生まれたばかりの子猫たち
コウちゃん(3歳2ヶ月・メス)とメイちゃん(3歳2ヶ月・メス)は、2020年6月、ある会社の敷地内で発見された。まだ生まれたばかりで母猫も一緒に5匹でいたという。猫好きの社員たちが「このままでは危険だ」と判断して、捕獲作戦を決行した。母猫は人間に対して非常に警戒心が強く、全く近寄ることができなかった。
子猫たちも同じように警戒していたが、比較的あっさりとエサにつられて、最初にのこのこと出てきたのがコウちゃんとメイちゃんだった。2匹合わせて、コウメイちゃんと呼ばれている。姉妹を預かった人が里親を探し、友人で、埼玉県在住のHさん夫妻に声をかけた。
「猫を飼ったことがなかったのであまり積極的には考えられなかった」というHさん夫妻。猫との生活の大先輩であり、「にゃんこ先生」と呼んでいる友人が、「Hさん夫妻なら育てられる」と思って声をかけてくれたことや、初めて対面したときのコウメイちゃんの様子があまりにも可愛らしく、いじらしく、一生懸命だったので心を動かされたそうだ。
「お話をいただいた時には、命を預かることに不安も感じ、何日も悩み、何度か会いに行き、話し合った末、うちに迎えると決めました。ちょうどその少し前に、うさぎやハムスターなどの小動物と触れ合う機会があったこともきっかけの1つだったと思います。友人からは、コウメイ姉妹は簡単に捕獲されたので、『飼いやすいと思うよー』『ふたり一緒のほうが子猫同士遊んでくれるから楽だよ』と諭されました。トイレなどのしつけもすべて友人がしてくれました」
その後、他の姉妹猫2匹が保護され別のお家に。その後母猫も無事保護され、今はそれぞれ別の里親さんのもとで過ごしているという。
家族が増えた喜び
コウメイちゃんは、数時間クルマで移動してきたので緊張したのか不安だったのか、キャリーケースの中でうんちをしてしまい、飲み水もひっくり返していたので、家に着いた時は全身が汚れていた。
「いきなり洗面所でシャワーをすることになりました。手慣れた様子で友人が洗っていく横で、オタオタしているだけでした。コウメイは好奇心が旺盛で、シャワーが終わるとすぐに愛くるしい目をキラキラさせながら、猫じゃらしにも興味を示して、大興奮でした!」
Hさん夫妻は、子猫をどうやって、どのくらいの強さで触ったらよいのか、どこを触れられたくないのか、本当に分からないことだらけだった。しばらくは傷つけないようにかなり恐る恐るコミュニケーションを取っていたという。
名前は、飼い主の名前が三国志の軍師、諸葛亮孔明由来だったため、家族が増える喜びから繋がりのある名前にしようと考えた。諸葛亮孔明から「コウ」「メイ」をもらって名付けたそうだ。
Hさん夫妻は昼間は留守がちだが、家で過ごしている時、コウメイちゃんは夫妻にべったりで甘えてくる。
「可愛くて仕方ありません。ソファに座っていたり、食事のテーブルに座っている時に駆け寄ってきて、必ず膝の上で丸くなって寝ています。夜もみんなで川の字になって寝られるのも嬉しいです。コウメイは仲良しで、毎朝すごい勢いで大運動会を繰り広げたり、一緒にくっついて寝たり、トイレも一緒に使ったりします。見ているだけで微笑ましくてニヤけてしまいます」
出会えたことに感謝
信頼関係はしっかり築けているつもりだが、外からの帰宅直後は、コウちゃんには必ず逃げられる。一度立ち止まり、はっきりと姿を確認して声を聞くのだが、カーテンの裏に逃げてしまう。
「インターホンの音を聞くと猛ダッシュでベッドの奥深くに潜り込むような怖がりで人見知りな性格なので、警戒するのはしょうがないのかもしれませんが、いつか、おかえり―と駆け寄って来てくれることを夢見ています」
メイちゃんはコウちゃんとは対照的に、嬉々としてお迎えしてくれる。
「保護された時に比較的チョロく確保されたとはいえ、相変わらず警戒心強めな2匹ですが、最近は私たちに心を許してくれることが増えたんじゃないかと感じています。特にメイちゃんは、ふと振り返ると仰向けになって、脚をぴよーんとして、おばけ手で落ちているのでびっくりします(笑)」
自分では犬派だと思っていたのだが、完全に猫派になったというHさん夫妻。家の中は、キャットタワーやトンネル、ベッドなどなどコウメイちゃんに快適に過ごしてもらえるように猫グッズだらけになっているという。
「言葉が伝わらない状況でも少し寛容になった気がします。自分の都合ばかりではなく、これまでよりは猫の事情も考えられるようになったんじゃないかと思います。仕事など人間生活で疲れたときの大きな癒やしになっていますし、この子たち優先で毎日過ごしています。また、動物に対する虐待、生体販売についても深く考えるようになりました。世の中の猫たちがみんな幸せになれる環境になってほしいなと思います。コウメイと出会えたことに本当に感謝しています」