「美少女が朝まで『怖い話』を読み聞かせてくる話」
漫画家の外本ケンセイさん(@hokaron1101)が、Twitter改め「X」にて自身の手掛けるホラー漫画を公開。その内容があまりに怖いと注目を集めています。
「怖い話、好き?」
冒頭で登場する謎の美少女。彼女が“実話怪談”を語る形で、物語ははじまります。
同居する「女の幽霊」の正体とは?
謎の少女の導入より本編に登場するのは、オカルト好きが興じて、怖い話を収集して回る編集者のY氏。
「女の幽霊が取り憑いている」というシンジさん(仮名)の住む団地に、取材で訪れます。
シンジさんには死別した恋人がいて、現在は彼女の遺した娘を育てるシングルファーザーをしています。ところが、彼の家では、食器や棚のものが動いたり、誰もいないのに扉が開いたり、人の気配がしたりなど、亡き彼女の霊が存在するとしか思えない現象が続いているというのです。
「本当に幽霊がいるのか――確かめに来てみない?」
シンジさんの誘いを受け、好奇心の赴くまま彼の家を訪れたY氏。しかし、部屋に入った途端、その異様な光景に言い知れぬ恐怖を覚えます。
この家――明らかにおかしい…。
「見えてるんだろ?女の幽霊」
と、シンジさん。でも、違う、そうじゃない。確かにそこに女がいる――ずっとこっちを見ている――でも、それは、実は、幽霊などではなく…。
果たして、Y氏が遭遇した女の正体とは――そして、そこに潜む驚愕の真実とは…!?
実話をベースにした恐怖漫画。その予想の斜め上をゆく展開に、恐怖を感じたという方が続出しました。
「さぶいぼたった……背中ぞわっときたマジで:( ;´꒳`;):」
「お化けより怖ぇよ笑」
「思ってたのと別のベクトルで怖かった」
「こういうホラーいいですね…」
「幽霊なんかより生きた人間の方が遥かに怖いってことですね」
リプ欄にもたくさんの反響が寄せられました。
実は、こちらの漫画は、怪談師・夜馬裕(やまゆう)さんが収集した実話怪談に基づく『厭談夜話(えんだんよばなし)』というホラー漫画の一編。本エピソードは、その記念すべき第1話でもあります。
今回のエピソードを公開したツイ主であり、本作の作画を担当されている外本ケンセイさんに聞きました。
――今回の実話怪談を漫画化するうえで、心掛けたことなど教えてください。
外本さん:できるかぎり元の話を忠実に再現することですね。自分も元々、夜馬裕さんの怪談のファンなので、何回も聞き込み細部に渡って再現しようと心掛けました。
――冒頭に登場する少女の正体も気になりました。
外本さん:冒頭の少女はレイという名前です。人の恐怖や厭(いや)な感情が大好物な女の子とだけ明かしておきます。
人から聞いた怖い話を収録、なかには自身の体験談も…!
本作『厭談夜話』の原作を務める怪談師の夜馬裕さん(@yamayu_ggh)。大学生の頃から怪談収集をはじめ、いまや人から聞いた怪異話や不思議な話の数は3千以上にもなるといいます。
今回のエピソードに登場する編集者のY氏も、どこか夜馬裕さんご本人を彷彿とさせます。実際のはどうなのでしょう?夜馬裕さんに、詳しいお話をうかがいました。
――漫画に登場するY氏ですが、モデルは夜馬裕さんご本人ですよね。物語の内容自体も、実際に体験された出来事なのでしょうか?
夜馬裕さん:私自身です。今は出版社勤めであるものの編集者ではないのですが、この話を取材した当時は実際に編集者でしたし、漫画に出てくるのと同じ服を着ていました。この話は体験者からの伝聞ではなく、自身の取材時における実体験なので、情景は漫画内でも結構リアルに再現されているかと思います。
――やはりご自身の体験談だったのですね!漫画からも異質な状況、リアルな恐怖感が伝わってきますが、ここで改めて、体験された時の感想や、印象に残っていることなど詳しく教えていただけないでしょうか。
夜馬裕さん:この話を読んだ方の中には、「取材相手の男性は完全に精神がおかしくなっているのではないか」と思う方もいるかもしれません。でも、この方はきちんとした上場企業に勤め、仕事を日々きちんとこなす普通の会社員でした。「女の幽霊」に関する事以外はいたって正常なんです。会話していても、いたって普通です。だからこそ、ある一点の異常性だけが際立って、「背景には何があるのか」ということに対して、常軌を逸した恐怖を感じました。そして、取材時に、狭い空間で間近にいる「女」から発せられる無言の圧力。これはもう、体験した人間にしかわからない、終始鳥肌が立つような恐ろしさと緊張の時間でした。
――このエピソードは『厭談夜話』の1話目を飾る話としても、インパクトがありました。この話を初回に選んだ理由について教えてください。
夜馬裕さん:漫画家の外本ケンセイ先生は、元々私の怪談のファンでいてくださったのですが、小学館でこの連載が決まった際には、「最初はぜひこの話にしたい」とのことでした。私自身も強烈な体験でしたが、その分この話が好きだとおっしゃってくださる方もたくさんいるので、ぜひまずは第1話を読んでいただきたい気持ちです。
――怪談を収集されていると、今回のようにご自身が怖い体験をしてしまう機会も多かったりするのでしょうか?
夜馬裕さん:私自身には人より秀でた霊感や特別な力などはないのですが、それでも長い間怪談を収集していますから、不思議な体験、奇妙な出来事、怖い思いをしたことは何度もあります。「これぞ幽霊」というようなものに遭遇したことはなくても、あれはもしかして…という経験ならありますし、今回のように直接幽霊を見る体験ではなくても、鳥肌の立つような思いは何度もあります。
――他のエピソードも読ませていただいたのですが、『厭談夜話』では、他にもさまざまな方から収集した怖い話が描かれていますね。人から聞いた実話怪談を語られたり今回のような作品にしたりするうえで、心掛けているポイントなどありましたら教えてください。
夜馬裕さん:「実際に聞いた話を語る」というのは大事な根幹です。最初の取材時に簡単な内容しかうかがっていないと、いざ語る際に怖さを演出するための情景や心情を描写しようとしても、全部こちらの想像で表現するしかなくなります。ですから、いちばん心掛けていることは、体験者や提供者から、取材時にできるだけ細かなディテールまで聞かせてもらう、ということでしょうか。細かい情景や心情を聞かせてもらったり、また可能な範囲で、怪談本編とは関係なくても、その方の人生(家族、仕事、恋愛、学校)についてもお話を聞かせてもらうと、それを語り直す際に物語の奥行きや厚みが出ると思っています。
◇ ◇
夜馬裕さんは今回のような漫画原作者のほか、怪談師や作家、お化け屋敷などの「ホラーコンテンツの企画・制作」など、幅広い分野で活躍中。「いろんな形、多方面からのアプローチで、“怖い”というものの面白さと奥深さを表現していきたい」といいます。また、怪談について、このような熱いメッセージも語られました。
「今は便利になったので、配信や動画で怪談を観ることができます。それも十分に面白いのですが、やはり生で聴いていただく怪談、リアルなイベントは格別です。時間や場所など多くの制約があるのは確かですが、機会があればせひ、私の怪談を生で聴きに来ていただけると嬉しいですね」
そんな夜馬裕さんが原作、外本ケンセイさんが作画を務める怪異×人怖が混ざり合うホラーオムニバス漫画『厭談夜話』は、現在漫画アプリ・サンデーうぇぶりにて好評連載中。7月にはコミックスの第1巻も発売されました。
「(単行本には)あの怪談界のレジェンド・稲川淳二さんからも推薦文をいただいております。ぜひよろしくお願いします!」(外本さん)
■外本ケンセイさんのTwitter(X)はこちら
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■夜馬裕さんのTwitter(X)はこちら
→https://twitter.com/yamayu_ggh
■『厭談夜話』連載はこちら(サンデーうぇぶり)
→https://www.sunday-webry.com/episode/4855956445114741512
■『厭談夜話』単行本はこちら(Amazon)
→https://amzn.asia/d/1T1rYV2