コンビニの駐車場で、餌やりの人を待ち続ける日々に終止符 地域猫・セブンくんの保護が問いかける「本当の優しさ」とは

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

和歌山市で暮らすセブンくんは、ゴリゴリな見た目とは裏腹にとてもおとなしい黒猫。2020年、城下町にゃんこの会和歌山による一斉TNR(避妊・去勢後に元の場所に戻す活動)により、去勢した印である耳カットをされ地域猫になりました。

セブンくんがよくいる場所は、コンビニエンスストアの駐車場。「優しい人」がおやつをくれることが多いんです。それ目当てに、他の猫たちも多く集まっていました。

地域猫に悩む店長

猫たちはこれで良いかもしれませんが、コンビニエンスストアの店長は困り果てました。キッチリ包装されているとはいえ、食品を扱う店です。清潔とはいえない地域猫が集まるのは、衛生的に好ましくありません。どうにかしないとと、頭を悩ませていました。

店長は猫が好きなんです。だから、積極的に追い払いたくない。追い払ったあと、猫たちがご飯をもらえる保証もありませんから。だから店長は悩みました。どこに相談して良いかも分からず、1年が経過してしまいました。

2021年12月、とても寒い日のこと。一組の親子が捕獲器を持って駐車場をウロウロとしています。手にはチュールを持って、セブンくんをおびき寄せようとしています。捕まえたいのでしょうか。でも、なかなか上手くいきません。

親子はどこかに電話をかけ始めました。さて、その電話の相手は…。

来るか分からない「優しい人」より暖かい家

ほどなくして1台の車が到着。中から出てきたのは、城下町にゃんこの会和歌山代表の奥康子さんです。親子と何やら話しています。店長のもとへもやって来ました。どうやら、セブンくんを捕獲するとのこと。

その後、奥さんはセブンくんにチュールを与え、セブンくんが美味しそうに舐めているところを首根っこを掴んで捕獲。セブンくんはキャリーケースの中に、ポンと入れられてしまいました。

この様子を見ていた店長は大喜び!あの子はもう寒空の下、来るか分からない「優しい人」を待つ必要もない。セブンくんが暖かい家で過ごせることに、心から安心しました。

店長は奥さんとセブンくんを迎え入れてくれる家族にお礼を言いました。そしてセブンくんにも言いました。「幸せになってほしい」と。

現在のセブンくんはお家が大好き!

現在のセブンくんは、家の中が大好きな猫に成長。お祖母ちゃんがうつらうつらしているとダッシュして走っていき、ボン!と大きな体をもたれかけます。お祖母ちゃんはびっくりして起きてしまうことも。

玩具で遊ぶことも覚え、一番好きなのは「レインボーヘビ」とのこと。テグスをつけて長男に引っ張ってもらって、それを追いかけます。これがもう楽しくて楽しくて仕方がありません。他の玩具も楽しいけれど、やっぱり「レインボーヘビ」が一番!

そんなセブンくんが常々不思議に思うことがあるんです。それは家族がお風呂に入ること。なんでわざわざ濡れにいくのか分かりません。だから家族のお風呂の時間は、お風呂で観察をします。

とても幸せな様子のセブンくんの話を家族から聞くと、奥さんはとても幸せな気分になるんですって。でも、このセブンくんの例は、レアケースだと奥さんは言います。

どうか家に入れてあげて

というのも、地域猫はこれ以上繁殖しないだけの、所有者不明の猫。誰の猫か分からない分、糞尿トラブルやゴミ荒らしなど、問題は山積みです。飼ってあげようと手を差し伸べた人がいたとしても、地域猫を可愛がっている「優しい人」がそれを阻むケースが多いと、奥さんは言います。

「可愛がっていると言い張る人が、家に連れて帰ってくれれば良いのですが…」

苦い表情でこう言う奥さんの表情からは、何度も同様のトラブルがあったことを伺わせます。

「猫は可愛いだけではありません。怪我もしますし病気にもなります。放置すると、人間の公衆衛生にも影響が出てきます。地域猫といえど、野良猫と変わりません。どうか、可能な限りはおうち猫にしてやってください」

奥さんのこの言葉が「優しい人」に届くよう、周辺の方々の意識の改善が待たれます。

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【城下町にゃんこの会和歌山】
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