埼玉県に暮らす普通の高校生カップル、MくんとAさん。彼らの恋は中学時代から始まりました。地元の公立中学で部活動を通じて仲を深めた二人。Mくんは優しく温厚な性格、Aさんは明るく華やかな雰囲気が魅力的な女の子でした。そんな二人の恋路には、予想もしなかった障害が待ち受けていました。
有名私立の彼氏、地元公立の彼女
MくんとAさんの出会いは中学時代にさかのぼります。部活動を通じて親しい仲でしたが、中3の時には同じクラスになり、友達以上に進展。秋の文化祭でAさんから告白して二人の交際が始まりました。
しかし、高校進学で進路が分かれます。Mくんは東京都内の難関私立男子校へ、Aさんは地元の県立高校へ進学。それでも二人の仲は切れることはありませんでした。朝も最寄り駅で待ち合わせをし、通学デートを重ねていました。それぞれの学校の場所が違うため、一緒にいられるのは少しの距離になりますが、工夫して距離を縮めていきました。
母親という最大の壁
順調に見えた二人の恋でしたが、高校2年生になると、Mくんの家庭環境が影響を及ぼし始めます。
Mくんの実家は代々医者の家系。Mくんの母親は一人息子を医学部に進学させることに全力を注いでいました。その一方で、Aさんは活発な性格とSNSを通じた華やかな日常を楽しむタイプ。Mくんの母親は、Aさんのことを「息子の将来に悪影響を与える存在」と見なし、二人の交際を全力で妨害することになっていったのです。
SNSで監視される恋愛
Mくんの母親はAさんのSNSを探しだし、投稿内容を監視するようになりました。そこには、Aさんの派手な日常生活の投稿だけでなく、Mくんとピッタリ寄り添ったデートの写真なども並んでいました。母親はAさんのSNSを監視し続けます。
デートの予定をMくんが母親に伝えると、母親は絶妙なタイミングで家族行事をぶつけてきます。そして、医学部進学に強いといわれる土日に授業のある塾を強制的に追加。さらに、Mくんには「勉強が最優先」として不要な外出を禁止。二人っきりの時間を作らせないようにします。
一方、AさんはMくんの母親がそんな妨害をしているとはつゆほども知らず、Mくんの通塾の前後に、塾の近くの場所で、少しの時間を見つけてはMくんと会います。しかし、その直後にMくんと会ったことをSNSへ投稿してしまうため、母親に知られるのは時間の問題。母親はさらなる妨害作戦を絞りだすのでした。
すき間時間のデートと絶えない妨害
それでも二人はわずかな自由時間を使い、学校近くのカフェや塾の近くの公園で、短い時間を共有しようと努力を続けます。まるで禁じられた恋をする映画の主人公のような日々。しかしそのたびに、Mくんの母親が妨害に乗り出します。
Mくんの携帯の位置情報は家族間で共有されていたので、母親はMくんの位置を監視していました。デート中に突然Mくんのスマホに電話がかかってくることもしばしば。「いま何しているの?早く塾へ行きなさい!」と母親から厳しい声が届きます。そしてAさんが投稿した写真から、塾を無断で休んでいたことが発覚したMくん。母親から叱られたあげく、しばらく外出禁止になってしまうのです。
障害が多ければ多いほど恋愛は
最初は、「少しでも会いたい」と二人で工夫していましたが、会えない時間が増えるにつれ、Aさんの中に不信感が芽生えつつあります。「わたし、避けられてるのかな…」。一方、Mくんも勉強と恋愛の両立に疲れ、母親の期待と自分の意思の間で葛藤を抱えるようになりました。
来年二人は受験という別の試練を迎えます。母親の執念による妨害は、二人の絆を試す試練にもなっています。しかし、障害が多ければ多いほど、若い恋愛は燃え上がるもの。果たして二人は、どのような未来を選ぶのでしょうか。