マイホーム購入の選択肢に、中古マンションを検討する方が増えています。高騰が続く建築資材に、職人不足、海外からの投資流入など、さまざまな要因で新築マンションの値段は上がる一方。「とても都心部で新築マンションは候補にあげられない…」という状況が続く間は、中古マンションの人気も上がっていきそうです。
そんな中古マンションでの家探しをしていたAさん(関東在住、40代、フルタイム)一家が悩んだのは、全く条件の異なる二つの中古マンション。新築よりも選択肢の幅が広くなる中古マンション選びでは、家族の意見をまとめる難しさがありました。
「7000万円程度までは無理なく返済できそうです」
ともに40代のAさん夫婦が家探しを始めるにあたって最初にしたことは「予算のイメージ」を決めることでした。共働きの夫婦として5年一緒に暮らす間、一定の生活費をそれぞれが共有口座に入金し、残りは各自の管理としていたため、家族全体の資産がどれくらいあるかも把握できていなかったそうです。貯金のほか、生命保険や夫の会社の社員持ち株、コツコツと少額を入れてきた投資信託の積み立てなど、一度整理をしつつ、どれくらいの頭金を用意できるか検討するため、ファイナンシャルプランナーに相談することに。
周囲の人の経験談や親からのアドバイスで、なんとなく「予算5000万円」を物件購入価格の目安にするイメージがありました。とはいえ、特に根拠もない数字だったので、ファイナンシャルプランナーに相談することには夫婦ともに前向きだったそうです。
幸い両家の親ともに健在で親世代の資産の心配をしなくて済むこと、子どもは一人っ子で兄弟の予定はないこと、奨学金の返済や車の維持費など大きな出費がないこともあり、ファイナンシャルプランナーからは「住宅購入の予算5000万円なら、これから趣味などにお金をかけても十分貯蓄にも対応できます」との回答が。しかも今後、転職や退職などで大きな収入減がない前提であれば「7000万円程度までは教育費や老後資産の最低目標をクリアしつつ、無理なく返済できそうです」というアドバイスまでもらいました。
しかし、そのアドバイスが、のちのちAさん夫婦の「大喧嘩」につながってしまいます。
お互い一歩も譲れない「狭くて古い都心VS築浅で広い郊外」
Aさん夫婦は、さっそく、それぞれ物件情報を集めることにしました。
Aさんは自他ともに認める「堅実派」。当初イメージ通り予算5000万円、育児家事と仕事が両立しやすいよう通勤時間が短いエリアの物件が気になります。その代わり、築年数と広さには目をつぶっています。
一方夫のBさんは「休日は家でのんびり過ごしたいインドア派」。趣味がスマホのゲームなので、通勤時間が長いことも気にならないタイプだったため、郊外にできた比較的新しい、設備のよいマンションに惹かれます。
それぞれが自分のイメージする物件をリストアップした結果、最終的に残ったのは「5000万円・2LDK・55平方メートル・都心の築45年マンション」VS「7000万円・4LDK・90平方メートル・築浅の郊外マンション」。まったくタイプの違う中古マンションで意見が真っ二つに分かれてしまいました。
「予算の縛り」がプロのお墨付きで拡がってしまったため、普通なら「それだけは共通認識になるはず」の予算すら一致しないこの状況…。まったく正反対の主張に、一時期は「離婚」もよぎる事態になったそうですが…。
意見が分かれたときは…「ほかにポイントはないか?」
最終的に、Aさん夫婦は「5000万円・2LDK・55平方メートル・築45年マンション」を選んだそうです。
最終的に選んだ決め手はマンション内に「空室がない」ということでした。
Bさんが、長年不動産営業として仕事をしている友人に愚痴を言ったところ「どちらもそれぞれ魅力があるから、結論は出ない。資産として考えるなら、空室がない方、売りに出ている部屋が少ない方を選ぶ」とアドバイスを受けたそうです。
確かに、7000万円の物件は部屋数が多い大規模マンションなためか、空室があり、売却情報も多数出ていました。一方5000万円の物件は低層で管理費も安く、きちんと修繕されていて入居者も代替わりしている様子で、めったに売りに出ない物件でした。
Bさんも「今は一生住む時代ではないし、働いている間は便利なところで、将来も手放しやすい方がいいかもしれない」と納得しての決断でした。
意見が分かれたときは「ほかにポイントはないか?」という視点が大切なのかもしれません、とAさんも満足しています。