4年ぶりに開催された東京モーターショー改めJapan Mobility Show2023では、従来の自動車という枠を超えて、モビリティにまつわるさまざまな業界、スタートアップなども出展しています。
そんな中、業界初だという「ケーブル自動巻き取り式」のEV(電気自動車)用普通充電器が展示されていました。
ありそうでなかった自動巻き取り式ケーブルですが、いままでなかった理由を開発した「モリテックスチール株式会社」の服部正さんに話を聞いてみました。
――開発した経緯を教えてください
当社は自動車関連の仕事をしていることから、いち早くEVも社用車として導入しました。当初は物珍しく社員も喜んで取り合いながら乗っていました。
しかし、屋外駐車場だったため雨の日には傘を差しながら、車載の充電ケーブルをトランクからひっぱり出してコンセントに挿して充電していたため、充電作業そのものが面倒だと思うようになり誰も乗らなくなってしまったのです。
そこで、便利で使いやすい充電器を作ればEVにまた乗ってくれるのではないかと思い、コネクタを本体に差し込むだけでケーブルを自動巻き取りしてくれる製品を開発したのです。
自動巻き取り式ケーブルの開発には2つの課題があった
――自動巻き取り式の普通充電器がいままでなかった理由は?
実は、3kwタイプの自動巻き取り式のEV用充電器はすでに販売していて、2022年末に、より速く充電できる6kwタイプの2代目として販売したのです。自動巻き取り式ケーブルを開発するにあたっては「ケーブルの硬さ」と「リール接点」という2つの課題がありました。
家庭用の電源コードは2芯構造なのですが、EV用の普通充電器のケーブルは5芯構造で、断線しない強度を持たせるため太く、ケーブルを巻き取ることが難しいという課題がありました。そこで従来品よりもしなやかさをもたせたケーブルを特注で作ってもらいました。ケーブルが柔らかいと取り回しも楽でストレスがなく軽く感じますし、自動巻き取りですとケーブルに触れることがないため手を汚しません。
当社は鋼材の専門商社であり金属加工、特にゼンマイ、バネの製造を得意としているメーカーで、電気炊飯器の巻き取り式コードリールは昭和30年代に日本で初めて製品化しました。コードリールですとケーブルをねじらせないために接点式を採用しているのですが、屋外にも設置されるEV用普通充電器の場合は、接点に雨や結露、ホコリなどが付着するとスパークする危険性があります。そこで接点がないメカニズムを独自開発したのです。接点がないため本体横にある基盤の高さまで浸水しない限り使えます。
機械式立体駐車場対応モデルも発売予定
――他にはどんな特徴があるのでしょうか?
モドバス通信のOCPP対応で、商業施設などで複数台設置する場合は、「拡張ゲートウェイ」を追加することにより、認証や予約、課金などを連携できます。いままでは1台につき1回線必要でしたが、複数台でも1回線で運用可能です。
利用状況は大型LEDで表示し、GREENは利用可能、ORANGEは充電中、REDは利用停止中または予約中と車に乗った状態でもわかるようになっています。
EV用充電器はプログラムを組み替えれば他社の課金サービス会社と連結しやすいように設計しています。
充電器の電流制御機能により、デマンドコントローラーと連携させることで、利用状況に応じて平滑化充電ができ充電電力を制御できるという特徴があります。
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気になる本体価格は35万円から65万円ほどでですが、JARI規格の認証を受けているため、本体価格の半分と工事費用の半分は補助金の対象となるそうです。
今後はマンションの機械式立体駐車場でも使用できるように、スリムでゴンドラに設置できるタイプも来期から販売予定とのこと。ゴンドラに乗せる場合は、センサーによりケーブルが異物と判断されると停止するために、ケーブルがうまく巻き取る必要があり、そこも課題だったそうです。
10月28(土)から11月5日(日)まで、東京ビッグサイトで開催しているJapan Mobility Show2023の同社ブースでは、実際にケーブルを引っ張り出して、コネクタに差し込むと自動で巻き取ってくれるところを体験できます。