神戸市立王子動物園のジャイアントパンダ、タンタン(メス、旦旦)が2024年3月31日夜、旅立ちました。28歳。心臓の病気が公表され、その後観覧休止になり2年。「また会いたい」と願うファンとタンタンをつないだのは、公式SNS(旧Twitter、現X)がつづる「#きょうのタンタン」でした。担当した飼育の梅元さんに聞きました。
タンタンは阪神淡路大震災が発生した1995年、中国で誕生。2000年に来園し、神戸の人々を勇気づけてきました。夢中でタケを食べ、ニンジンなどを頬張る仕草が上品だと評判で、2020年からは公式SNSがタンタンだけをひたすら伝えるほのぼの投稿をスタート。多くの人が癒されてきたのですが、先月中旬、タンタンのケアに専念するため毎日投稿は難しくなったとして休止が告知されました。
—また会いたいと多くの人が願っていました
「最期は、眠るように…。展示場のいつもタイヤがあった辺りの奥の方にいました。1週間ほど前から櫓に上がらなくなり、床のマットの上でゴロゴロしていることが多かったです。獣医、飼育担当で泊まり体制をとっていて、この日はぼくら担当飼育員は帰宅していましたが、連絡を受けて駆けつけました」
—病気が分かってから3年
「治らないことは理解していましたし、『その時』が明日なのか、あるいは1年後なのか…、覚悟はしていました。体調を落とさないよう、あの子の生活の質を保ちたいという思いでした。タンタンはがんばりました。ほんまに、ほんまに、ようがんばったと思います」
―「#きょうのタンタン」に癒された人は多いです
「治療がうまくいき、タンタン自身はそれなりに元気でした。頻繁に来られない方にもいろいろな姿を見てもらいという思いで始めた投稿でした。これをきっかけにタンタンを知ってくれた方も多いみたいで、うれしいです」
—タンタンとファンをつなぐ言葉も生まれました。
「治療も観覧も『タンタン・ファースト』でした。急な観覧中止、時間短縮もありましたが、受け入れていただけました。応援してくださるみなさんも本当に『チーム・タンタン』の一員でした」
—3月17日の投稿が最後に
「いつも通り、また明日ね、でした。#きょうのタンタン の投稿はもうできません。幕を下ろさないと、エンドロールをきっちりしないとと思います。撮りためたものを共有できたら、みなさんも、ぼく自身も、前向きになれるでしょうか。担当して16年。たくさんのことを教えてもらいました。今は、さびしい。あの子がもういないのがさびしいです」
ちょうど桜が咲き誇る季節。療養中のタンタンが外に出やすいよう、パンダ館の屋外展示場を覆っていた目隠しは取り払われ、館内は花や手紙などがあふれ、たくさんの人の思いがタンタンを包んでいます。
「元気いっぱいな頃の写真を見返していたら、懐かしい気持ちになりました」と梅元さん。「また桜を見せたかった。去年好きだったネマガリダケを食べさせてやりたかった。もうこれで静かに過ごせるんだな、と思います。応援してくださったみなさんには、これからもタンタンをずっと好きでいてもらえたら、忘れないでいてもらえたらありがたいです」