保健所に捕獲された野犬の子
アナちゃん(4歳・メス)は、生後3〜4ヶ月の時に保護された。香川県で、姉妹たちと一緒にいるところを保健所に捕獲されたという。保健所の捕獲に使う器具は、子犬たちにとって優しいものではなく、アナちゃんも姉妹もあちらこちらに怪我をした。4姉妹だが、みんな耳や顔の一部に小さなハゲがある。怖い思いをしているので4姉妹ともビビりで、作業着を着た人を怖がるという。
保健所で殺処分されそうになっていた彼女たちを、香川県の保護団体が引き出した。4姉妹の他にも7匹いて、7匹の中には捕獲器によって口が裂け、血だらけの子もいたそうだ。ボランティアは11匹全員引き出し、静岡県をはじめ、各地の保護団体に命を引き継いでくれた。アナちゃんの命のリレーは、静岡県磐田市のボランティア団体“ニャンつって!犬猫塾”がバトンを受け取ってくれた。
ローテーブルの下に潜って出てこない
静岡県在住のKさん夫妻には子どもがおらず、少しでも社会貢献ができればと思い、保護犬を迎えることにした。ペットショップではなく、保護団体にいる子を探した。
「ものすごくこだわっていたわけではないのですが、本当は黒い子を探していました。アナにしよう!と決めたのは主人です。主人が一目惚れしました。譲渡会で隅っこに座り、こちらを警戒しているアナ。でも、なんとなくですがうまくやっていけそうな気がしたんです。次第に慣れてくれればいい、そんな気持ちでした」
とは言え、初日は参ったという。“ニャンつって”代表のニャンママさんたちがアナちゃんを連れてきてくれてトライアルがスタートした。しかし、、みんなが帰ってしまうと、アナちゃんは怯えてリビングのローテーブルの下に潜り込み、出て来なくなったという。
「その日結局出て来ず、主人はリビングの床でアナと一緒に寝ましたが、アナにしてみれば怖いおじさんが近くにいて余計怖かったかもしれません(笑)」
翌朝、ニャンママさんに相談したところ、無理矢理引っ張り出しても大丈夫ということだった。Kさんは、アナちゃんではなく重たいローテーブルを夫と共に動かして、アナをローテーブルから出した。
アナが来てくれて毎日幸せ
アナちゃんは、香川県から飛行機で来たのでANAにちなんで、ボランティアにアナちゃんと名付けられた。
「アナを迎え入れるか検討をしている時、主人と『アナちゃんかわいいよね』など、すでに“アナ”と認識していたので、正式譲渡されてからも名前は変えていません」
アナちゃんたちは、時折4姉妹で集まる。
「なかなかペットショップ卒の子だと難しいのではないでしょうか。姉妹なのでやはりよく似ていて、相談もしやすいです」
アナちゃんを迎えて半年過ぎた頃から、Kさんは預かりボランティアを始めた。
「“ニャンつって”にやってくる保護犬を、里親が決まるまでの間うちで預かります。仕事の傍ら、子犬の世話をするのは割と大変ですが、充実した毎日です。アナはアネゴ肌なのか、『あたしが一番よ!』と言いながらも、子犬の遊び相手になってくれます。母性本能なのか、ドッグランでは預かりっ子のことを必ず守ります」
Kさんは、アナちゃんが来てくれて、毎日幸せだと言う。
「散歩に行くので早起きになったのですが、アナとの朝の散歩が私にとっては一番大切な時間になっています。辛いこと、悲しいことがあってもアナがいるから心が壊れずに済んでいます。どれだけアナに救われているかわかりません」