厚底、原宿系…「平成レトロ」ブームはなぜ起こりどこへ向かうのか?「昭和レトロ」から続くリバイバル現象

中将 タカノリ 中将 タカノリ

2010年代後半から音楽やファッションのシーンで続く昭和ブーム。メディアやSNS上で「昭和レトロ」という言葉がお馴染みになり、もはや一つのジャンルとして定着した感もあるが、ここになって新たに浮上してきたのが「平成レトロ」。わずか数年前まで使っていた元号に「レトロ」を付けてしまうことに違和感を持つ人もいるだろうが、2~30年前、平成前半のカルチャーは今、若者たちから大きな注目を集めつつあるのだ。

近年インターネットやSNSの普及によりトレンドのサイクルは加速している。昭和レトロのすぐ後に、まださほどレトロ感のない平成レトロが盛り上がっているのもそうした潮流の一環。昭和以上に画像や映像のストックは多いのだから、若者から注目を集めないほうが不自然だろう。音楽で言うと小沢健二 featuring スチャダラパー『今夜はブギーバック』やOriginal Love『接吻』と言った渋谷系、米米CLUB『浪漫飛行』や広瀬香美『ロマンスの神様』と言ったバブル残り香系、そして安室奈美、椎名林檎、浜崎あゆみ、宇多田ヒカルと言った歌姫系の初期楽曲など。ファッションで言うとアメカジや、「SUPER LOVERS」、「BETTY’S BLUE」と言った原宿系、ルーズソックス、厚底ブーツなど「Y2K」と呼ばれるギャルファッションなどがSNSを中心にウケている。

こうしたリバイバル現象はけっして目新しいことではない。1980年頃に起こったフィフティーズ・オールディーズブーム、2000年代半ばに起こった昭和30年代ブームは代表的なリバイバルとして知られているし、小さなものならもっとある。僕は今40歳だが、20歳頃に音楽ならクレイジーケンバンドや大西ユカリさん、ファッションならベルボトム、柄シャツといった具合に昭和40年代風の昭和カルチャーがリバイバルするのを体験した。結局そのリバイバルは大きなものにはならなかったのだが、それには今とは大きく異なる事情があったと感じる。

インターネットは今ほどには普及しておらず、SNSもまだまだ黎明期だった時代のこと。若者は昭和のことなどほとんど知らないままに「昭和はダサい」という偏見を持っていた。また何かに強くこだわる人は「オタク」「マニア」などと呼ばれ軽蔑の対象となった。そんな中で、ややどぎつく個性的な昭和40年代カルチャーは一部の音楽ファン、ファッショニスタにはウケたものの、一般には珍奇で古臭いものとしか映らなかったのだ。

あの頃にくらべると今の若者は豊富な情報にアクセスできる。近年は音楽、ファッション共にやり尽くした感があり、まったく新しいものは生まれにくくなったが、代わりに古いものに偏見が無く、個人の趣味趣向にも大らかだ。おそらく今後はこれまでよりも短いスパンでさまざまなリバイバルが起こり、それらはブームが終息しても排斥されることなく定着してゆくだろう。個人的にもそのようにして多様で豊かなカルチャーが日本に根付いてほしいと思う。「温故知新」という言葉があるが、そうやって文化的な感覚が成熟してゆけば、いずれまた新しい創作がなされる時代も訪れるのではないか。今全盛の昭和レトロ、盛り上がりつつある平成レトロというブームがどのような変遷をたどるのか期待を持って見つめていたい。

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