最後に
ヒトや動物は生きるために、食べて飲んではあたりまえです。でも終末期になると、その必要が無くなります。ですから本能的に身体が要求しなくなるのです。
食べなければ、聞こえは悪いですが「餓死」ということになります。ですが、これは天国へ軟着陸するために身体から余計な荷物を降ろしている行為なのです。そのために食べない・飲まないにもかかわらず、尿はどんどん出てゆき脱水が進み、まるで干物や落ち葉のように身軽になっていきます。そして、全身の臓器の機能が落ちていくので、食べない飲まない以外に呼吸もしにくい、動けない、排泄しにくいといった状態になり、脱水と酸欠も進行していきます。
飢餓や酸欠になると、動物の脳内ではモルヒネのような物質が分泌され、心地よくなると言われています。また、脱水になると意識レベルが低下してボンヤリ・ウトウトうします。呼吸がしにくいと体内の二酸化炭素が増えますが、この二酸化炭素には麻酔作用があります。ですから死ぬということは、ぼんやりしたまどろみの中で、この世から天国に移動することであり、辛くはありません。
食べれば元気になると思っておられる方もおられますが、魂の灯が消えようとしているときは、いくら食べても元気になりません。
ところが、この上手に枯れていく終末期に過量な点滴をすると、点滴を処理できずに水分過剰となり溺死状態となってしまう可能性があります。こうなればつらく苦しい状況です。点滴を処理するのは本ニャンです。弱った身体に鞭を打つようなものでしかありません。
ヒトも動物も100%亡くなります。大切なのは、その日をどうやって迎えるのか、その日までどうやって生きるのか、その日までどれだけの人間や動物を愛し愛されてきたのかだと思います。逝き方は生き方です。
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今回のマニュアルは初版的な位置づけで、今後皆様からのご質問を受けてどんどん改定していく予定です。
マニュアルは当院(キャットクリニック~犬も診ます~)のホームページにも掲載しています。必要な時にダウンロードなさってくださいませ。
◆小宮 みぎわ 獣医師/滋賀県近江八幡市「キャットクリニック ~犬も診ます~」代表。2003年より動物病院勤務。治療が困難な病気、慢性の病気などに対して、漢方治療や分子栄養学を取り入れた治療が有効な症例を経験し、これらの治療を積極的に行うため2019年4月に開院。慢性病のひとつである循環器病に関して、学会認定医を取得。
▽キャットクリニック~犬も診ます~
https://catsclinic2018.com/
▽ニャンが安全に天国へ行く方法
https://catsclinic2018.com/images/medical/endoflife/manual_ver_1.pdf