被爆の記憶を後世に伝えていこうと、滋賀県守山市の守山市遺族会が市内に植えた被爆2世の柿の木が、今年初めて三つ実を付けた。植樹から8年。実が付くかわからないと言われていたが、無事に実を付けたことに同会のメンバーは感激し、「平和の尊さを語り継ぎたい」としている。
同会は戦後70年の節目にあわせ、地元の戦争被害とともに原爆の悲劇を語り継ごうと、長崎県遺族会に相談。2015年に、長崎の爆心地から約900メートルで被爆し幹の半分が焼け焦げた柿の木の種から育てた苗木1本を、同市の樹木医から譲り受けた。
「2世の柿の木が実を付けるかは不明」と聞いていた。翌春に同公園の平和の広場に植樹し、会員が水をやり、肥料を与えるなどしてきた。80センチほどだった苗木は樹高約3メートルに育ったが、これまで実が付かず気をもんでいたという。
今年5月、木が花をつけ、6月末ごろには実が付いているのを会員が発見した。青い実は4~5センチほどに育っており、大きく茂った葉に隠れ、枝についている。
岡本勝一会長(82)は「花が咲いただけでなく、実もついて感激した。被爆した柿がしっかり根付いて実を付けたことを、平和の尊さを次世代につなぐ機会にしたい」としている。