よく、ここまで生きてくれた…。愛猫ユーリちゃんに対して、そんな感謝を抱くのは飼い主の氷雨さん(@awaimurakumo)。
ユーリちゃんは、猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)によって小脳に異常が生じて歩行が困難になる「小脳形成不全」や脳機能の乱れによって起きる「てんかん」と共に生きてきました。
ペットロスの真っ最中に得た出会い
ユーリちゃんは、元保護猫。コンビニ近くの野原にひとりでいたところを飼い主さんの同僚の友人宅で保護されました。
生後1カ月ほどだったユーリちゃんは栄養失調気味で、体が小さかったそう。保護されたお宅には先住犬がおり、迎え入れることが難しかったため、犬友さん宅で一時保護されることになりました。
犬友さんは動物保護団体に声をかけつつ、里親探しをスタート。そして、友人を経由し、飼い主さんに声がかかりました。
当時、飼い主さんは3カ月ほど前に先代猫のみーちゃん(22歳)を老衰で看取ったばかり。
ペットロスが苦しく、新しい子を迎えたいと思っていたところ、友人からLINEで送られてきたユーリちゃんの写真を見て、一目惚れ。すぐにトライアルを申し込みました。
トライアル前、飼い主さんはユーリちゃんの動画も貰ったそう。そこには、常に頭が震えているユーリちゃんの姿が。
保護主さんから「先天的に脳の障害があるようだけれども、震えがある以外に問題はないからちゃんと育つ。大丈夫と動物病院で言われた」との説明を受け、トライアルを開始しました。
一緒に暮らす中で辿り着いた「てんかん発作」との向き合い方
トライアルを始めてみると、ユーリちゃんの震えは頭だけではなく全身にあることが分かりました。
歩行がおぼつかず、ご飯を食べるのも大変そうな姿を見て、飼い主さんはネットで症状を検索。運動分野を司る小脳に障害がある「小脳形成不全」という病名を知りました。
初めて、てんかん発作を目にしたのはトライアル2日目の夜中。大きな物音で目を覚ますと、ユーリちゃんがケージの中で大暴れ。
飼い主さんはユーリちゃんが「てんかん」を持っているとは知りませんでしたが、ケージが壊れるのではないかと思うほど暴れる姿を見て、「てんかん」を疑ったそう。
翌日も同じ症状が見られたため、スマホで動画を撮影し、動物病院へ。獣医師からは、やはり「てんかん」であると告げられました。
この小ささでこの発作だと、長くは生きられない。獣医師からそう言われたため、飼い主さんは覚悟を持ってユーリちゃんを正式にお迎え。
お迎え当初、ユーリちゃんはてんかん発作が起きるたび、別猫のように暴れ、手が付けられませんでした。
「おそらく、色々なおうちを転々としたことや、お外で怖い目に遭ったことのストレスが大きかったのだと思います」
激しいてんかん発作は1週間ほど続きましたが、その後は落ち着き、軽めの発作に。しかし、3歳頃からは発作時に、眼球が左右に揺れる「眼球振盪(しんとう)」が見られるようになりました。
大抵の発作は数秒から数分で収まりますが、体を硬直させ、苦しそうに鳴くユーリちゃんが心配で、飼い主さんは抱き上げたり、優しく声掛けをしたりとサポート。神経の興奮を抑えるため、病院ではステロイドの注射をしてもらっています。
「一度の注射で1週間から2週間、症状が落ち着きますが、とにかく心配。激しい発作が起こって死んでしまうのではないかと不安になります。できることなら代わってあげたい」
自分らしい日常を謳歌して4歳に!
ユーリちゃんは自力での歩行や食事、排泄も難しいため、飼い主さんは猫らしい生活ができるようにサポート。
食事の時には自身の両脚でユーリちゃんの体を保定しながらお皿を持ち、揺れる頭を支えます。飼い主さんによれば、カリカリをひと粒ずつ口に運んであげることもあるのだとか。
また、歩行時には2~3歩ごとに1回は転ぶため、どこかに行きたそうな時には体を支えつつ、歩いてもらいます。
「私が「おいで」っていうと、転びながらも頑張って歩いてきてくれる。健気で愛おしい。ぎこちない所作で頑張ってグルーミングする姿もかわいいです」
自分らしいペースで歩行を楽しむユーリちゃんは、知的にゃんこでもあるよう。ご飯やおやつの時間を覚えており、飼い主さんがうっかりしていると呼びに来ることも。
なお、排便前後の“うんちハイ時”にはピョンピョンと飛び跳ね、コミカルな姿を見せてくれます。
どんなに疲れていても体調が悪くても、この子のお世話だけは辛いと思ったことがない。そう話す飼い主さんにとって、ユーリちゃんは娘であり、生きる意味。会社の社員証には、ユーリちゃんの写真を忍ばせており、へこんだ時に見てはパワーを貰っています。
「今年、無事に4歳を迎えました。今後も何が起きるかわかりませんが、天寿を全うさせてあげたいと強く思っています」
猫と生きるとは、どういうことなのか。飼い主さんとユーリちゃんの絆を知ると、そんな大切な問いを自分に投げかけたくもなります。