子どもが偶然もぐり込んだ空間→「居心地よさそう!」と開発のきっかけに 試作品は無償貸与「欲しいでしょ!全部の学校に!」

谷町 邦子 谷町 邦子

放課後デイサービスで「集中して人の話が聞けなかった子が、ボックスの中だと話が聞けるようになった」、小学校の職員たちからの「雑音が減った」というアイテム紹介がX(旧Twitter)で話題に。開発秘話を聞きました。

それは、大人には聞こえない周波数の音やノイズなどを吸収する素材で作った「カームダウンボックス」です。投稿したのは、発達に課題を抱えた子どものために開発された道具を販売するネットストア「tobiraco」のアカウント。一般社団法人国際調音・整音協会(以下、「国際調音・整音協会」)が、試作中の「カームダウンボックス」を学校や放課後デイサービスなどの施設におこなっている無償貸与を紹介するためでした。

「自宅に欲しい~。と思ったら、学校やデイが対象だった。学校の先生にお知らせしちゃおうと思います」「欲しいでしょ!! 全部の学校に!!」「これ、ちょっと試してみたいなー」「折り畳みできる形になったら自宅に欲しい お値段おいくらだろう」などの声が寄せられ、関心の高さがうかがえます。

tobiracoの担当者さん自身も入ってみたところ「心落ち着いて出たくなくなりました」と実感し、「学校や療育施設に当たり前のように置かれるといいな」という思いからの拡散したのだそう。投稿翌日には大きな反響があり、「無償貸与のキャパを超え、いますぐの貸与が難しい状況」に。

多くの人が関心を寄せる「カームダウンボックス」の仕組みや開発のきっかけについて「国際調音・整音協会」にたずねました。

偶然から開発がスタート!

2021年設立の「国際調音・整音協会」は、人に寄り添った音環境の整備を推進。「カームダウンボックス」の開発が始まったのは設立するより前の2013年から。開発のきっかけは意外な出来事でした。

「開発は特殊な効果を発揮し調音するパネル『オーラルソニック』の検証をする過程で始まったんです。ノイズを吸音するので、アカデミー賞授賞式会場のオーケストラピットや、会議室、診療室などで使用されている製品ですが、展示会でボックス型の『オーラルソニック』を展示したら、偶然そこに子どもが入り込み、とても居心地が良さそうにしていたため、『カームダウンボックス』として開発することになりました」

「カームダウンボックス」は、外側を木材、内側を特殊な調音するパネルで三方と天井を囲み、快適な音空間を作り出すという仕組み。

現在は1施設に1つ、3カ月の期限を区切って、フィードバックを条件に無償貸与し、「必要に駆られている場所に貸し出し、ご意見を頂いています」。その感想ををもとに改良するというサイクルで、開発を続けていくとのことです。

これまで貸与先からは、生徒の意見を受けて入り口の半分を布で覆って外からの視線を調整する、睡眠障害がある子どもでもこの中でなら眠ることができるなど、開発当初は思ってもみなかった使用方法が寄せられて、参考になっているそうです。そして、今回は、数々の施設から想定以上の応募があり、特別支援学級や放課後デイサービスに貸し出しされ、「毎日利用している子供が必ずいます」といった声がすでに届いているとのこと。 

国際調音・整音協会は賛助会員からの会費をはじめ、寄付や東京都共同募金会の「赤い羽根募金」を通じて必要な費用をあつめ、東京都共同募金会の配分金で購入した「カームダウンボックス」を学校や児童クラブ、障害児通所支援施設、社会福祉法人施設などに提供しています。

◇  ◇

今回のカームダウンボックスは音環境に注目したタイプですが、近年は羽田空港、成田国際空港、国立競技場といった公共施設などに、「カームダウン・クールダウンスペース(またはルーム)」といった空間も常設で増えつつあります。こちらは壁で遮断した空間をつくりあげることで、「知的・精神・発達障害、自閉症、認知症、感覚過敏などの症状」のある人が不安や緊張を和らげることを目的に設置されています。「国際調音・整音協会」は「ぜひ、音環境に配慮された素材で設計してほしい」とのコメントを寄せています。

「国際調音・整音協会」は、企業や団体と協力して「調音・整音」の手法の研究や開発、公共施設などへの「音環境」の改善の提案、啓発活動を実施しています。その一環として、「音環境」改善のために必要な知識や機材の設置方法などのスキルを認定する資格、「サウンドソムリエ検定」を創設。講座や実験を通して知識や技術の普及、人材の育成に努めています。

■一般社団法人国際調音・整音協会(ISAAA) 
https://chouon.or.jp/
■一般社団法人国際調音・整音協会「サウンドソムリエ検定」 https://chouon.or.jp/soundsommelier/

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース