京都府と滋賀県の医療・介護関係者や和菓子職人が高齢者でも安全に食べられるように開発した「やわらか和菓子」が、進化している。見た目は普通の餅や団子だが、口に入れると飲めるような気がするほど軟らかい。新食感の和菓子としても期待される一方、種類の充実や新たな開発手法の研究も進められている。
開発するのは、2010年に医師や管理栄養士らが立ち上げた「京滋摂食・嚥下[えんげ]を考える会」。ペースト状やゼリー状の介護食が主流の中、さまざまな職人らと連携して見た目も味もよい食品や介護食器作りに取り組んできた。
これまでに開発したのは、京料理の介護食や、むせにくいようにとろみをつけた日本酒、気管に入りにくいようばらけにくくした豆腐など。和菓子は13年から府生菓子協同組合などと連携し、7種類を生み出した。
最初の挑戦は、喉に詰まる危険性が高い餅だった。くっつきやすさを抑えつつ風味を残すため、材料の分量や組み合わせを試行錯誤。舌の上でほどけるような新食感の合わせ餅(420円)を作り出した。
その後、みたらし団子(290円)や桜餅(420円)、しそ餅(320円)なども誕生。どれも普通の和菓子と見た目や味をほとんど変えず、飲み込みやすさを高めた。
中には、スプーンでつぶせるほど軟らかいようかん(190円)をトーストに塗って楽しむ人も。「子も食べやすい」「新ジャンルの和菓子としても楽しめる」という反応もあり、介護食にとどまらない可能性もうかがわせる。
京都光華女子大(京都市右京区)は、和菓子の硬さや、くっつきやすさ、ばらけにくさが介護食に適しているかを機械で計測するなど、同会の開発を支援してきた。
最近では、統計的な手法を用いて、狙い通りの食感や飲み込みやすさを少ない試作で実現する和菓子の開発手法を研究中。土産選びなどの参考になるように、京都名物の和菓子の飲み込みやすさを数値化する取り組みにも着手しているという。
同会に設立時から携わる同大学の関道子教授は「日本の嚥下調整食(介護食)は世界でもすごく進歩している」と指摘し、海外への展開も思い描く。「お餅を食べると昔を思い出すと話す人もいた。お祝いなどハレの場に取り入れ、食の楽しさを感じてほしい」と話していた。
「タカシマフードファクトリー」のホームページなどから注文できる。嚥下障害のある人が食べる場合、専門家への相談や家族の試食を呼びかけている。