「君の存在は組織に不必要」「早く退職しましょう」保護シール貼られた葉書が毎月届き…パニック障害で休職 職場の国立大病院の対応は

山脇 未菜美 山脇 未菜美

「定年、再雇用後に休職か 能無しの〇〇君よ 二度と職場に来るな 早く退職しろ」。そんな文言を印刷した嫌がらせのようなはがきが、神戸市内にある神戸大学医学部附属病院で働く男性職員(61)に昨年、送られてきた。全3通で、いずれも送り主は不明で、職場に届いていた。うち2通は文面が保護シールで隠されていた。

宛先は病院の住所で、宛名は「医療支援課 課長」。本名も記されていた。受け取った職員は職場の人間関係に悩み、現在はパニック障害とうつ病で休職中。「ショックで余計に職場に行けなくなって…。でも、送り主が分からないから、どうしようもないんです」とやりきれなさを語る。病院側も事態を把握しており、内部で調査をしているという。

38年前の1985年4月、国家公務員試験を経て神戸大学に勤めるようになった男性。2004年に大学が国立大学法人になったのに合わせ、法人職員となった。会計や教務などを担当した後、15年に医学部、19年に医療訴訟などを取り扱う医療支援課で働くようになり、昨年に60歳で定年退職し、21年に再雇用で課長になった。だが、仕事を巡る同僚の言動をきっかけに体調を崩し、昨年22年4月から休職と復帰を繰り返していた。

そんな時、はがきは職場へ送られてきた。

気持ち悪いし、誰かに見られているのかと思うと怖い

男性がはがきを見つけたのは昨年7月のこと。職場復帰した際、職場にある自分のレターボックスに入っていた。消印はなぜか2カ月前の22年5月15日12~18時で、病院から東へ1キロほど先にある神戸中央郵便局となっている。裏面は個人情報保護シールが貼られ、シールをはがすと、こう書かれていた。

「定年、再雇用後に休職か 仕事をやる気のない、能無しの〇〇君よ もう、このまま二度と職場に来るな 早く退職しろ 顔を見るのが鬱陶しい」(〇〇は本名を記載)

 続いて8月にも同様のはがきがレターケースに入っていた。こちらの消印は8月15日で、南へ500メートル先にある兵庫郵便局となっている。

「窓際族・月給泥棒の〇〇君、君がいなくても何も困らないんだから早く退職しましょう。貴方の顔を見たくない人がたくさんいるのに気付かれませんか?」

 嫌がらせのはがきはさらに続く。3度目の消印は9月25日で、初回と同じ神戸中央郵便局だった。

「仕事も全くやる気なし 窓際族・月給泥棒の〇〇君 君の存在は、組織に不必要 君の顔を見たくない人が、たくさんいる。」

3通のはがきのうち、8月分だけは保護シールがなく、文面がむきだしだった。

郵便物は部下が仕分けしており、「部下に見られる結果になって苦しかった」と男性は話す。

嫌がらせのはがきが止まったと思った矢先の11月、男性は自宅で息苦しさを起こして病院に救急搬送された。診断結果は、パニック障害とうつ病。「年金は65歳からですし、まだまだ働きたいと思っているのに…。気持ち悪いし、誰かに見られているのかと思うと怖い。こんなやり方するくらいなら、直接言ってほしかった」と話す。

その後、男性は休職期間が長引き、現在は課長職を外されている。

病院側「犯人の特定ができず、対応が難しい」

病院を運営する国立大学法人神戸大学の医学部は、職員にはがきが送られてきたことを認めた上で「犯人が特定できず、誰が送ったか分からないので、対応が難しい部分がある。当人がショックを受けているのも知っている」と説明した。人間関係に悩んでいたことについては「個人が関わってくることなので、コメントは差し控えさせていただきます」とした。

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