ビッグモーター「社長の絶対君主制」「まるで刑務所」の社風に影響が?経営コンサル会社を取材

小森 有喜 小森 有喜

ビッグモーターが学んだ“思想”

多くの企業で実績をあげている武蔵野の経営哲学・思想とはどのようなものなのか。例えば朝礼のやり方を例にとると、小山社長は著書で以下のように述べている。

 「朝礼」で経営計画書の方針を強制的に読ませています。しかも読む項目を決めておかないと、社員は「短いところ」ばかり読むので、「今日は、どこを読むか」をあらかじめ決めています。(著書『新版 経営計画は1冊の手帳にまとめなさい』より)

またYouTubeチャンネル「小山昇の実践経営塾」では、自社で実施している「環境整備点検」の様子を公開している。小山氏らが定期的に各事業所を1カ所につき5分程度で巡回し、掃除や整理整頓が行き届いているか、項目に従って「〇」「×」とチェックしていく。

社員と快活にコミュニケーションを取りながら点検を進める小山氏。だが、動かした棚の裏に小さなホコリが一つ落ちているのを見つけると「おーい!バツ!バツだよ、これ見て」と社員を呼び出し、タブレット端末に評価を反映させた。この環境整備の出来は社員の賞与に反映されるため、みな真剣に取り組んでいる様子が画面越しにも伝わってくる。

行き過ぎた「環境整備」

前述の通り、ビッグモーターでも環境整備点検を導入していた。調査委の報告書には「工場従業員らが本来の業務である車両修理作業をそっちのけにしながら、場合によっては数日をかけて清掃や整理整頓等を行っていた」とある。店に面した道路に1本の雑草が残っていることすら許されないほど、異常なまでの徹底ぶりだった。このために社員が長時間のサービス残業を強いられ、度重なる理不尽な降格人事の原因にもなったことは、すでに報道されている通りだ。

また、ビッグモーターの経営計画書にある「会社と社長の思想は受け入れないが仕事の能力はある人」「今、すぐ辞めてください」という文言も、世間から批判を浴びた。小山氏は著書などで「社員の能力以上に会社の価値観に合うかどうかを重視している」と繰り返し述べており、これに兼重前社長ら経営陣が影響を受け、極端な表現に言い換えた可能性はある。

小山氏の掲げる経営理念やノウハウが、多くの中小企業の業績向上に寄与したことは紛れもない事実だ。その内容を都合よく解釈し、異常なまでの管理体制を敷いて「不条理な上命不服を強いる企業風土」(調査委の報告書より)を形成したビッグモーター経営陣の責任は重い。次期社長の和泉氏は会見で「経営陣が現場目線になり、風の通しの良い職場環境を作っていく」と述べたが、本当に実現に至るのかが注目される。

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