保護されたワンコはすべてをあきらめた表情だった 壊死した右前脚の指を手術で切断 スタッフの愛情を受けて散歩の楽しさを知った

松田 義人 松田 義人

2021年6月頃のこと。九州地方の保健所に雑種のメスのワンコが収容されました。工業地帯で彷徨っているところを捕獲されたそうです。なんらかの事情で人間がこの地に捨てた可能性もあります。

いずれにしても、保健所の収容には期限があり引き取り手が現れなければ、殺処分される可能性もあります。これを知った地元のボランティアチーム、わんにゃんレスキュー・はぴねす(以下、はぴねす)のスタッフは、迷わずこのワンコを保護することにしました。

全てを諦めたかのような悲しい目を浮かべていた

はぴねすのスタッフはこのワンコに「まるみ」という名前をつけてあげました。保護当初のまるみは悲しそうな目をしており、全てを諦めたかのような表情でした。

実際、保健所の職員さんが水やエサを用意しても、全く口にすることはなく、声を出すこともなかったと言います。もし心ない人間が、こんなに小さなまるみを捨てたのだとすれば、まるみには「裏切られた」という絶望と、「それでも生き延びなければならない」という想いの両方で、孤独感や不安でいっぱいだったはずです。胸が苦しくなるはぴねすのスタッフでしたが、それでも悲しんでばかりもいられません。

「大丈夫。これからは幸せを目指して一緒にがんばっていこうね」とまるみに声をかけ、世話を続けながら新しい里親さんとのマッチングにかける思いを強く胸に抱きました。

脚先の切断手術を受けることに

保護当初のまるみは、何度も何度も出産した形跡があり、歯がボロボロ。そして、右前脚をけがしており、赤く腫れ化膿していました。すぐに動物病院へ連れていきました。診断結果は、貧血とフィラリア陽性の持病。そして、右前脚は爪の付け根から化膿しており足の裏まで穴が開いており、細胞が壊死して最悪脚先が落ちてしまう可能性があるとのことでした。

「なんとか健康を取り戻してほしい」と願うスタッフは、獣医師からの治療の指示を全て受け入れると同時に、はぴねすに所属する預かりスタッフさんの家で、まるみのお世話をしてもらうことにしました。預かりスタッフさんは「しばらくご飯を食べてくれないのではないか」と考えていましたが、この家でのまるみはすぐにエサ、薬を口にしてくれました。はぴねすのスタッフ、そして預かりスタッフさんたちの献身的なサポートとたっぷりの愛情を受け、まるみが信頼を寄せてくれたようにも映りました。

しばらく経過観察を行っていたまるみは、持病は改善に向かっていった一方、右前脚の治療はなかなか進みませんでした。あらためて動物病院で検査を受けたところ、化膿が広がり骨が溶け始めているとのこと。獣医師と検討した結果、まるみ右前脚の指を根本から切断することになりました。過酷な手術にはなりますが、これ以上骨を溶けさせないためには、やむを得ない判断でした。

ハーネスやリードを極度に嫌がるまるみ

手術を無事に終えたまるみは当分の間は静養することになりました。過酷な手術を経験した一方で、預かりスタッフさんの家でご飯や水をしっかり摂ったことで、ずいぶんと体重が増えました。体調もさらに回復し、手術した右前脚の怪我も経過としては良好です。

右前脚の治療が進んだところで、散歩にトライすることにしました。しかし、まるみの体にハーネスを着けて連れていこうとすると、必死の抵抗を見せます。リードを見ても怯えて嫌がり、必死に逃げ出そうとします。ときには抵抗して座り込み、じっと動かなくなることもありました。「これは困った」と悩む預かりスタッフさんでしたが、もしかすると、元の飼い主が同じようにハーネスやリードを付け、工業地帯に捨てていった可能性も考えられます。そのトラウマからまるみが極度に散歩を嫌がっているとも推測されます。

それでも新しい里親さんへと繋げることを目標にするのであれば、散歩できるに越したことはありません。そのため、預かりスタッフさんは旧知のドッグトレーナーに相談することにしました。

ドッグトレーナーによれば「ワンコが嫌がっても、とにかくこちら側が『歩く意思』を曲げないことが重要」とアドバイスをくれました。そしてまるみに「自分の脚で、外を歩けるのだ」ということを経験させる必要があるとも。

助言を受けた預かりスタッフさんは、まるみに「さぁ行くよ。大丈夫だからね。今日もがんばろうね」と優しく声をかけながら、散歩のトレーニングを実施しました。そして、日々の散歩が終わった際には、まるみをたくさん褒めてあげました。

この散歩トレーニングを繰り返すうち、まるみは安心して歩けるようになり、そして「散歩って楽しいものなんだ」と理解してくれたのか、ときには笑顔を見せてくれるようにもなりました。

「いつか絶対に幸せに」と願うスタッフ

保護当初から現在までに右前脚の切断、持病の克服、散歩トレーニングなど、それまでになかった経験を乗り越えてきたまるみは立派なワンコへと成長してくれました。

しかし、もともとが怖がりの性格なのか、たとえば散歩中などに知らない人や物を見ると立ち止まってしまうことがあります。他のワンコが「何やってんの。早く一緒に歩こうよ」とばかりに先に進むと、ようやくまるみも続いて歩き始めるという感じです。このことから完全に散歩をマスターしたとは言えないのが実情ですが、それでも預かりスタッフさんは諦めません。

「まだまだ苦手なことが多いまるみですが、これまでの経験から、まるみのペースで少しずつ前に進んでくれれば、いつの日かきっと幸せな家族の元で暮らしていくことができるはずです。その日まで諦めずにお世話とトレーニングを続けます」と、今後にかける思い、そして希望を語ってくれました。

多くの苦難を乗り越えてきたがんばり屋さんのまるみ。これからも一人前を目指してがんばり続け、いつの日か、まるみにピッタリの優しい里親さんが現れることを祈るばかりです。

わんにゃんレスキュー はぴねす
https://ameblo.jp/happines-rescue/

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