高速道路には登坂車線が設けられているところがあります。登坂車線は普通の車線とは異なるルールが適用されますので、高速道路を走行する際は、登坂車線の基本的な知識を押さえておきましょう。
今回は高速道路の登坂車線の基礎知識と、普通の車線との見分け方、登坂車線を走行する際の注意点について解説します。
高速道路の登坂車線とは?
高速道路の登坂車線とは、上り勾配の道路を走行する際、著しくスピードが落ちてしまう車両のために設けられた道路のことです。高速道路の場合、トラックなど重量の大きな車両は馬力が足りず、上り坂でスピードを出しにくくなります。
高速道路では、ほとんどの車が80~100km/時のスピードで走行しているため、上り勾配の影響で著しくスピードが落ちた車が走行していると、渋滞が発生したり、追突されたりするリスクが高くなります。
登坂車線はそんなトラブルリスクを軽減するために設けられたもので、上り勾配で著しくスピードが落ちる車両と、それ以外の車両を区分して走行できる仕組みになっています。
登坂車線では、同じように上り勾配でスピードの出ない車だけが走行するので、渋滞や追突のリスクが軽減され、安全に走行することが可能となります。
■登坂車線はどこに設置されている?
高速道路の登坂車線が設置される場所は、道路構造令第21条にて、設計速度が一時間につき100km以上で、かつ縦断勾配が3%を超える車道と決められています。[注1]
ただ、上記の条件に該当する場所に必ず登坂車線が設けられるわけではなく、あくまで必要に応じて設置されるものです。
たとえば、縦断勾配が3%を超えていても、交通量が比較的少ない場所は登坂車線が設置されていない場合もあります。
また、登坂車線の幅員は3メートルと決まっているため、十分な幅が確保できない場所も登坂車線が設置されていないところがあります。逆に言うと、登坂車線が設置されている場所は、縦断勾配が3%以上あり、かつそれなりの交通量がある道路です。
必要に応じて設置されたものなので、該当する車両で高速道路を走行する場合は、登坂車線を積極的に活用しましょう。
[注1]e-Gov法令検索:道路構造令
登坂車線の見分け方
登坂車線には以下のような特徴があります。
1.登坂部の入口の最も左側に設置されている
2.太くて短い白色の破線で示されている
ただし、2に関しては、高速道路によって通常の車線と同じように表示されている場合もあります。
登坂車線が設けられている場所には、登坂車線が始まることを示す緑色の標識が設置されていますので、高速道路を走行する際は周囲をよく確認し、標識を見落とさないよう注意しましょう。
高速道路の登坂車線を走行するときの注意点
高速道路の登坂車線を走行する際に注意したいポイントを3つ紹介します。
■1. 速度制限に注意する
登坂車線は高速道路上に設置されているものでも、本線とは異なり一般道と同じとみなされます。
そのため、法定速度も道路交通法第11条に基づき、60km/時が最高速度となります(速度標識がある場合はそちらが優先されます)。[注2]
登坂車線は高速道路の本線に隣接しているので混同しがちですが、必ず標識などで制限速度を確認し、それを超えるスピードを出さないよう注意しましょう。
■2. 登坂車線では追い越しできない
道路交通法第28条では、「車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その追い越されようとする車両の右側を通行しなければならない」と定められています。[注3]
登坂車線は最も左側に設置されますので、登坂車線を使って本線上を走っている車を追い越すことは違法となります。追い越しについて定めた第28条に違反すると、同法第117条規定により、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される可能性があります。
合わせて、交通違反の罰則として違反点数2点、反則金9000円(普通車の場合。大型車は12,000円)が科せられます。[注4][注5]
登坂車線では車両の追い越しを行わないよう注意しましょう。
■3. 駐停車は原則として禁止
登坂車線は一般道と同じ扱いと説明しましたが、高速道路上に設置された道路であることに変わりはありません。
道路交通法第75条では、高速道路上での駐停車を原則として禁じていますので、たとえ登坂車線であっても理由なく駐停車するのはNGです。[注3]
車両の故障や事故、あるいはドライバーの体調不良などでやむを得ず駐停車しなければならない場合は、必ずハザードランプを点滅させ、停止表示板を設置することを徹底しましょう。
[注2]e-Gov法令検索:道路交通施行令
[注3]e-Gov法令検索:道路交通法
[注4]警視庁:交通違反の点数一覧表
[注5]警視庁:反則行為の種別及び反則金一覧表
高速道路の登坂車線はルールをきちんと把握して走行しよう
高速道路の登坂車線は、上り勾配でスピードを出せない車と、それ以外の車を分けて走行させるために設置されたものです。登坂車線は一般道と同じ扱いになり、法定最高速度は60km/時になるほか、追い越しも禁止されています。
高速道路の本線と同じ感覚で走行すると、知らない間に法律違反になってしまうことも考えられますので、高速道路を利用する際は登坂車線のルールをよく理解し、正しく走行することを心がけましょう。
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