2024年元日に発生した「令和6年能登半島地震」。発生以降、複数の動物福祉団体がペットの命を守る支援を行ってきました。
1月下旬には、飼い主とペットが一緒に避難生活を送れる「ペット専用同伴避難所」が保護団体の尽力で開設され、早い段階でここで暮らすことになったのがラブラドール・レトリーバーの「メイちゃん」でした。
周囲を気遣い「玄関先のすみっこ」での避難生活
メイちゃんの飼い主さんの家は地震で半壊。損傷が激しく、避難生活を余儀なくされました。
当初、飼い主さんとメイちゃんが向かったのは避難所となった小学校。この頃は震災が発生してから数日ほどの時期で、まだ避難ルールなどが明確化されていない時期。「ペットと一緒に避難して良い」「ペットと一緒の避難は不可」といったことも明確化されていませんでした。
飼い主さんは「避難している人の中には犬が苦手な人がいるのではないか」「アレルギーの人もいるのではないか」と避難所の中に入ることをためらい、周囲の視線を気にしながら小学校の玄関先のすみっこで暮らしていました。
「ペット専用同伴避難所」でメイちゃんが眠れるように
メイちゃんも終始人が行き交うこの玄関先で落ち着いて眠ることができず、後には小学校自体も再開。飼い主さんは空き家を探すことにしましたが、めぼしい物件はどこも「ペット不可」。
行き場を失った飼い主さんとメイちゃんの助けとなったのが、ペット専用同伴避難所でした。この時期は断水が続き、生活上の不自由は多くありました。それでも同じ悩みを抱えていたペット同伴の被災者同士が交流することで、飼い主さんそしてメイちゃんも安心して眠れるようになりました。
預かり施設で見つかったメイちゃんの腫瘍
飼い主さんは、週末の時間を利用し、半壊した自宅に戻り、少しずつ家の中を片付けました。「家を建て直すべきか、修理して住み続けるべきか」と悩み続けたそうです。4月になり、家のある地域に水が通るようになったことを機に「修理して住み続けよう」と決断しました。
飼い主さんが自宅へと一時的に戻る際、メイちゃんは「置いていかないで」といつも鳴きわめきました。こういった場面で役立ったのが保護団体、ピースワンコ・ジャパンのスタッフが常駐する「わんにゃんデイケアハウス珠洲」。飼い主さんと一時的に離れるワンコのお世話をスタッフが代わりに行うところで、メイちゃんはここでは鳴きわめくことはありませんでした。
さらにはここでメイちゃんの体に腫瘍があることが分かり、後の摘出手術にもつながりました。
「やっぱりここが一番だワン」
さまざまな苦難を経て、飼い主さんとメイちゃんは自宅に戻ることになりました。3カ月ぶりの我が家に、メイちゃんはうれしそうな表情を見せてくれ「やっぱりここが一番だワン」と匂いを確認するかのように家じゅうをクンクンして回りました。
飼い主さんはもちろん、地元の人たちにとっては生活の再建はまだ途上です。それでもメイちゃんと一緒に家に戻れたことを飼い主さんは喜びました。
「振り返って一番に思うのは、本当にいろいろな方に助けられたこと。人って本当に温かいと感じました。メイと一緒に過ごせる場所があったことも本当に救われました。この3ヵ月間は震災のショックから立ち直り、生活を再建するための準備期間だった気がします。立ち直るきっかけと前を向く覚悟を、周囲の人々とこの避難所からいただきました」
ピースワンコ・ジャパン
https://wanko.peace-winds.org/