「リアル書店」と「ネット書店」の違いとは!?たとえた漫画に反響、共感の声「わかりみが過ぎる」「俺を買えと主張してくる本は当たり」

山本 明 山本 明

 ネットでポチッ、とクリックするだけで欲しい本が手に入る…思えば便利な世の中になりました。しかしネット書店のありがたさをかみしめつつも、リアル書店に思いがけない本との出会いを求める人もいます。そんな思いを漫画にした「パパ頭」(@nonnyakonyako)さんのポストが「X」で話題になりました。

 「日々のつぶやき。 本屋が好き(1/2) 私の好みとか購買履歴とか、そういったものを完全に度外視した意識の外から出会いたいといいますか…この気持ち共感してもらえるだろうか」

 そんなつぶやきとともに投稿された漫画には、「ネットでほぼどんな本でも買えるし、(その方が)安いし便利なくらい」と思いつつも「私は本屋が好きだ」とリアル書店を訪れる主人公が描かれています。

 書店内で主人公は本棚にずらりと並ぶたくさんの本に圧倒され、目移りしたあげく「何なら買う予定のなかった本を買っちゃったり」して本の束を大事に胸に抱えつつ店を出ます。

 当初欲しかった本を購入しないのは本末転倒のような気もしますが、作者は「本を購入する」という行為が「ネット書店」と「リアル書店」ではどのような違いがあるか、それぞれ擬人化して絵で表現してみせます。

 「ネット書店」は片眼鏡(モノクル)をかけた白髪の上品な老執事が高級車の後部座席を開け「お待ちしておりました」と腰を折って丁寧に迎えてくれます。

 一方「リアル書店」は、鋭い目つきの若い男性が助手席の扉を開け放ち「話は後だ!!」「とにかく乗れ!!」と緊迫した表情で訴えてきます。

「わかりみが過ぎる。目当ての本に向かう途中、あるいは目当ての本を手に取ってからレジに向かう途中に平積みの本の表紙に目を奪われたり。大型書店はアミューズメント」

「わかります。私も本屋の方が好きです。俺を買えって主張してくる本は当たりです。」

「ターゲッティングなどされずに 雑多な情報を浴びる事ができる 贅沢な空間」

 両者の違いを見事にとらえた表現に賛辞と共感の声が寄せられています。パパ頭さんに本作についてお聞きしました。

「書店を応援する漫画を描けないか」

――描いたきっかけを教えてください。

昨今はネットで気楽に本を買えるようになったことに加え電子書籍の普及もあって、書店の売り上げは厳しい状況が続いていると聞きます。街から少しずつ本屋の姿が消えていくのを見る度に寂しい気持ちがあり、何かしら書店を応援するような漫画を描けないかと思ったのが作品作りのきっかけになりました。

――エールが込められているのですね。

同じように本を購入するにしても書店には書店にしかない魅力があるはず、それって何だろう?自分は書店のどんなところに魅力を感じているのか、そういったことを考えながら描きました。

「読書という行為に未知を求めている」

――擬人化の場面が秀逸です。

これは私の印象ですが、ネット書店には効率的で合理的なイメージが、リアル書店には非効率的で非合理的なイメージがあります。こんな風に書くと、リアル書店には何もいいところがないように見えるのですが、実際には非効率的だったり非合理的なところに面白みが宿ることも多いように思います。漫画ではそんな私のイメージを絵で表現しています。

――全く違う「購入体験」が描かれていますね。

ネット書店はきっとスマートかつ低負担で、最短距離を走り予定通りの場所に私を連れて行ってくれるでしょう。一方のリアル書店は、散々紆余曲折したあげく、まったくの予想外の場所へと私を連れて行ってしまうでしょう。

――目的地を定めず「とにかく乗れ!!」と。

想定外の場所へと連れてかれてしまうのは困りもののようにも思うのですが、じゃあどちらの方がより満足度が高いのかと聞かれたら、存外後者なような気がするんですね。人によって考え方は違うと思いますが、私はそもそも読書という行為全体に対して、未知を求めているのかもしれません。

――投稿が拡散し、共感の輪が広がりました。

ネット書店が市場の中心をなしている現代において、漫画の内容は共感してもらえないかもしれないと思っていたのですが、多くの方から肯定的な感想をいただくことができ、非常に嬉しく感じました。ネット書店が普及したことでかえってリアル書店の輪郭がはっきりしたというか、今まで当たり前だと思っていた魅力に気付く機会自体は増えたのかもしれません。

書店の経営者やスタッフの方からもコメントが

 さらにパパ頭さんは「書店の経営者やスタッフの方からコメントをいただけたことも印象に残りました。皆さんそれぞれの立場で、リアル書店の役割や本の扱い方を考えてらっしゃる様子が伝わってきて、プロの気概に触れるといいますか、『かっこいいなぁ』と思いました」と語っています。

 またパパ頭さんは日々、お子さんとの生活を描いたエッセイ漫画をアカウントに投稿中でご本も発売しています。話題になった投稿でその独特のユーモアセンスに魅了された人はタイムラインをのぞいてみてくださいね。

◇「パパが育休とってみたら妻子への愛が深まった話」(パパ頭 著|KADOKAWA 刊行)https://amazon.co.jp/dp/4046059672

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