2023年3月18日ダイヤ改正を持って、103系がJR和田岬線から引退しました。高度経済成長期に活躍した103系の引退ということもあり、メディアでは大々的に報道されました。もちろん、多くの鉄道ファンも訪れ、和田岬線はフィーバー状態でした。しかし、103系引退後の和田岬線に注目するメディアは皆無のように思われます。現在、車両面での注目ポイントはあるのでしょうか。
歴代の和田岬線の車両は個性派ぞろい
和田岬線は兵庫~和田岬間2.7キロの神戸市内にある短路線です。正式には山陽本線に属していますが、本線との直通列車はなく、兵庫~和田岬間を電車が往復しています。和田岬線でよく取り上げられるのが昼間時間帯は走らないダイヤです。和田岬駅は工業地帯にあるため、和田岬線の役割は専ら工場勤務者の足です。
そんな特色ある路線ということもあり、歴代の和田岬線の車両は個性派ぞろいでした。2001年7月の電化以前は座席を一部撤去した上で、片側1扉(反対側は3扉)しかないオリジナル塗装のディーゼルカーが使われ、鉄道ファンの間では羨望の的でした。
電化後はプロトタイプの103系が導入され、ずいぶんと普通の車両になりました。導入当初はそれほど注目されなかったように思います。しかし年数が経過するにつれ、全国的に103系は次々と廃車に追い込まれることに。結果的にプロトタイプの和田岬線103系が注目された、というわけです。
これからは音に注目したい和田岬線
現在は207系を6両編成化した上で、和田岬線専用車両に仕立てています。207系は平成生まれのJR第一世代の通勤電車。まだまだ、JR神戸線・京都線・宝塚線などでバリバリ活躍しています。そのせいか、昨年と比べると鉄道ファンの姿は少ないように思います。
それでは、まったく207系和田岬線専用車両が注目に値しないと言われるか、そうではありません。
注目してほしいのが「音」です。207系はJR西日本初のVVVFインバータ制御車です。VVVFインバータとは直流から交流に変換する機械です。昨今の電車はVVVFインバータ制御車が当たり前となり、モーターは交流が主流です。加速・減速時には「ウィーン」というVVVFインバータ制御による独特の音が車内に鳴り響きます。
他線で活躍する207系は順次リニューアルが実施され「体質改善車」になり、少し静かなタイプのVVVFインバータ制御に交換されています。
静かなVVVFインバータ制御への交換は全国的に実施され、大きな音を奏でるVVVFインバータ制御車両は少なくなっています。この傾向は今後も続くことでしょう。
2024年8月現在、207系和田岬線専用車両は登場時と同じ、「未体質改善車両」です。もし、今後も更新が行われない場合、初期VVVFインバータ制御の音が聞ける路線として、再び和田岬線が脚光を浴びるのではないでしょうか。