令和6年能登半島地震発生から3週間余り。被災した人への支援は徐々に整いつつあるようですが、ペットへの支援は行き届いているとは言えません。有事の際、優先されるべきは人命です。ただ、動物たちもまた被災者。その命を救おうと、全国から愛護団体や個人活動家が現地を訪れています。兵庫・尼崎を拠点に活動する『つかねこ』代表・安部壮剛氏も、地震発生直後から何度も足を運んでサポートを続けています。被災動物たちの現状と、私たちにできることについてお聞きしました。
ペットと避難するということ
―現地ではどのような活動を?
安部 人と犬猫、両方への支援物資を車に積んで行き、必要としている方々に配ったり、SNSを通じてSOSのあった迷子猫の捜索・捕獲、負傷猫の病院搬送などを行なっています。飼い主さんがやむを得ず手放すことを決めた猫数匹と、世話をしてくれる人がいなくなった地域猫数匹は連れて帰りました。新しい家族を見つけてあげられたらと思います。
―インスタグラムやⅩ(旧Twitter)といったSNSを有効活用されていますね。
安部 現地の状況や迷子猫の情報はほとんどSNSから入手しました。また、兵庫県で開催する譲渡会の会場に支援物資を持って来てくださいとSNSでお願いしたら、想像以上の数が集まり本当にありがたかったですね。避難所にもよりますが、最初の頃は毛布など暖を取るものが不足していたので、そういった物もとても喜ばれました。
―ペットへの支援物資も喜ばれたのでは?
安部 ある避難所の駐車場で犬と小さいお子さんと車中泊をしている女性に会いました。ケージやフードなどお渡しするととても喜んでくださり、「ペットシーツは本部にもありますよ」とお伝えすると、「犬と一緒に来ていると言いづらい」と。同伴避難できる(ペットと同じスペースで過ごせる)避難所はほとんどありませんし、車中泊の場合もかなり気をつかわれているようでした。実際、ペットの支援物資を届けると、『こんなときに何がペットだ』とお叱りを受けたこともあります。断水している場所ではペットのための水が欲しいなんて言えないでしょうから、避難グッズの中には必ず水を入れておくことをおすすめします。
―フードも食べ慣れたものを用意しておきたいですよね?
安部 理想はそうですが、避難が長引けば支援のフードを食べざるを得なくなります。そのとき「決まったフードしか食べない」では困りますから、病気やアレルギーの子は別として、日頃からいろいろなものを食べられるようにしておくことも大切です。
動物への支援も「必要緊急」
―「不要不急の人は被災地に来ないで」といった呼びかけがされていますが。
安部 誰かに飼われていたペットはもちろん、飼い主のいない動物たちの命を救うことも「必要緊急」だと思っています。避難所に置いてあるエサをあさりに来たり、家の中で味噌をなめている子もいました。それくらい切羽詰まっているんです。緊急車両が通るときは当然、道を開けますし、できるだけ深夜に移動して邪魔にならないようにもしています。県外ナンバーの車で行って、ゴーストタウンと化したエリアでウロウロしていては現地の皆さんを不安にさせるでしょうから、「ペット緊急捜索活動」と書いたものを胸と背中に掲示して、事情を説明しながら活動しています。「不要不急」ではないということを分かってほしいですね。
―印象に残るレスキュー現場は?
安部 家の中から猫の鳴き声がしたので許可を得て入ると、多頭飼育崩壊を起こしていました。地震がきっかけで飼育放棄してもらえたのは、ある意味よかったと思っています。
―今後の活動予定を教えてください。
安部 地震発生から時間がたっていますが、まだ救える命はあるはずです。ご高齢だったり、周りの目を気にして積極的にペットを捜せずにいる方、地域猫としてかわいがっていたのに世話ができなくなった方に代わって捜索と保護は続けていきたいですし、まだまだ十分とは言えない物資も届けたい。窓口になっている市役所などに届けても、各避難所に行き渡らないという現実があるので、道の駅やホームセンターの駐車場で時間を決めて配布することも始めています。その情報の発信はやはりSNSですね。必要な人に必要な物が届くよう考えていきます。
また、僕たちは普段、兵庫県尼崎市の行政と連携して活動しているので、被災地での経験を生かして、避難所に配備しておいたほうがいい物を提案したり、自分たちが被災者になったときへの準備も進めています。
『つかねこ』に限らず、現地で活動してくれている方々のおかげで救われた命があります。その命と再会を果たし、心が救われたという被災者もいるでしょう。その活動は「必要緊急」だと私も思います。