久しぶりに賃貸物件を見て回っていますが、ペット飼育可能物件が増えていることに驚かされています。しかし、ペット可能物件だからといって自由放任にしていいわけではありません。退去時に思わぬ額の修繕費用を負担しなければならなくなることもあります。今回はペット飼育可能物件を借りてペットを飼育する場合の注意点についてお話します。
賃貸物件を退去する場合の修繕義務
物件に限らず、ある物を借りた賃借人は、借りたものについて生じた損傷について、契約終了時にその損傷を原状に復する義務を負います(民法621条)。
これを原状回復義務と呼びますが、「原状回復」といっても自分で元の状態に戻さないといけないというわけではありません。特に借りているものが建物であれば、補修のための費用を借り手が精算することになります。一般的にはあらかじめ貸し手に預けている敷金による精算で処理されることになるでしょう。
また、この「損傷」からは、通常の使用収益によって生じた損耗や経年劣化を除くと定められています(同条括弧書き)。
法律上のルールを大まかにまとめると、通常一般とは言えないような方法で生じた損耗は、賃借人が負担することになります。
ペット飼育可能物件における「原状回復」
ペット飼育可能物件であっても特別な基準が定められているわけではありません。ペット飼育可能物件も、ペットによる物件の損傷や汚損まで許容してくれるわけではないのです。
多くの不動産管理会社が依拠している国交省発行の原状回復ガイドラインでも、ペット飼育は「ペットの躾や尿の後始末などの問題でもあることから、ペットにより柱、クロス等にキズが付いたり臭いが付着している場合は賃借人負担と判断される場合が多いと考えられる」としています。
中にはペットに寛容な物件、寛容な家主さんもいるかもしれませんが、ペットによる物件の損耗、例えば柱や床の引っかき傷やトイレに失敗して付着した臭いなどは、退去時のクリーニング代や補修費用を賃借人の負担とされることが多いでしょう。
また、ペット飼育可能物件では、退去時にハウスクリーニング費用や消臭・消毒費用を支払う、と特別に定められていることも多いです。ペット飼育可能物件への入居を検討されている方は退去時の原状回復の範囲がどのように設定されているのかを、既に入居中の方はご自身の賃貸借契約書を、確認してみてください。
できるだけ退去費用を抑えるために
このように、ペット飼育可能物件は、どうしても通常の物件よりもコストがかさむことが予想されます。いくらしつけをして気をつけていても、床などの張替えをしなければならないような損傷を与えてしまう可能性は残ります。
修繕費用をなるべく抑えるためには、床に分厚めのコルク素材などのカーペットを敷く、壁や柱に保護シートを貼る、フェンスやサークルを利用する、こまめに掃除・消臭して臭いの染みつきを減らすなどの注意が必要でしょう。