2024年米大統領選…トランプ氏返り咲きなら日米関係はどうなる 安倍元総理の「ゴルフ外交」からの教訓

治安 太郎 治安 太郎

2024年がスタートした。今年は多くの国で選挙が行われるが、最大のポイントになるのは 11月に行われる米大統領選挙である。ここでバイデンが勝つかトランプが勝つかで世界情勢は大きく変化することになる。今年は2025年以降の世界情勢の行方を占う上で極めて重要な年なのだ。

既に、トランプが勝利すれば、ウクライナ支援は停止され、米中間では再び貿易摩擦が激しくなり、NATO脱退など欧州との間では再び亀裂が深まるのではないかなど、多くの可能性が専門家の間で指摘されている。日本も今一度トランプとの付き合い方を考える必要があろう。

8年前、米国では民主党のヒラリークリントンとトランプの間で激しい選挙戦が展開され、トランプが勝利した。トランプは選挙戦のときからメキシコとの国境沿いに壁を作る、不法移民の取り締まりを強化する、諸外国が米国の雇用を奪っているなどと過激な発言を繰り返し、多くの日本人もトランプが勝利すれば日米関係が危うくなると不安の声を口にしていた。

しかし、安倍元総理はトランプと個人的な信頼関係を構築することで、その不安をすぐに払拭した。選挙に勝利したトランプを真っ先に尋ねたのが安倍元総理だった。安倍元総理は選挙直後にニューヨークにあるトランプタワーを訪れ、お互いの趣味であるゴルフの話で盛り上がり、トランプに金色のゴルフクラブを手土産に渡した。その後、両者は会談を行うごとにゴルフを楽しみ、それによってトランプを不安視する声は聞こえなくなっていった。

そして、ここで我々が気をつけなければならないのは、安倍元総理の時代にトランプとは良好な関係を築けたので、第2次トランプ政権になっても不安はないと勝手に認識することだ。第1次トランプ政権時に良好な関係を構築できたのは「安倍トランプ」の個人的関係によるものであり、第2次政権時に日本の総理がトランプと良好な関係を構築できるかは不透明だ。

2009年当時の鳩山民主党政権は、米軍普天間飛行場を最低でも県外に移転させると主張していたが、それに強く反対する米国のオバマ政権との間には大きな乖離が生じた。2010年4月に両者がこれについて会話した際、5月末までに普天間飛行場の移設問題を解決すると伝えた鳩山首相に対し、オバマ大統領は「きちんと責任をとれるのか」と強い不快感を示した。個人的関係によって日米関係も大きく変わる。第2次トランプ政権になっても、日本は新たな良好な関係をトランプと作る必要がある。

個人的関係によって日米関係も大きく変わる。第2次トランプ政権になっても、日本は新たな良好な関係をトランプと作る必要がある。

また、この間に米中の経済力、軍事力の拮抗も顕著になり、近年は先端半導体分野での覇権競争も激しくなっており、第2次トランプ政権では前回以上に激しい米中貿易戦争が勃発する可能性が高い。アメリカファーストを掲げるトランプであれば、米国の国益を断固として守る意識で中国へ激しい貿易制裁を発動することだろう。そういった状況下では、トランプが先端半導体分野に限らず、対中輸出規制で日本に同調するよう圧力を掛け、また安全保障分野で軍事的役割を拡大させるよう日本へ迫ってくるシナリオも十分に考えられよう。日本は今のうちからトランプ勝利にシナリオを十分に検討し始める必要がある。

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