サイゼリヤは、サイゼリアではなく、サイゼリヤです―。3年5カ月間、ツイッター上で、ファミレスの「サイゼリヤ」について、表記間違いの摘発を続けてきた「サイゼリヤ警察」が4月末、引退した。かつて付き合ってきた彼女に「サイゼリヤのことをサイゼリアという人は無理。別れる!」と振られたのがきっかけで、活動を始めた男性。実は、中の人は、熊本県在住の38歳の社会人。仕事の昼休憩や帰宅後などに、手動でパトロールを続けてきたというが…。衝撃の結末が待っていた―。
「サイゼリア」と間違い、彼女に振られ
32歳。男性は、ある女性と付き合っていた。彼女は大学4年間、サイゼリヤでアルバイトしていたという。交際6カ月が過ぎた頃、外食に男性が「サイゼリアはどう?」と提案。すると彼女は激怒し、別れ話に発展した。男性は「豆鉄砲を食ったような感じでした。トラウマなんですけど…」と話す。
その後、表記を気にし始めた男性。ツイッターの検索画面に「サイゼリア」と打って検索すると、誤った表記をしている人がたくさんいた。自分と同じ思いをする人が出ないように、と遊びでアカウントを設立した。
botではなく全て人の手作業
「(コンピュータが自動でやってくれる)bot?とよく聞かれるんですけど、全部、人の手作業です」と笑う男性。最初は誤った表記のアカウントに返信したり、気付いてもらうために「いいね」ボタンを押したり。「あなたの発言は人権侵害に当たる」と知らない人から怒られたこともあり、逮捕だときつい印象を与えるため、摘発にするなど、言葉に気を付けるように。「おはようございます」と毎朝あいさつしていた時期には、眠気で「サイゼリア警察です」と誤ってツイートするハプニングもあった。反省の気持ちも込めて、近くの教会に懺悔に行ったという。
芸能人からの反応もあった。歌手の小沢健二さんも修正してくれたといい、「もしかたら、サイゼリヤと言ったことで、何かの事件に巻き込まれていたかもしれません。未然に防止できてよかったです」。独特な表現で振り返る。
社長「アでもヤでもどっちでもいい」
しかし、5年を経て衝撃の事実を知る―。テレビ番組「カンブリア宮殿」で何年も前に、サイゼリヤの社長が「アでもヤでもどっちでもいい」と言っているのを、知り合いが教えてくれた。「ショックでしたよ。何かガーンときましたね」。気持ちが一気に引き、活動を終えることを決めた。
ところで、家族や友達には、男性がアカウントを運営していることは、ばれなかったのだろうか―。「ほかの人と一緒にいる時はサイゼリヤ警察のアカウントは開かないようにしていたので、誰も知りません」と男性。今はキヤノンやキユーピーなどの転職先を考えられるが「熱意を持って就職できるか分かりませんので…。名残惜しい気持ちはありますけど」と笑った。
今も月1~2回、サイゼリヤに行くという男性のおすすめは、コーンスープとガーリックトースト。浸しながら食べるのがおいしいという。ちなみに、男性はサイゼリヤ社とは一切、関係はありません。