頼清徳氏が総統に就任してから2カ月が過ぎるが、中国側の厳しい目線に全く変わりはない。むしろ、頼氏が就任演説で中国と台湾は隷属しないと主張したことで、中国は蔡前政権以上に強い圧力を台湾に加えようとしていると見られる。そのため、台湾有事のリスクは日に日に高まっているようにも感じられる。最近、日本のシンクタンクである言論NPOが発表したアンケート調査では、専門家の7割弱が台湾有事は発生するとの見方を示している。
日本国内でも近年、多くのメディアでこの問題が取り上げられ、どれくらいの確率で発生するのか、いつ起きるのかなどについて、様々な専門家が独自の見解を示している。しかし、実際にどういった順序で中国が台湾侵攻計画を進めるかについての見解はあまり示されていない。ここでは、具体的な手順について独自の見解を示したい。
その前の前提として、習政権は短期決戦で勝負を決めようと考えている可能性が高い。今日のウクライナ情勢では、ロシアは依然として侵攻を続けているものの、時間の経過とともにウクライナは欧米諸国から多額の軍事支援を受け、一進一退の状況が続いている。プーチン大統領は長期的な持久戦に持ち込む戦略かもしれない。しかし、台湾は海に囲まれており、陸上兵力の投入が難しいため、中国にとっては長期的な持久戦は有効手段とは言い難い。中国は一気に攻勢をかけ、米軍が具体的に台湾防衛に関わってくるまでに台湾を制圧することを目指すだろう。
まず、習政権は人民解放軍を台湾海峡沿いに集中的に配置し、軍事演習という名目で台湾上陸作戦に向けた準備を進めることだろう。ウクライナ侵攻直前、ウクライナ国境沿いにロシア軍が集中的に配置されたように、異常な軍隊の集中配置を有事の前兆と捉えるべきだろう。
そして、中国は海と空から台湾封鎖作戦を強行するだろう。台湾も日本同様にエネルギー資源などの戦略物資を海上輸送に依存しており、あらゆるものの遮断を行うことで台湾社会を混乱させるだけでなく、米国からの軍事支援、もっと言えば、米軍の台湾防衛を不可能にさせる狙いがある。
次に行うのが「大規模なミサイル攻撃」と「サイバー攻撃」だ。今日、台湾も防衛費の増額を図っているが、軍事力で台湾が中国に対抗するのは難しい。中国は上陸部隊の準備を進めると同時に、台湾軍の基地やその他の軍事施設などに対する同時多発的なミサイル攻撃や、軍のコントロールセンターや重要インフラに対するサイバー攻撃を激化させ、台湾を機能麻痺に追いやる作戦を強行するだろう。
そういった状況になれば、最後のステージである「中国軍の台湾上陸」を抑えることは極めて難しくなる。上陸作戦が中国の思い描くようにスムーズに進むかは分からないが、習政権は以上のような順序で台湾有事を想定している可能性がある。なお、中国は台湾本島への侵攻に先立ち、中国大陸の目の前にある金門島や馬祖島など台湾離島の奪取も適切な時期に実行するだろう。