ファーストサマーウイカ、上京までの道のりを語る「芸能の道以外は考えたことがなかった、俳優は死ぬまでできる仕事」

小野寺 亜紀 小野寺 亜紀

2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』に清少納言役で出演予定など、ますます注目を集めるファーストサマーウイカ。地元・大阪から上京後にアイドルとして活躍。その後、アーティスト、俳優、声優、バラエティと幅広い分野で輝き続ける彼女の原点と言えるのが、大阪での約5年にわたる演劇活動だ。プロとして初めて舞台に立ったときのこと、芸能の道に進んだのが自然とも言える幼少時代の思い出や今後の夢まで語ってくれた。

 初めての舞台で200枚チケットを売りさばく

「幼稚園の発表会では、隣の子を押しのけて台詞をしゃべっていたのが写真にも残っています。小さい頃からずっとそういう場が好きで、人前に立つことに苦手意識はなかったです。文化祭では脚本・演出・主演という厚かましいことをやっていました(笑)。そうやって学生時代ずっと自分で舞台を作り、高校ではバンドも組んで。だから芸能の道に進む以外の選択肢を考えたことはなかったです」と明るい表情で話す。

高校卒業後は芸術系の大学に進むことも考えたが「高額な学費を払う気になれず」、一番自宅から近い声優育成の専門学校に通いながら、劇団に入って芝居を本格的に始めた。

「確かに声優になりたいという思いもありましたが、正直芸能なら何でも良かったんです。舞台俳優に憧れたのは、中学生か高校生の時に『大人計画』の舞台を観たのが大きなきっかけ。不条理でちょっと過激なところもあり、テレビでは流れてこないようなお芝居がそこにはあって、『なんか劇団おもしろそう』と思いました」。18歳の春、“大阪”“劇団”とネットで検索し、一番上に挙がってきた「劇団レトルト内閣」に入団。「その劇団の舞台は一度も観たことがなかったのですが、オーディションを受けて。失礼な話ですよね…。私はいつもこんな感じ、基本“衝動”で動いています」と笑う。

もちろんその“勢い”が彼女の強みでもあると思うが、それぞれの環境の中でコツコツと努力し、信頼を集め、周りの人を引き込んでいく不思議な魅力があるのも事実だろう。「その劇団は社会人劇団だったので、俳優として売れたいとか、劇団で東京進出を目指すという感じではなく、会社勤めをして家庭も持っているような人がほとんどでした。ただ、年に何回も公演をおこなう演劇の世界に初めて足を踏み入れ、芝居の基礎を先輩方から学べた劇団の活動は、すごく楽しかったです」。

初めてプロとして立った劇場は、大阪・福島にあるABCホール。そこでの公演で18歳のファーストサマーウイカは、ひとりで200人分のチケットを売りさばいた。「友人やバイト先の人など、とにかくたくさんの方に声をかけて。ひとりで200人って結構なことだったらしく、劇団からは『すごい!』と感謝されました。お客さんからお金を頂いて舞台に立つというのは、学生のときとはやはり違って、ひとつ大きなステップだったと思います」。

実は今も劇団レトルト内閣に籍を置いている。「舞台に参加できてはいないのですが、『ファーストサマーウイカが活動していた劇団だよな』とひとりでも興味を持って、チケットやDVDを買ってくださったら、それが劇団への還元になるかなと思って。たまに劇団のアフタートークに参加するため帰っています」と、律儀な面を見せる。「劇団に入って、いかに組織的に黒字にするのが大変なのかも知りました。そこは優秀な劇団ではあったのですけど」。舞台で芝居をし、歌ったり踊ったりしながらさまざまな演劇体験を積み重ね、次第に東京への思いが強くなっていく。

 “運”は人が運ぶもの。繋がりを大切に活動してきた

劇団以外の客演も増えるなか、東京での舞台出演の機会を得たのは、知り合いの「こんなオーディションがあるらしいよ」という情報から。「芸能のお仕事って、最後は“運”みたいなところがあるけど、“運”は“運ぶ”とも書きますよね。誰が運ぶのかというと、やっぱり“人”。私も役者やスタッフさん同士の繋がりから、縁を頂いてきたところがあります。若いときは積極的にコミュニティーの場、ワークショップなどには行くようにしていました」と打ち明ける。これは今後、俳優はもちろん芸能の道を目指す人にとっても、参考になる言葉なのではないだろうか。

彼女が初舞台を踏んだ「思い出深い場所」である福島に、芸能プロダクションのリコモーションとキューブが立ち上げた「ACTLABO OSAKA」が、7月9日に誕生した。2社には、生瀬勝久、古田新太、藤木直人、松下洸平、元宝塚歌劇団の壮一帆や音月桂らのほか、ファーストサマーウイカも所属している。

多くの俳優を輩出してきた事務所ならではの多彩な場を設け、舞台芸術のスキルやノウハウを開放し、芸能の世界への門戸を開くスクール・コミュニティーとなっている。彼女は「舞台を観に行くだけではなかなか仲間に出会えないけど、劇団に入るのはハードルが高い。そういうゆる~く演劇に携わりたい人たちが、同じ温度感で出会えるのは他にはないかなと思います」と、新たな交流の場を歓迎する。

いまや俳優として映像でも大活躍のファーストサマーウイカ。「いろんなジャンルで、求めていただける力を発揮できたらいいなと思いますが、俳優は死ぬまでできるお仕事ですよね。正解がなく果てのない、突き詰めることのできるジャンルだと思うので、頑張っていきたいです」と、思いを熱く語る。

舞台俳優を志すきっかけとなった大人計画の舞台はこれまで出演したことがなく、「松尾スズキさんや宮藤官九郎さんの作品はとても影響を受けましたし、最初に憧れたのが阿部サダヲさん。阿部さんといつか共演を!という夢はあります」と明かす。また、ドラマには多く出演しているが、「ライトな役柄が多いので、もっとしっかり役割を任せてもらえるような役者になる、というのも目標にしています」と前を見据える。

最後に「自身が俳優に向いているなと思うところは?」と訊ねると、次のような答えが返ってきた。「出たがりの精神じゃないでしょうか! それ以外はあまりないと思います(笑)。これからも目の前にお客さまやカメラがある限り、俳優はもちろん、声優でも歌手でも何でもやっていきたいです」。

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ドラマ『シッコウ!!~犬と私と執行官〜』(テレビ朝日系)に出演中。映画『禁じられた遊び』が9月8日公開予定。「ACTLABO OSAKA」はJR福島駅徒歩すぐ。ふたつのレッスンスタジオ、ギャラリー機能もあるラボなどを備え、今後多種多様なレッスン・メソッドを展開予定。

■ファーストサマーウイカ公式ウェブサイト https://firstsummeruika.com/

■「ACTLABO OSAKA」 https://actlabo.jp/index

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