着物を世界のファッションに。異色の着物デザイナーとして知られる紫藤尚世(しとう・ひさよ)さんが発表した新ブランド「AAAPARE(アーパレー)」が国内外で注目を集めている。作品の多くは日本の着物文化を継承しながら洋服感覚で着こなせるのが特徴で、女優の藤原紀香さんら著名人にも愛好者は多い。この道47年。紫藤尚世さんに話を聞いた。
著名人も注目する斬新なKIMONOの世界観
紫藤さんは東京・浅草生まれ。3歳から日本舞踊を習い、名取「青柳光輔」師匠として活躍。幼いころより着物に慣れ親しみ、1977年からは着物デザイナーとして着物の変革を唱えてきた。
「着物を世界のファッションにしたい。そう思って取り組んできました。その際、着付けがネックになることから着物の良さを守りながら洋服のように着られるものをデザインしてきました」
紫藤さんが最初に注目を集めたのは1987年、歌手の中森明菜さんの「DESIRE ~情熱~」(日本レコード大賞受賞)の衣装デザインを担当したこと。これで「着物デザイナー紫藤尚世」の名前が広がった。
翌1988年からは毎年、着物を一般に広めることを目的に「あなたが主役KIMONOファッションショー」を開催。現在まで続いている。2005年には来日中のマイケル・ジャクソンから着物制作の依頼を受けたことも。また2019年にはドバイのハムダン皇太子が来店し、購入した着物をインスタにアップすると、世界1500万人以上のフォロワーに公開されたという。さらに2022年にはニューヨーク「トランプタワー」にて着物の販売を開始すると、これがメラニア夫人の目にも留まり、オートクチュールの着物発注を受けたことも話題になった。
新作が脚光を浴びたファッションショー
2023年の「あなたが主役KIMONOファッションショー」は東京アメリカンクラブで開かれ、紫藤さんの作品をひと目みたいというファン約300人で埋め尽くされた。司会は東海林のり子さんとテリー伊藤さんが務め、ゲストとして女優の音無美紀子さんや歌舞伎俳優の河合雪之丞さんらが出演。さらに、女優の藤原紀香さんが紫藤さんの誕生日祝いに駆けつけ、プライベートで参加した。
ショーは2部構成からなり、第2部で新着物ブランド「AAAPARE」が発表された。もともとは22年に誕生したものだが、その後に発展。スクラップを活用した装飾、アクセサリーなどを制作し、世界共通のテーマ「脱炭素社会」に向けた思いを世界に発信している。
作品は紫藤さん独自の「布合わせ、色合わせ、柄合わせ」がベースになっているが、お披露目された今回の「AAAPARE」はおしゃれで、着物の進化系と呼びたいほどインパクト大。ショーに参加した藤原紀香さんも「世界に発信できる素晴らしい着物ブランド」と話した。
2024年、大注目の簡単に着られる「AAAPARE」
ロゴマークは金色で「AAAPARE」は日本語の「天晴れ」から来ている。またAAA (トリプルA ) はLuxury(最高級)の意味。その文字の周りにある紫色の薄い線はJAPAN の“J”を表現し、江戸紫色の使用によって日本の粋な文化を世界に向けて発信しているという。
作品の多くは主に江戸時代や大正・明治の頃の絵師や着物作家によって数多く残されてきた「丸帯」に着眼したもの。紫藤さんは「日本独自の織りや縫製、刺繍と言った匠の職人技を生かし、その上で新たなデザインを施し、紫藤尚世の作品として、新しい命を与え、よみがえらせた」と言う。
エキゾチックで斬新だった中森明菜さんの衣装から37年。もちろん、今後も時代に合わせ、着物の魅力を世界に発信していく考えで「AAAPAREはアパレル業界が抱えているロスや廃棄の問題にも取り組んでいます。洋服感覚で簡単に着られるようになっていますので、ぜひ、この記事をご覧になった皆様にも着ていただきたい」と話している。
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