能登半島地震の発生後、ネット上では外出時に携帯する「防災ポーチ」を見直す動きが広まっています。自宅以外で災害にあったときに備えて、必要最低限の防災グッズをポーチにまとめたもの。ポーチの中身は簡易トイレやようかん、小銭など。人によっては使い捨てコンタクトレンズや薬などを数日分入れる人も。
「カバン重そうじゃない?」と言われても安心したい
防災士で防災備蓄収納マスタープランナーの資格を持つ、防災TETORI(北海道)の代表石黒里奈さんも防災ポーチを持ち歩く一人。
石黒さんは2日、能登半島での地震を受け、自身のSNSを更新。「帰省中、旅行中で地震に遭遇した方も多くいるかと思います。やはりカバンの中に防災ポーチは欠かせない…。『カバン重そうじゃない?』と言われても、防災ポーチがなかったら不安で不安で。防災グッズがカバンにあるだけで災害に対応できるので、ぜひ防災ポーチを持ち歩いてほしいです」と投稿しました。
石黒さんが普段持ち歩くのは、カイロ、防寒シート、簡易トイレ、マスク、ティッシュ、ハンカチ、圧縮タオル、ライト、靴下、ラジオ、モバイルバッテリー、絆創膏、飴、ようかん、小銭の15品目。小ぶりなポーチに全て収納しています。
石黒さんに話を聞きました。
──いつから防災ポーチを持ち歩くように。
「2018年の北海道胆振東部地震の前から自宅用に防災リュックや非常食を用意していましたが、実際に私自身が自宅のある札幌で被災をし、旅行で札幌に来ている方々が困っている姿を目の当たりにした際に、『災害は自宅にいる時だけに発生するものではない』と強く思いました。そこから常に防災ポーチを持ち歩き、外出時の災害にも対応できるようにしています」
──絶対に外せないアイテムは。
「簡易トイレは外せません。トイレは我慢できるものではなく、特に冬に被災した際は寒さから尿意も近くなります。断水した時には外出先のトイレの便座に簡易トイレの袋を被せるだけで簡単に使用できます」
──防災ポーチを検討中の人にアドバイスを。
「『外で被災をしたら何が必要かな?』と想像した際に、きっと皆さんの頭の中に漠然と防災グッズが浮かんでくるかと思います。皆さんの頭の中に思い浮かんだ物が『あなたが一番必要だと思っている』防災グッズです。まずはその防災グッズをカバンに忍ばせておくだけでも、防災に対して意識付けになります。そして、防災について意識付けができた後でも大丈夫なので『冬の外で被災したらどうしよう』『旅行先で地震にあったら…』といろいろなパターンを想像して、いつ何が起きてもいいように防災ポーチを作ることをおすすめします。
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人と防災未来センター(神戸市中央区)は2012年から公式サイトで「減災グッズチェックリスト」を公開しています。いつも携帯するものは「0次の備え」、非常持ち出し品は「1次の備え」、備蓄品は「2次の備え」と位置付け、非常持ち出し品の中から携帯できそうなものをバッグやポケットに入れて身につけること提案。「いつどこで被災するかわからない災いへの安心感を持ち歩こう」としています。また、各地の消防署でも防災訓練などの催しの中で防災ポーチを紹介し、「身構えず気軽に取り組める防災対策」として広めています。
1日の地震発生以降、SNSでは防災ポーチに関する写真投稿が増加。「外出先で災害にあっても安心したい」「持ち歩き用の防災グッズを100円ショップでそろえました」「普段使いのバッグの中に用意しました」「もしものときのために、子どものランドセルの中にも入れました」「100均でそろえました」などの投稿が目立っています。また以前から備えているという人たちからは、「電車に閉じ込められたとき、偶然バッグに入ってたお菓子で助かった」「賞味期限の長いお菓子をいつも持ち歩いています」「緊急時でも心を落ち着かせるために推しの写真も入れてます」などの声もありました。