不動産会社の前にたたずむ謎オートバイ…その正体は? ”虎”の硬くて冷たい背中にまたがって、実際に走らせてみた

小嶋 あきら 小嶋 あきら

 阪急伊丹線稲野駅の駅前に以前からずっと気になっていたものがあります。それは虎のオートバイです。ミニバイクくらいの大きさで、車輪のサイズなどを見るとスクーターのようなのですが、全体はもう「虎」としか言いようがないのです…。

不動産屋さんの店先に虎

 稲野駅の駅前、塚口行きのホームに面して「三陽不動産株式会社」の黄色い看板があります。虎はいつも、その店先にいます。コミカルなタッチにデフォルメされたタイプではなくて、ネコ科の特徴をしっかりと伝えるフォルムの虎です。背筋が伸びて、疾走している姿をしています。

 腕(前足)の間、胸の前に原付スクーターサイズの車輪があります。横から見ると、猫が玉遊びをしているようにも見えます。そして、お腹の下に後輪があります。作り込みがすごいです。

 オートバイにノーマル状態のままで乗るのではどうも気が済まない人、いわゆるカスタムにのめり込む人は多いです。特にアメリカンタイプ(クルーザーやチョッパーと呼ばれるやつですね)なんかだと、エイプハンガーというものすごく高い位置のハンドルとか、思いっきり太いリヤタイヤとか、車体のほとんど全体がまばゆくメッキされてるとか、そういう一目見て「すごいねー」っていうカスタムをされる方は結構いらっしゃいます。

 また、スポーツバイクの人たちは、ノーマルの金属部分をカーボンファイバーでできた軽い部品に交換したり、軽くて効率の良いマフラーに換えたり、性能アップを目指してカスタムされたりしますね。

 しかし、この虎はそれらの流派とかなり違います。流れの外にいるというか、そもそも流れでは語れない、つまりあまり見たことがありません。少なくとも筆者の周りにはいらっしゃらないタイプです。いったいどんな方が乗ってらっしゃるのだろう、もしかすると個性的過ぎる方だったり、さらには難儀な方だったらどうしよう、そういう不安もありましたが、あまりにも気になったのでお店を訪ねました。

 

オーナーの三木さんは…

 迎えてくれたのは代表取締役の三木さん。ものすごくさわやかな男性で、この場所にお店を構えて10年一人で切り盛りしています。早速、気になっていたことを質問。

 あの虎の正体はいったい何なんでしょうか?

 「中身はヤマハのジョグです。あの状態になったものを買いました。元々は北海道の遊園地で使われていたものです。ウインカー、ヘッドライト、スピードメーターなどを整備して保安基準を満たした上で登録してあります」

  確かに、全ての保安部品がきちんと整えられています。最近はほとんど稼働していないものの、以前は仕事にも使用していたそうです。これで伊丹市内を走っていると、とても目立ったといいます。それはもう、そうでしょうね。そしてたいていは微笑ましい好意的な反応だったそうです。

 少し前、この虎が倒れて怪我(破損)したことがあって、しばらく入院(修理屋さんに)していたそうです。するとお店の前を通る人々から「あれ?虎どうしたん?」と声をかけられたりしたといいます。「意外と皆さん見てくれてるんですね」って、そらそうでしょう、これは普通気になりますよ。

 「よかったら乗ってみますか?」というお言葉に甘えて、お店の周りをちょっと一周乗らせていただきました。

 虎の背中に乗る。猫科好きの筆者にとって、これはひとつの夢です。柔らかくて暖かい虎の背中に…、いや、この虎は硬くて冷たいです。カッチカチです。さすがグラスファイバー製です。うん、とても硬い。

 しばらく動いてなかったそうですが、セルを少し長めに回して、無事にエンジンが掛かりました。2サイクルのジョグの音です。こんな形のクセが強そうな車体ですが、でもしっかりステップがあってハンドルもアップライトなので、思いの外普通に乗れます。お尻の痛ささえ我慢すれば通勤や通学にも使えそうです。勇気があれば。

 こんな遊び心いっぱいのバイク(スクーター?)のオーナー三木さん。実は普通のバイクも複数台持ってらっしゃるバイク乗りです。筆者も複数持ちのバイク好きなので、ツーリングや懐かしのバイクの話題など、取材のつもりがついつい話し込んでしまい、気がつくと1時間以上お仕事のお邪魔をしてしまっていました。

 

 

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