「廃駅に置かれたノートへの書き込み」老夫婦が書いた最後の旅への思い…ネット哀感「筆圧に表れた万感の思いが伝わってくる」

渡辺 晴子 渡辺 晴子

「とある廃駅に置かれたノートへの書込み。
最後に書かれた力強い『さようなら』に目が留まった。
老夫婦が、最後の車旅で訪れた駅だという。
それから4年が経つが、今どうしているのか。遠くを見つめ、深く息をはいた」

とある廃駅に置かれたノートへの書き込みに思いをはせた“旅人”の投稿がX(旧Twitter)で話題になりました。

投稿したのは、一人旅研究会の栗原悠人さん(@hitoritabiken)。栗原さんは、単身で全国さまざまなスポットを巡り、その趣きのある風景写真をSNSに公開している“旅人”です。4年ほど前、昭和62年に廃止になった旧幌内線唐松駅跡(北海道三笠市)を訪れた時のこと。同駅に置かれたノートに、こんなことが書かれていたといいます。

「(一部略)
これからお墓にお参りに行きます
これが最後のお参りで 8月にも
来ましたが今日が最後です
最後のお参りです
                     さようなら
                  91才 89才    」

4年ほど前に一人旅で訪れた北海道の廃駅

91歳と89歳の老夫婦が書かれたと思われる書き込み。最後となる2人での車旅で訪れた駅のノートにつづられた「さようなら」のひと言に、栗原さんはさまざまな思いがこみ上げたそうです。そんな投稿に切ない気持ちをかみしめる人たちからたくさんのコメントが寄せられています。

「いずれ私にも来る終活。出来なくなる事が増えていくのだろう。自分と重ねつつ、その老夫婦を想い、色んな思いが溢れます」
「言いようのない気持ちになりますね…お元気だといいですね…」
「このノートを見て、ただ想いを馳せてしまいました。人生について考える。本当にそんな気持ち。一人旅さんの感性、想いも勝手に想像してしまいました。
素敵な投稿をありがとうございました」
「『最后』のお墓参りを一緒にお参りできる穏やかなひとときが、少なくともこの駅に、このご夫婦に、あったということ。筆圧に表れた万感の思いが伝わってくるようです」

多くの人たちの心に染みる投稿。老夫婦の書き込みにどんな思いを抱いたのか? 栗原さんに聞きました。

駅ノートに91歳と89歳の老夫婦がつづった「さようなら」の意味とは?

──駅ノートの書き込みを読まれたのは4年ほど前(令和3年9月25日)とのこと。昭和62年に廃止になった三笠市の旧幌内線唐松駅跡を訪れた時のことだそうですね。

「廃駅が好きで、当時道内の廃駅巡りの際に訪れました。駅周辺には町が広がっているものの、炭鉱の閉山によって空き地が目立っていました」

──老夫婦の方が書き残したと思われるノートの書き込み。どう思いましたか?

「最後の車旅、と書かれていますので、免許を返納されたんだと思います。その前の最後の旅と銘打っての訪問とのことですが、かつては三笠に住んでいて、閉山とともに岩見沢や札幌に移ってきたんじゃないかな、と邪推します。鉄道がなくなった今、お墓参りに行くことも叶わなくなりましたが、本人たちの悔しさや寂しさを考えると、いたたまれなくなります。胸に込み上げるものを感じ、駅の待合室では、遠くを見つめることしかできませんでした」

駅ノート「顔も名前も知る事もない方とつながれる場所」

──ふと目にされて、さまざまな思いをはせた駅ノートでした。

「駅ノートは、前の訪問者の書き込みを、後の訪問者が読むだけの一方通行なコミュニケーションですが、顔も名前も知る事もない方とつながれる場所でもあります。リアルタイムでの連絡が可能になった現代だからこそ、駅ノートから感じられるものは、余計に大きくなっているのかな、と思います」

──ご自身も書き込まれた?

「駅ノート巡りもしているので、駅への感想を書きました。その後で、書き込みをぱらぱら見ていて目に留まったのが、こちらの書き込みでした」

──今老夫婦はどうされているのか…。

「今もどこかで夫婦仲睦まじくゆっくりと暮らしていたらなと思います」

廃駅に訪れた時のことを投稿した栗原さん。人生初という単著での写真集が、マール社から発刊されることになったとのこと。題名は「一人旅研究会・ノスタルジック写真集~日本のなつかしい風景を旅する~」。8月27日頃発売予定で、全国の書店にて購入可能です。このほか、BOOTHでも全国の郷愁感じられるスポットの写真を、存分に掲載した写真集を販売中です。

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