隣のレジに並んでいたおじいさん「あんたの方が先に待ってたやろ、入りや」…思いがけない親切に感激した住職、その後、取った行動は?

渡辺 晴子 渡辺 晴子

「先日ホームセンターでレジ1に並んだ。暫く後、お爺さんが隣のレジ2に並んだ。その時はたまたまレジ2が先に掃けていって、お爺さんの番になった。すると彼は拙に『あんたの方が先に待ってたやろ。入りや』と譲ってくれた。とても嬉しかったが、お礼を言って辞退し、そのままレジ1に並び続けた。」

お寺の住職さんがホームセンターのレジに並んでいた時に出くわしたほっこりエピソードがX(旧Twitter)で話題になりました。

投稿したのは、「洗手院(千手院)」さん(@senjuin1010)。岐阜県関市にある曹洞宗のお寺「千手院」の住職・橋本絢也さんです。橋本さんがホームセンターのレジに並んでいた時のこと。隣のレジに並んでいたおじいさんから「あんたの方が先に待ってたやろ。入りや」と自分の前に入るよう声を掛けられたとのこと。とてもうれしかったそうですが、おじいさんにお礼を言ったものの実際には入らず自分が並んでいた列のまま順番を待ったといいます。

ホームセンターから立ち去るおじいさんを追い掛けた住職「嬉しかったありがとう。寒いからこれどうぞ」

とはいえ、言葉だけではなくさらに感謝の気持ちを伝えたかったという橋本さんは、ホームセンターから立ち去るおじいさんを追い掛けてホットコーヒーを手渡したとか…。

「帰り際、あまりにも嬉しくてお爺さんを追いかけて、買っていたホットコーヒーを渡してしまった。『嬉しかったありがとう。寒いからこれどうぞ』と。お爺さんはニカッと笑って軽トラでブブーッと去っていった。何となく自分用のコーヒーを買い直す事は躊躇われて、ミルクティーを買って帰った。」

橋本さんとおじいさんとの間で交わした心温まる出来事…そんな投稿に「素敵なエピソード」「いい話だ…」と、心をほっこりさせる人たちからたくさんのコメントが寄せられています。

「レジって本当に難しい。こっちが空いてると思ったら研修中の新人さんだったりして私も悔しい思いをよくします。お爺さんとてもいい人でしたね、嬉しくなって何かあげたくなっちゃう気持ちもわかる〜!」
「コーヒーが似合う爽快なお爺さんに渡す用のコーヒー、その後の柔らかな気持ちを包み込むようなミルクティー……なんだか素敵なエピソードでした」
「こういうのをイケおじぃって言うんだよな。かっけえぜ。人生の大先輩は。こんなおじいにおれはなりたい。」
「どちらも良い人だ…朝から心がほかほかしました」
「そのやりとりこそが互いの思いやり」

多くの人たちを笑顔にしたほっこりエピソード。ホームセンターのレジに並んでいた時のことを、橋本さんに聞きました。

個別並びのレジ 住職の前に2人、おじいさんの前に1人並んでいたが…

──今回のおじいさんとのエピソードを投稿しようと思ったのは。

「特にこれと言った理由はございませんが、私が体験したことをありのままにお伝えしようと、ただ思った次第です」

──それぞれ隣同士でレジに並んでいたとのこと。橋本さんの前、おじいさんの前にはそれぞれ何人くらい並んでいた?

「あまり記憶が定かではありませんが、私の前には2人、おじいさんの前には1人だったかと思います。つまり、私が3番目、おじいさんは2番目の順番でそれぞれの列に並んでいたんです」

──そして、おじいさんの順番が回ってきた時に「あんたの方が先に待ってたやろ。入りや」と突然、声を掛けられたと。

「はい、びっくりいたしました。こちらの方を見て手招きされていたのですが、最初は誰に合図しているのか理解できませんでした。そこで、自分を指さして『私のこと?』とジェスチャーで尋ねてみたところ、私のことで間違いないようであり、その後、例のセリフで譲っていただけた、という流れです」

──ただ橋本さんはおじいさんの列に入らず、お礼を言ったんですよね。

「そうです。おじいさんの後ろには誰も並んでおりませんでしたが、私の前もまあすぐに空くだろうと思い、急いでもいなかったため、お礼を申し上げ丁重に辞退いたしました。おじいさんはそこでも笑顔で手を挙げて『おっけおっけ』と言うような素振りでした」

ホットコーヒーを受け取ったおじいさん「ありがとう!」とニカッと笑った

──とはいえ、お礼の言葉だけではなくさらに感謝の気持ちを伝えようと、自分用に買ったホットコーヒーを渡そうとおじいさんを追い掛けた。その時のおじいさんの反応は?

「『スイマセン』と声を掛けましたが、最初はおじいさんも私のことが分からなかったようで、『先ほどレジを譲っていただいた者です』と昔話みたいな自己紹介をしたところ、思い出されたようにお見受けいたしました。まあ、驚いていたと思います。コーヒーを受け取っていただけた後は『ありがとう!』とニカッと笑っていただけました」

──そして、自分用にはコーヒーではなくミルクティーを買って帰宅。お味はいかがでしたか。

「コーヒー以外ならば何でもよかったのですが、一番最初に目に入ったのがミルクティーでした。すっきりとしたおいしさでしたね」

──スーパーなどでレジ待ちしている時、おじいさんのように譲ってくれる方はなかなかいないかと…。今回の体験を通じて、思ったことは。

「その店舗はいわゆる『フォーク並び』ではない個別並びのレジだったので、今回のような出来事に出くわしました。個別並びでは、譲っていただけるシーンはほぼないように思います。おじいさんの行いは、誰にでもできるほど簡単な行いなのに、現実としてわれわれはそれに出会うことが皆無であります。

目の前の自分の行いを、反射や今までの経験からの流れで漫然と行うことこそがそのギャップの原因なのではと、愚考します。ただ目の前の現実に真摯に積極的に『他にも不違である』(自分も他人も区別しないで、自分のことと同じように他人にも接するということ)として向き合っていきたいと、あらためて思わせられる出来事でした」

   ◇  ◇

千手院は、1288年に奈良県から関に移ってきたとのこと。1570年に曹洞宗に改宗しましたが、無住の時代が長らく続き1743年には火事により焼失。翌1744年、現在の安桜山の麓に再建され、今に至ります。刀鍛冶と縁の深いことから、刀鍛冶の祖と言われる元重公の石碑と位牌が安置されており、毎年11月には供養祭も行われているとのことです。

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