1872年に新橋(旧:汐留駅)~横浜(現:桜木町駅)で日本初の鉄道が開通して以降、鉄路は全国に拡がりました。その一方で、昭和恐慌などの影響で頓挫する計画も多く、同時に多くの未成線も多く生まれたといいます。
株式会社LIFULL(東京都千代田区)が運営する情報サイト『LIFULL HOME'S』が2023年7月、一都三県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)在住の20~60代男女1100人を対象に「実現してほしかった未成線」についてアンケートを実施した結果、1位に選ばれたのは、羽田空港と成田空港を15分で結ぶ「羽田・成田リニア新線構想」でした。
▽実現してほしかった未成線ランキング(関東編)
【1位:羽田・成田リニア新線構想(378票)】
1位に選ばれたのは、羽田空港と成田空港を15分で結ぶ「羽田・成田リニア新線構想」でした。現在、羽田空港と成田空港間は、電車であればエアポート快特・アクセス特急で約1時間40分、京成スカイライナーで1時間10分以上はかかっているところ、同構想が実現していれば、リニアモーターカーで約15分で結ぶことができたといいます。首都圏各地からの空港アクセスも改善することで国際競争力をつけようというものですが、高額な事業費などから計画は具体化していません。
回答者からは、「乗り継ぎが楽になりそう」「成田空港が使いやすくなり、羽田空港の混雑緩和につながる」「インバウンド需要もあると思う」などの声が寄せられました。
【2位:東京山手急行電鉄(342票)】
続く2位は、山手線の外側に環状線を計画した「東京山手急行電鉄」です。大正時代に郊外へ放射状に延びる路線同士をつなぐ第2の山手線となる環状鉄道が計画されたものの、資金繰りがうまくいかず、計画は中止に。もし実現していれば、一度都心のターミナル駅を経由することなく、郊外へと移動可能だったかもしれません。
回答者からは、「東京西部は南北の移動が困難」「城東地区は縦の路線が無く不便」「満員電車の緩和にもなりそうだし、車の外環のように便利そう」などの声が聞かれました。
【3位:成田新幹線(278票)】
3位には、東京駅と成田空港を新幹線が結ぶ「成田新幹線」がランクイン。都心から離れた成田空港へのアクセス路線として期待された路線でしたが、反対運動などによって実現しませんでした。起点となる東京駅は現在の京葉線地下ホームの場所にできる予定で、そこから30分で成田空港に到着する計画でした。現在も千葉県を走る北総鉄道の横には、成田新幹線が通る予定だった広大な土地が残されています。
回答者からは、「これからは国際線の利便性が重要」「街から距離がある以上、特別感を持って移動をしたい」「都心への移動が容易になれば成田空港の稼働率も上がると思われる」といった意見が寄せられました。
【4位:湘南電気鉄道(現:京浜急行電鉄)三浦半島循環線(265票)】
4位は、葉山や三崎港へ電車でいける「湘南電気鉄道(現:京浜急行電鉄)三浦半島循環線」です。浜急行電鉄の前身となる湘南電気鉄道が計画した路線でしたが、免許を取得した5日後に関東大震災が発生するなど逆風に見舞われ、そのほとんどが実現しませんでした。実現していれば、マグロの町として知られる三浦半島西南端の三崎港や、海と山に囲まれた自然豊かな葉山など、現在、車やバスでしか行けない場所へ電車で行けるはずでした。
回答者からは、「三浦半島は車でないと回れないので不便」「三浦半島の交通渋滞も緩和されそう」「部活の遠征のときも、元々本数が少ないバスが渋滞でなかなか来なくて大変だった」などの声が集まりました。
【5位:池上電気鉄道(現:東急電鉄)国分寺線(239票)】
5位は、国分寺から多摩川に沿って南下する「池上電気鉄道(現:東急電鉄)国分寺線」です。池上線に続いて、雪ヶ谷(現:雪が谷大塚)から国分寺に向けて路線を計画しますが、ライバル企業によって行く手を阻まれてしまいました。実現していれば、鉄道のない多摩川の東側が鉄道で結ばれるほか、JR中央線沿線から東京・城南エリアへの短絡ルートとなっていたかもしれません。
回答者からは、「中央線の利用者として価値があると感じた」「東京の市部の南北を結ぶルートが不便だから」「もっと南進することができるなら、埼玉と神奈川をつなぐ重要な路線になりえそう」などの声が寄せられました。
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そのほかでは、都営新宿線に直通することで千葉ニュータウン住民の通勤の足となるはずだった「千葉県営鉄道北千葉線」(10位)や、新京成線の都営浅草線への直通をめざした「新京成松戸柴又線」(12位)など、他社線への乗り入れを前提とした路線や、川崎市内の移動を便利にすることが期待された「川崎縦貫高速鉄道」(7位)といった、少し不便な移動が便利になりそうな路線がランクインしていました。