「福祉の仕事って、オシャレをしちゃイケない感が漂っている。別に安全やTPOに配慮すれば良いはずなのに… 短く整えている爪に、綺麗な色を塗ったら会社から叱られるとか、意味分からんレベル。お洒落な福祉の人が増えた方が、利用者さんの心も、働く人の心も明るくなるよ。お洒落も立派なプロの仕事」
「福祉業界のおしゃれ番長」と名乗る平林景さん(@KeiHirabayashi)は、「福祉業界のイメージをオシャレに変えていきたい」と考えて日々SNSで発信しています。
介護福祉士や社会福祉、訪問介護員(ホームヘルパー)など介護福祉の現場で働く人のオシャレについての投稿には、「業界全体でバリッとおしゃれになったら働きたくなる人も増えるのではないか」「オシャレから会話が広がる」「オシャレで素敵な髪色の美容師さんにカットしてもらうと楽しいので、オシャレな方に介護してもらえたらウキウキするのになぁ〜と思います」など同業者や利用する方、その家族からの賛同の声が多数寄せられています。
しかし、「おしゃれしたら、利用者さんには受けたけど上司からお咎めがあった」「私ができないオシャレをしてくるなと利用者からクレーム」「家族から苦情が来る」と苦い経験をした人も少なくないのが事実。「何もしないより、何かをやって動かしていく」と考え行動していく平林景さん(@KeiHirabayashi)に、投稿への思いを聞きました。
福祉の仕事を3Kから3Iに変えたい
平林さんが福祉業界のオシャレ事情をたびたびSNSで発信しているのは福祉の経営をしている人(経営者)が「オシャレ」を意識することで、いろいろ変化が生まれたらという思いからだそう。
「福祉の仕事は、子供たちの「なりたい職業ランキング」の100位にも入ってこないくらい人気がないんですよね。3K(キツイ、汚い、給料が安い)のイメージがあるからだと思いますが、これを3I(イケてて、生きがいがあって、いい仕事)のイメージにしたい。超高齢化社会の日本だからこそ、憧れの仕事になった方がいいですよね。憧れになるためには、福祉ってカッコいい!と思ってもらう必要があると思っています」と平林さん。
ときには、「そんなことしても世の中なんて変わりませんよ」「目立ちたいんですか?」はたまた「偽善者っぽい」と言われることも。「“何もしないから世の中変わらないんだよ”と思うし、目立たないと、自分の意見なんて世の中に届きません。自分の言葉を世界中に届けるためには、目立ちたいと思っています。偽善者と言われても、そもそも私は善人ではないです (笑)」とあっけらかん。
介護施設でネイルやメイクをしてもらい喜ぶ利用者の姿を見て、オシャレに年齢なんて関係ないこと、心がウキウキすることは誰にとっても大切であることを実感する一方で、「福祉って、地味でなければいけないような風潮があります。それは、単なる世間のイメージだけでないと感じます」。
業界に携わる人の意識にも、地味であるべきとの考えが根付いていることをしばしば感じるため、「<福祉事業や福祉サービスは真面目で質素な物である>、そんな同調圧力に屈していない?」との問いかけをSNSを通して発信し続けます。「むしろ福祉や医療こそ、少しでも気持ちが明るく華やかになるような環境だといいな、と思っています。オシャレをすることが当たり前の業界になれば、そう願っています」。
介護をする人はオシャレをしない、高齢者や障がい者はオシャレじゃなくてもいい、それは一方的な思い込みにほかなりません。事実、平林さんのもとには「足に麻痺があっても着脱しやすいブーツを作って欲しい」などの声が寄せられ、車椅子ユーザーが履きやすい靴や服を作っています。また、「介護する方もされる方もオシャレにしたら、気分が明るくなった」と報告する声も。福祉業界の人はオシャレ。それがあたりまえの世の中になるために、平林さんは今後も積極的に発信していきます。
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平林さんは2022年9月パリコレで車椅子ユーザーのファッションショーを披露。また、兵庫県尼崎市で“とびっきりオシャレで、っぽくないと言われる”児童の療育施設を運営。この秋には、10万人以上が集うアジア最大級の福祉イベント『H.C.R.』(2023年9月29日・東京ビッグサイト)でのファッションショー「NextUD JAPAN 2023」のプロデュースも手がけます。
■平林景さん関連サイト
Twitter @KeiHirabayashi
公式サイト https://keihirabayashi.com
Instagram https://www.instagram.com/kei.hirabayashi/