【FPが解説】医療保険、子どもには必要ない? 自治体の医療費助成や低い1〜19歳の入院率を考慮して

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みなさんのお子さんは医療保険に加入されていますか? 各自治体で子どもの医療費に対して助成があるため、必要ないと言われることも多い一方で、子どもだからこそ加入しておくメリットもあります。子どもの病気やリスクにどのように備えていけばよいのか整理してみました。

子どもに民間の医療保険はいらないと言われる理由

不要と言われることもある子どもの医療保険ですが、なぜ不要と言われるのか、大きく2つの理由があります。

▽理由1 医療費に対する助成があるから

理由の1つが「子どもの医療費に対する助成制度があること」です。

公的な医療保険制度により、医療費の自己負担は生まれてから小学校に入学するまでが2割、就学以降から69歳までは3割となっています。それに加え、各自治体には自己負担に対する助成の制度があります。

たとえば、東京都千代田区は「18歳になった日以降・最初の3月31日まで」が対象で、所得制限なく「保険診療の自己負担分を助成」します。一方で神奈川県横浜市は「中学3年生まで」が対象。0歳児は全額助成されますが、1歳以上では所得制限があり、所得が制限額以上だった場合、2歳までは通院1回ごとに500円のまでの負担があり、3歳以上は助成の対象外となっています(今年(2023年)の8月から所得制限を撤廃するよう準備中です)。

それぞれ内容は自治体によって異なるため、ホームページや自治体の窓口で確認するようにしましょう。

 ▽理由2 子どもの入院率が低いから

次に、子どもの入院率が低いことが挙げられます。

人口10万人あたりで、どのくらいの方が医療機関に入院したり、外来を受療したかを調べると、入院・外来ともに0歳は高くなっているものの、1〜19歳は、他の年齢と比べて低くなっていることが分かります。

外来受診の数は入院率よりも高くなっていますが、公的な医療助成と自治体による助成があるため、医療費が高額になることは少ないでしょう。

入院したときの日数はどうなのでしょうか。年齢階級別に入院日数を調べると、0歳〜14歳は約8.9日となっており、他の年代と比べてると一番短いです。

入院率も少なく、入院したとしても日数が短いことから、子どもの医療保険は不要だと考えられているのです。

子どもに民間の医療保険が必要と言われる理由

一方で、子どもだからこそ、医療保険が必要だと言われることもあります。以下の2つが主な理由です。

▽理由1 医療費助成の対象にならない費用に備えるため

いくら子どもの医療費助成が充実しているとはいえ、助成制度を利用してもカバーできない費用があるため、子どもも民間の医療保険に加入するべきだと考えられています。

下記は、助成されないものの例です。

・入院したときの差額ベッド代
・入院したときの自己負担分の食事代
・病院が発行する証明書・診断書などの文書料
・公的保険が適用されない治療

例えば、厚生労働省の「主な選定療養に係る報告状況」(2021(令和3)年9月15日によると、差額ベッド代の平均は1日あたり6527円(推計)です。

0〜14歳の入院平均日数は8.9日のため、差額ベッド代だけで約5万8090円と、高額になるのがわかります。

また、子どもが入院した際には、病院側から親に付き添いを求められる場合があります。簡易ベッド代や親の分の食事代などは、自分で負担しなければいけません。

付き添った場合、親は仕事を休まなければならないため、その分収入は減ってしまいます。助成されない費用を補填するために、加入しておくと安心感があります。

▽理由2 医療費助成制度が終わった後に備えるため

子どもにも民間の医療保険が必要だと考える人の中には、医療助成制度が終わった後の備えが必要と考える人もいます。

先述の通り、18歳まで手厚く助成する自治体もありますが、すべての自治体がそうではありません。

「就学前まで」「小学校卒業まで」「中学校卒業まで」など、各自治体の助成制度が終わるタイミングで、医療保険の加入を検討する方が多くなります。

また、子どもが成長していく中で、重い病気にかかったり、持病が発覚したりする可能性もあります。

持病や既往症次第では民間の医療保険に入れなくなったり、加入できても商品の選択肢が少なかったりと、希望する保障が確保できないこともあるでしょう。子どもが元気なうちに加入しておくことで、こうした事態を防ぐことができます。

子どもが民間の医療保険に加入する4つのメリット

子どもが民間の医療保険に加入するメリットは何があるのでしょうか。必要と考えられる理由と通ずる部分もありますが、次の4つが挙げられます。

▽メリット1 保険料を抑えられる

一般的に、保険料は被保険者の年齢と性別によって算出され、年齢が若ければ若いほど保険料は安い傾向があります。つまり、子どものうちに加入しておくことで、保険料を安く抑えることができます。

商品によっては、0歳で1000円を下回るものもあり、大人と違って月々の保険料が安いながらも保障される点がメリットの一つです。

▽メリット2 保険をプレゼントできる

「保険をプレゼントってどういうこと?」と思われた方もいるかもしれません。

まず、保険の契約者を親、被保険者を子どもにします。

保障期間を終身(一生涯)にして、できるだけ短期で保険料を払い込むようなプランを組みます。

例として、子どもが独立する前に支払いを終わらせるケースもあります。保険料を早期に払い終えることで、子どもが保険料を負担せず保障だけ受け取れます。

先ほども説明したように、大病や持病が理由で、保険に加入できなくなる可能性もあることを考慮すると、早めに加入して早期に保険料を支払い終えて保障だけが残る形であれば安心です。

▽メリット3 税金の負担が軽くなる

税金の負担が軽くなる点もメリットの一つです。所得控除には、支払った生命保険料に応じて所得から控除できる生命保険料控除があります。

子どもの医療保険でも、親が保険料を支払っていれば控除を適用できるため、所得が減る分、税金の負担を軽くすることができます。

▽メリット4 公的な医療制度や助成でカバーできない支出を補える

医療保険が必要な理由でも解説しましたが、平均から計算すると、差額ベッド代だけでも約6万円の負担です。さらに親が付き添ったときには、ベッド代や食事代、交通費などもかかるでしょう。

他にも、小児難病などで健康保険の対象外である「先進治療」を受けると、経済的な負担が大きくなります。その際は、民間の医療保険に先進医療特約をつけておくことで、自己負担の技術料部分をカバーできます。そういった経済的な負担を補ってくれる点は、子どもが医療保険に加入するメリットと言えます。

子どもの病気やリスクに備える5つの方法

子どもの成長には病気やケガがつきものです。医療保険以外の方法も含めて、リスクに備える方法を確認しましょう。

▽終身型の医療保険

一つが終身型の医療保険です。子どもの頃から加入すると、保険料が安く抑えられ、保障は一生涯続きます。

また、先述の通り、保険料の払込期間を短くすることで、子どもが独立したときに、子どもが保険料を負担することなく保障だけ継続できます。

▽共済

共済も、子どもの病気やリスクに備える方法の一つです。

共済は、加入者に、病気やケガなどのリスクが起きたときに、他の加入者が全体で助ける仕組みのことをいいます。

民間の保険会社と違い、利益を追求しているわけではないため、決算で余剰金が出たときには、割戻金といってお金が戻ってくる可能性があります。

保障の内容は、入院をはじめ、通院共済金、手術共済金、先進医療保障、死亡・重度の障がい保障などがありますので、必要に応じて適切な保障を選びましょう。

▽学資保険に特約として医療保障を付加する

学資保険に、特約として医療保障を方法もあります。すると、学資保険の契約1つで、教育資金の準備、万が一の際の医療保障が可能です。

例えば、入院・手術、放射線治療を受けたときに保障される商品もあります。

しかし、特約をつけると保険料の負担が増え、貯蓄性が低くなるデメリットもあるため、何を目的として加入するのかをよく考えましょう。

▽親の保険に特約として医療保障を付加する

親の生命保険や医療保険などに特約をつけるのも方法の一つです。新しく契約を結ぶ必要がないため保険料も安く済みます。

また、保険の契約数を増やしたくない方も、候補に入れてもいいでしょう。

▽傷害保険に加入する

傷害保険は、病気ではなく、ケガによって死亡したとき、入院・通院したときに保険金が支払われるものです。

各自治体で義務化が進んでいる自転車保険も、特約で付けられます。

子どもに医療保険が必要かどうかはよく考えよう

子どもに医療保険が必要かどうかは、ご家庭でそれぞれ違います。「助成制度があるから充分」「万一のときに備えておきたい」など、どう考えるかに正解・不正解はありません。

自分たちだけで考えるのは難しいと感じたときや、ほかにもお金にまつわるお悩みを抱えておられる際には、ぜひFPなど専門家にご相談ください。

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弊社FPオフィス「あしたば」では、初心者でもわかりやすいマネーセミナーの実施、ひとりひとりに合わせたマネープランづくり、長期分散つみたて投資を軸とした資産運用のサポートを得意としています。ご自身の将来のお金について真剣に考えてみませんか?ぜひお気軽にご相談ください。

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