「梅酒は店で買うのが当たり前になる」 販売から15年、倒産寸前の「チョーヤ」を救った時代の転換 市場競争を勝ち抜いた本物の味

クラブTVO編集部 クラブTVO編集部

梅酒といえば、TVCMでもお馴染みの「チョーヤ」。そんな「チョーヤ梅酒」がもともとワインメーカーだったことをご存知でしょうかか?好調だったワイン製造から梅酒へと転換したきっかけ、梅酒は家庭で作るもので外で買うものではなかった時代との戦い…。今や海外からも注目されるようになった梅酒。その大ヒットの裏側には、人生をかけた一族のストーリーがありました。

大阪・羽曳野発!大ヒット商品を生み出す開発チームはわずか2人!?

本社があるのは大阪・羽曳野市。のどかな場所にある本社の建物は、思ったよりも小さな造りです。

創業者の孫にあたる、チョーヤ梅酒株式会社専務・金銅俊二さんに聞いてみました。「よく言われますが、梅にこだわった一物一価の会社ですのでこの規模の社屋で十分やっていけます!」とのこと。その知名度から、さぞかし大企業かと思いきや社員数は約130人。さらに、数々のヒット商品を生み出す商品開発チームはたった2人なのだそうです!

そんなチョーヤ梅酒のお膝元・羽曳野は昔からブドウ栽培が盛んな地域。会社も実はブドウ農家からスタートしたのです。なぜ、ブドウ農家が梅酒を作ることになったのでしょうか?

元々はワイン製造で成功していた「蝶矢」 。しかし…創業者の「ある行動」がきっかけでワインを捨てる決意!

創業者・金銅住太郎氏は羽曳野でブドウ農家を営んでいました。1924年からはワインの製造を開始します。味も品質も良いと評判になり、ワインメーカーとして安定した業績を上げていました。1957年、住太郎氏は60歳で引退を決め、3人の息子たちに会社を託します。

その後、ワインの本場・ヨーロッパへ引退旅行へ向かいます。フランス・ボルドーのワイナリーを訪れ、そこで飲んだ本場のワインのレベルの高さに驚愕。「これが日本に入ってきたら、日本中のブドウ酒は太刀打ちできない!」と大きなショックを受け、慌てた住太郎はすぐに帰国します。

当時の日本は酒の輸入制限があり、海外のワインが自由には入ってきていませんでした。本場とのレベルの違いを目の当たりにした住太郎は、将来輸入制限が解除された時の倒産の危機を感じたのです。そこで、生き残る道はただ一つ、≪世界で勝負できる、日本でしか作れない酒を造る≫ことだと息子たちの前で決意します。父親のワインの美味しさを信じていた息子たちは驚きましたが、連日連夜の会議の末、3つの【新商品の条件】を決定します。

①日本独自で将来的に輸出販売できる
②あまり国内で手掛けられていない
③突飛なものではなく身近で親しみやすい 

この3つを全て満たすのは、日本酒でも焼酎でもない、そこで考え付いたものが「梅酒」でした。

梅は欧米にはなく、質も量も日本が世界一。日本人はその美味しさも、健康にいいことも知っています。さらに当時は家庭で作るのが当たり前だったため商品化もされていませんでした。しかも、山を越えたお隣は日本一の梅の産地・和歌山。【梅文化が根付く日本】で【世界で勝負できる酒】=【梅酒】と判断したのです。

そして『近い将来、梅酒は家庭では作らなくなり、市場から買う時代が来る』という仮説にかけ、梅酒製造を開始しました。

『梅酒で成功しなければ人生を諦めろ!』背水の陣で挑み、奮起する息子たち

住太郎は『うちがこの先生き残るには、梅酒しかない。成功しなければ、人生を諦めろ!』と、先祖代々の田畑を売り払い退路を断ちます。背水の陣で挑む梅酒製造。息子たちも覚悟を決めました。

こうして1959年に世界最高品質を誇る日本の梅を使用した、蝶矢「本格梅酒」が誕生し、新たなスタートを切ります。

逆風だらけの船出!梅酒は「家で作る物」だった時代。さらなる追い討ちをかたけのは...

しかし、茨の道はここからでした。父の後を継いだ息子たちは、完成した梅酒の取引先を必死で探しまわりますが…当時、梅酒は「家で作るモノ」だった時代。「わざわざ買う客はいない」と、ほとんどの酒店に断られます。挙句の果てには社員からも梅酒製造への不満が続出する始末。しかし、2代目社長・和夫は「味噌も醤油も昔は家で作るのが当たり前だったのが、今は店で買うのが当たり前になった。梅酒もいつか買う時代が必ず来る」と信じ続けます。

そんな中、さらなる追い打ちが…1962年に酒税法が改正され、実は違法だった家庭での梅酒作りが公に認められることになります。こうして空前の「ホームリカーブーム」が到来しました。1970年には恐れていたワインの輸入自由化も始まり、梅酒は売れないまま10年が経過してしまいます。絶体絶命の状況…しかし梅酒に人生を賭けると決めた和夫は諦めませんでした。

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