輸血のために飼われていた供血犬のシロ、「もう要らない」のSNS投稿に「助けなきゃ」引き取った夫婦の思い

京都新聞社 京都新聞社

 東京都の動物病院で供血犬として劣悪な飼育環境に置かれ、心臓に疾患もあり弱っていた雌の雑種犬「シロ」が、京都市北区の夫妻に引き取られ、心臓の手術を乗り越えた。夫妻が運営する美容室で、看板犬として元気に振る舞っている。

 野々村かおりさん(48)、好弘さん(41)が2019年末にシロを家族として受け入れたのは、SNS(交流サイト)の投稿を見たのがきっかけだった。

 「8年間大切な血液を提供して何匹の命を救ったヒーロですが…『もう要らない』と獣医が言っています(原文ママ)」

 投稿者は、看護師のケリー・オコーナーさん(58)。シロのいる動物病院で働くようになり、環境の悪さに驚いた。

 供血犬は、病気や事故などで輸血が必要な動物のために血を抜かれる犬のことで、1歳以上8歳未満、体重25キロ以上が推奨されている。当時のシロは11歳で体重12キロ、窓のない地下1階のケージで汚物まみれの状態で暮らしていた。

 シロは生まれつき心臓が悪く、心臓疾患の「僧帽弁閉鎖不全症」と診断されてからも血を供給し続けていることに気付き、獣医師に供血をやめさせるよう伝えると「もう要らないからいいよ」と言われたという。

 シロが幸せに暮らせるようSNSで新しい家族を募集すると、投稿を見たかおりさんから連絡があった。かおりさんは「直感だった。助けなきゃいけないって」と振り返る。

 シロは京都に来てからも寝たきりが多く、散歩中に失神することもあった。薬を飲み続けなければ、いつ死んでもおかしくない状態だったという。

 通院時の検査代や薬代が1回で数万円かかり、夫妻は、治療費の支援を求めて21年2月にクラウドファンディングを始めた。目標は18万円だったが、3カ月で約480万円が集まった。全国の支援者から「手術をした方がいい」「うちの子も同じ病気だった」といったメッセージが届き、病院を紹介してくれる人もいた。

 かおりさんは当初、シロの負担になると思い手術するか悩んだが、毎日苦しそうな姿を見て、手術することを決めた。21年5月に手術が成功すると、シロは見る見るうちに回復。好弘さんは「顔つきが変わった。目に元気が出て、とぼとぼ歩いていたのが走り回れるようになった」と振り返る。今では階段を自分で下り、美容室の客と触れ合うことも。

 野々村さん夫妻は「頑張ったね、と言いたい。背中を押して支援してくださった方々には感謝しかない」と語り、シロとの時間を大切に過ごしている。

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