国税庁・確定申告サイトに設置されている「確定申告書作成コーナー」の、生年月日を入力するプルダウンの設定にふと疑問が湧いた。西暦で1890年、元号で明治23年から始まっている。いずれも134年前。現在我が国での最高齢は、兵庫県芦屋市に住む女性で、1908年5月23日生まれの115歳だ。
年齢の入力欄がなぜ134年前から始まっているのか、国税庁に尋ねてみた。
システムを運用し始めたときの年号が削除されないまま残っている
広報担当者によると「結論からいうと、(真相は)分からないのが正直なところです」とのこと。
「海外のことは存じ上げませんが、国内で確認できる範囲で134歳の方はいないと報告されています。確定申告書作成コーナーはこれまで何年も運用しているシステムですが、生年月日について大きく修正をした経緯は見当たりませんでした」
ちなみに確定申告書作成コーナーは、入札で選定した民間業者に委託して構築されたもので、2002年から運用されているそうだ。
「長い歴史があるものなので、過去にそれをどう決めたのか、今となっては分かりかねるのです」
広報担当者が「あくまで推測ですが……」と前置きしていうには、確定申告書作成コーナーが運用され始めた22年前の1890年生まれは112歳だったので、システムの構築を請け負った業者が「これくらいの高齢者はいるだろう」と想定したのではないかとのこと。だが、システムの仕様は業者が独断で決められるものではなく、発注や制作の過程で国税庁としての意思は当然に反映されているそうだ。
では、100歳を越える高齢者が、確定申告をしなければならないことがあるのだろうか。
「たとえば不動産や株取引など何らかの収入があれば、どんなにご高齢の方でも確定申告が必要です」
生年月日の入力欄のうち生まれ年は、年々追加されていくそうだ。134年前まで遡れるのは、経費の都合で修正を必要な範囲だけにとどめているからだという。
「システム全体を1年ごとに更新することはしておりません。134年前の年号が残っていることで不都合を生じた人がいたという報告はありませんし、システム上の支障もありませんので」とのことだった。
逆に2023年生まれの設定も……「0歳児」でも収入を得ているケースがあるから
古い年号が残っていることとは逆に、生まれ年のいちばん新しいもので2023年(令和5年)の設定がある。まだ「0歳」の赤ちゃんでも、確定申告が必要なことがあるのだろうか。
「たとえば赤ちゃん雑誌のモデルをやって、その報酬を得ているお子さんがおられます」
たしかに、モデルやドラマ・映画などで収入を得る子どもがいる。金銭管理を保護者に任せていても、稼いでいるのは当人なのだ。
「100歳を超えたご高齢の方やまだ読み書きのできないお子さんでも、個人として収入があれば、申告する必要が税法上あり得るのです。ご自分で書類を作成できなくても、ご家族や税理士さんが代わってすることは認められています」
こうして実際に説明を聞いてみると、いずれも思いのほか単純な理由で「なーんだ、そういうことだったのか」と納得。
尚、国税庁では、2024年提出分の確定申告、所得税と復興特別所得税の納税期限は3月15日(金)まで。個人事業主の消費税および地方消費税の納税期限は4月1日(日)までなので、早めの準備をしましょうと呼びかけている。
▽国税庁 確定申告書等作成コーナー
https://www.keisan.nta.go.jp/kyoutu/ky/sm/top#bsctrl