とし込んだようなデザインに、多くの人が惹かれるのも納得ですね。